ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

中村文則氏の「銃」を読む

f:id:battenjiiji:20190515064845j:plain

中村文則氏は超多忙な作家である。昨年、ネットで中村氏の以下の発言を知った。

「やっぱり、世の中がよくなってほしいと思っています。だから僕は、作家として政治的な発言をする。作家が政治的な発言をしないというのも選択肢のひとつであり、いろいろな人がいていいと思いますが、僕は発言をする。少しでも世の中が良くなれば、という思いで小説を書いているし、発言もしなければと思っています。」

彼の積極的な発言を聞いて、中村氏に興味を持った。いつか彼の作品を読みたいと思っていた。彼の処女作であり出世作でもある「銃」を今回読むことにした。

 

 

あらすじ

「銃」の主人公は大学生の青年である。彼は6歳の時に施設から養父母の養子になり大事に育てられ、今は学生マンションに暮らし大学生活をを送っている。大学生活は異性との交友も含めそれなりに楽しんでいるが、退屈と感じることもある。そういう中、たまたま通りすがりに拳銃を手に入れる。銃を手に入れた彼は、歓喜に溢れ身体に力が満ちる感じを覚え、その銃を宝物にしようと思う。最初は、その銃を綺麗に磨き上げ密かに自宅に保管して、それに触れることに喜びと満足を感じていた。それから、いつも一緒にいたいと思い、バッグに入れて他にわからないようにしながら持ち歩くようになった。そして、持つだけに満足せず実際に引き金を引く誘惑を感じるようになる。そしてある日、死にかけて苦しんでいる猫を銃で撃つ。そして、この銃は人間を撃つために作られたものだから、実際にこの銃で人間を撃ちたいと思うようになる。撃つ相手は殺された方がいい人間に絞り、彼は児童虐待を続けている女を撃つことに決めて計画を立てる。そして実行するため、隠れていたところにその女性がどんどん近づいてくるけど、震えて両手で持っても引鉄を引けない。彼は実行できず泣き崩れる。彼は銃に魅せられた自分は何だったのだろうと自分を見つめ直し、銃に支配されている自分を感じた。その後、彼は山の池に銃を捨てることを思い立ち、銃を持って電車で出かけていく。その電車内で粗暴な男の隣りに乗り合わせ銃で殺してしまう。自殺しようとするが失敗する。

 

この小説を読んでいろんなことを知った。まず、私の世代とかけ離れた若い世代の風俗や思考の仕方や行動の仕方を垣間見ることができた。もちろん、銃を持つことの意味を一番に、この小説から考えることができた。彼は銃で人間を撃つことを決めたが、現場で自分に「引き金を引け!引き金を引け!と意識続けたけど、引けなかった。人を殺す事実と、人を殺した後にやってくる何かの、すぐ側に、自分はいるのだと思い躊躇した。それは人を殺した人間となる恐怖だった。それがかろうじて彼を破滅から踏みとどまらせた。その後の彼は銃からの支配から抜け出したように見えた。彼は自分が存在しているということをよく噛みしめるようになった。なのに、彼は人を殺してしまう。最後まで人間にとって銃はどういうものかを考えさせる小説であった。

 

彼の作品は翻訳されて世界中で読まれている。2012年、『掏摸<スリ>』の英訳が米紙ウォールストリートジャーナルの年間ベスト10小説に選ばれている。力強い文体と社会の闇や人間の暗黒面を映し出す作風は多くの読書好きに支持されている。

時間を見つけてまた彼の作品を読みたい