ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

名前について考える

 

 

先日、職場の仲間と休憩中、それぞれの名前について雑談する機会があった。「親からもらった大事な名前だから大事にしないといけないが、自分はあまり好きな名前ではない」とか「私の名前はあまりに平凡すぎる。凝った名前にして欲しかった」など勝手な事ばかりお互い言い合いながら、職場の仲間の名前を話題にしていた。

 

その中で女性職員の「多喜子」さんの名前が話題になった。「多喜子さんの名前は親の喜び満載の名前だね」「喜びの多い子になって欲しいという親の望みが全てこもっている良い名前ですね」「今日の名前大賞は多喜子さんで決定です!」などと騒いでいたら、ニコニコ笑いながら聞いていた本人から、意外な事実を知らされた。「親からいただいた有り難い名前ですが、名前を変えられそうになったことが、一度ありました」ということであった。

 

彼女の話によると、彼女は結婚して男の子3人に恵まれた。今は、3人の子供さんもそれぞれ自立され、社会人として活躍されているが、改名事件は子供さんがまだまだ小さい頃の話であった。

 

彼女が言うには

『私は長男を出産した後、二年後に妊娠しました。そろそろ次の子供が欲しいと思っていた頃に予定通りの妊娠で喜んだのですが、診察を受けて男の子で双子ですと言われ、驚きそして悩みました。子育ては1人でも大変だったのに双子を育てることができるだろうか?長男もまだ幼いのに大丈夫だろうか?悩みに悩んだ末、せっかく授かった子宝だから大事に育てようと決心して出産を決めました。それから双子の幼子と長男の3人を育てる苦しい育児の戦いが始まりました。毎日毎日が戦争みたいでなりふり構わず、育児子育てに追われました。主人始め周りの協力があってできることであったけど、それでも私にとっては苦しい育児に追われる日々が何年も続きました。

 

そして、長男が小学校に入学して1年が過ぎ、明日は修了式という日の前日に、長男の担任の先生から電話がありました。「明日、体育館で行う修了式で各学年の代表者に修了証書を校長先生が渡されます。1年生の代表に息子さんが選ばれました。明日の授与式で修了証書を受け取る作法や礼儀を息子さんに教えておいてください。1年生の代表という晴れ舞台なのでよろしくお願いします。」という連絡でした。

 

主人が帰宅後、息子と親子3人で明日の授与式の練習をしました。主人が校長先生になり、名前を呼ばれた息子が前に進んで一礼する。校長先生役の主人が修了証書を読み上げ、息子に差し出す。息子は作法通り受け取り一歩後退して一礼する。

 

その練習を何回か行い、息子にみんなの前で間違えないようにできるか聞いたところ、「できるよ」という返事があったので安心していると、息子が突然、「今度は僕に校長先生役をさせて」と言いだしました。

 

まだ、不安なところがあるのかな?と思い、「じゃ、交代してやってみよう」と言って、息子が校長先生の位置に立ち、授与式を始めることにしました。息子が校長先生の位置から、「〇〇多喜子さん前へ」と私を呼ぶので、校長先生役の息子の前に立ち一礼する。息子が修了証書を、考えて読み上げました。

 

「修了証書  〇〇多喜子さん   あなたはこの1年間、おこりんぼ学園専門学校において、毎日毎日、本当によく怒り、優秀な成績で卒業されました。このことはなかなかできることではありません。よって、これからはあなたの名前を〇〇多怒子さんと呼ぶことにします。今後も頑張ってください。」

 

 

私は息子から、突然この修了証書をもらい、息子が私にこのような不満を持っているのを知って驚きました。私は親の立場に立ち、育児、教育、躾という面から当たり前のことをしていたつもりなのに、子供達にこんな不満を与えていたのかということに初めて気づかされました。

 

合わせて、息子が、私に対して持っている不満をこういう機会を使って主張するという頭の回転の早さに驚きました。小学一年生ながら天晴れという感じを持ちました。

 

この我が家の修了証書授与式以来、私は子供達を怒ることをやめました。出来るだけ優しく接することを心がけることにしました。息子からもらった私の修了証書は、今でも私の心の中に飾られています。そして、いつも優しい人になりなさいと、私に呼びかけています』と彼女は語っていた。

 

以上の話をご本人からお聞きして、彼女が職場で、誰にでもやさしい人なのが納得できた。小さい息子さんから教えられたことが、そのまま名前通りの喜び多い人生につながったのだと思う。逆に息子さんから指摘を受けないまま、怒りの多い人生を歩んでいたら、喜びの多い人生には届かなかったのではないかと思う。

 

名前にはいろんなエピソードが隠されていて面白い。