ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

日の丸液晶"の沈没に見る「驕れる日本の酔夢」

いささか古い記事(2019年8月23日)だが、古賀茂明さんが書いた記事を読んだ。

 

古賀茂明(こが・しげあき)氏は1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。元霞が関の改革派のリーダー。2011年に退官。『日本中枢の狂謀』(講談社)など著書多数。

 

 

「経営再建中の液晶パネル大手JDI(ジャパンディスプレイ)がついに772億円の債務超過に転落した。実質、破綻(はたん)だ。

JDIは経産省の主導で、不振の日立、ソニー東芝3社の中小型液晶事業を統合して2012年にスタートした会社で、いわば「日の丸液晶」の最後の砦(とりで)とでもいうべき存在だった。

そのJDIが債務超過となり、今後は中国系ファンドの金融支援を仰ぐ予定だが、そのファンドが手を引く可能性もまだ残る厳しい状況だ。

 

報道によれば、25%を出資する官民ファンドの旧産業革新機構(INCJ)は筆頭株主から外れ、取締役9人も半数以上を中国勢が占める見込みだという。東芝メモリ、シャープなどと同じく、またひとつ、有力な日本企業が外国資本の傘下に収まるというわけだ。

 

JDIは「リスクが高すぎる」という経済アナリストたちの警告を無視し、経産省の意向を受けて、石川県白山市にアップル製スマートフォン向け液晶の巨大工場を建設した。しかし、中韓勢との競争に敗れ、業績が悪化した。

 

さらに次世代の有機ELパネルの開発でも、中韓勢が市場を席巻しているのに、いまだに製品を出荷できないほど後れを取って、お先真っ暗の状態だ。

 

経営陣のセリフから見えるのは単なる経営判断の誤りだけではない。「日本の技術は世界トップで、中韓などアジアの後発グループに負けることはない」という時代錯誤の驕りと経産省の「日の丸液晶」という戦略なき夢物語がこの大失敗を招いたということだ。

 

実際、中韓の企業は意外と底堅い。例えば、中国・ファーウェイ。米中貿易戦争で2019年5月、米政府の禁輸措置対象リストに載ったにもかかわらず、2019年上半期の売り上げは前年比23%増だった。

米制裁でグーグルのOS「アンドロイド」の関連機能が利用できないという危機も、迅速にグーグルアプリなどと互換性のある独自OSを開発し、乗り越えようとしている。つい最近も、ブラジルが5Gでファーウェイを使うと宣言した。

 

また、安倍政権の輸出管理強化で半導体チップ生産が危惧された韓国・サムスンも、ベルギーからのフォトレジスト調達に成功するなど、着々と内製化と調達先の分散化を進めている。世界に網の目のように広がる経済的結びつきは人間の神経細胞のようなものだ。どこかの国の指導者が人為的にその鎖を切っても別の神経回路とつながり修復される。

 

今回の日韓貿易摩擦も、日本以外には代替品など作れないと侮って圧力をかけているうちに韓国が代替ルートを見つけ、日本が毎年2兆円以上稼いできた大切な輸出先を失うということになりかねない。

 

そろそろ、日本は自分がいつまでもトップで、中韓などより上だという夢から覚醒すべきだ。現実はほかの国々と良くて横並び、多くの分野で大きく出遅れている。博士号取得者の数も先進7ヵ国で唯一その数を減らし、国際特許出願数でも中国に抜かれるなど現実は非常に厳しい。日本は技術二流国に没落寸前だと認識できないと、第2、第3のJDIが生まれるだけだ。」

(日の丸液晶"の沈没に見る「驕れる日本の酔夢」より引用)

 

ジャパンディスプレイ(JDI)が窮地におちいっていることは知っていたが、それが技術力の低下によるものとは考えていなかったので驚いた。また、安倍政権による韓国いじめみたいな半導体関連の輸出禁止は韓国に相当なダメージを与える効果があるなどと国内では報道されていたが、実際は短期間に韓国は調達国の多様化と自国開発をすすすめるなどして対応し、日本が毎年2兆円を稼いでいたお得意様を失うことになったらしい。

 

ジャパンディスプレイ問題に限らず、日本の産業の衰退問題は他にもあるようだ。2019年4月24日国会における経済産業委員会で古賀氏は参考人として以下の通り発言している

 

「製造産業における3Dプリンターの発達の遅れによる生産性の低下などの問題の他、エネルギー産業においても、日本は原発にこだわってきて、太陽光パネルはもう世界企業ベストテンに一社もない。もうこれは惨たんたるものです。昔はシャープがずっと常に一位で、ベストテンに三社か四社は入っていました。いまは一社もいない。風力発電においても、日立は撤退とか出ていましたけれども、これももう壊滅です。

 

自動車でも、電気自動車はもう完全に置いていかれました。これは経産省が間違ったんです。水素にかけるといって水素ばかりやっていた。水素の政策はたくさん並んでいるけど、電気自動車をやらなかったので世界に置いていかれてしまった。自動運転もしかりですよ。もうグーグルに完全に水をあけられて、トヨタでも全くおくれています。

 

そういういろいろなことがありますけれども、もう一つすごく心配なのはAIですね。AIで、日本はアメリカと中国に完全に水をあけられています。これは日経新聞なんかでもいろいろ特集とか出ていますけれども、もう競争できないところまできていると言われています。

 

 ですから、日本の生きる道としては、下請ですね。下請大国になるしかない。中国やアメリカがつくったものを利用して、それをもうちょっと改善するみたいな、日本的な生き方かもしれませんけれども、もうそういうレベルに落ちてきているということです。」

 

日本の衰退がここまできているとは知らなかった。定年退職をして呑気に日々を過ごしていたら、国土も狭い資源もない国がさらに科学技術二流国になりつつあるという話であった。

 

世界三大投資家の一人であるジム・ロジャーズさんの「私がもし十歳の日本人なら、直ちに日本を去るだろう」という言葉を新聞広告で時々見るが、彼は日本の現状を踏まえて未来を予測しているのだと思う。コロナウイルスとオリンピック開催だけが日本の現実問題ではない。オリンピック報道などで隠されてしまうが、もっと根本的な問題が日本には存在することを踏まえて、その解決に早く向かわねばと思う。そのためには、その解決に真剣に向き合うこの国のリーダーを早く見出さなければならないと切実に思う。