長雨がやっと上がり、夕方から散歩に行く。
ゆっくり歩きながら「うおみおおはし」を目指す。この橋は名前からすると海をまたぐ橋みたいな感じだが、実際は、道路を横断する橋である。下の道路から歩行者用の急階段が作ってあり、かなりきつい坂である。運動と思って登っていく。
ここからさらに、少し登ったところに展望台がある。一応そこまで行ってみたが、曇っていて景色は楽しめなかった。今来た道をそのまま下って戻って行く。香焼港まで戻ると、対岸の方から銅羅と太鼓の音がする。
香焼港から対岸に見える町は深堀町である。銅羅と太鼓の音はその深堀の方から聞こえてくる。この音は、大好きなペーロンの音だ。見に行こう。私の足は、いつのまにか足早になり音の方へ急いでいる。
長崎の夏の風物詩はぺーロンである。6月から8月にかけて、夕方、長崎の各漁港では銅羅や太鼓の音が近くに遠くに聞こえてくる。それはペーロンの練習の音である。ペーロンの始まりは、明暦元年(1655年)長崎港に停泊中の唐船が暴風雨に襲われて難破し多くの死者を出した。このことから、在留の唐人たちが海の怒りを鎮めるため、中国の端午節の行事である競漕を長崎港で行ったことがはじまりと言われている。その行事を唐人から学び、長崎ではペーロンが盛んに行われてきた。ペーロン舟の長さは13.6m、乗員30名以内と統一され、往復1,150mをドラ、太鼓に合わせて勇壮に競漕する。因みに、ペーロンの語源は白龍(バイロン)から来ていると言われている。
(注: 唐は中国のこと、唐人は中国人のこと)
ペーロンのドラ、太鼓の音とともに「ヨーイサ!、ヨーイサ!」という若衆のかけ声が聞こえてくる。自然に海岸に足が向く。若衆が力強く漕ぐペーロンを見るだけで嬉しくなる。今では、もはや漕ぎ手は出来ないけど、昔を懐かしく思う。