ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

「戦後日本を生きた世代は何を残すべきか」を読む

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コロナウイルス拡散防止のため外出を控えている。今日のニュースでは国内で1日の感染者数が500名を超えたと伝えている。今度のコロナウイルスの問題から今までの世界感、人生感を破壊されるような恐怖を感じる。

 

今日も本を読んで過ごす。今日は寺島実郎さんと佐高信さんの対談本である「戦後日本を生きた世代は何を残すべきか」読む。

佐高信さんは1945年山形生まれの毒舌経済評論家でジャーナリストである。寺島実郎さんは1947年北海道生まれの三井物産元役員で評論家であり現在多摩大学学長である。

 

この本の帯には「アメリカへの過剰同調、嫌韓嫌中、実体経済の喪失--------閉塞する社会と不安な人心を見つめ、戦後日本の矜持を抱いて未来を構想する本気の議論」とあった。

私もお二人の先生方と同様に戦後の日本を生きた世代である。次世代に何を残すべきかということを考えると現状の問題点が次から次に思い起こされ問題を絞りきれない状況に陥ることがある。そのような問題意識の中、この対談本は大変参考になった。

 

この本の第1章のテーマは「日米不平等同盟の核心」であった。

「日米同盟は不平等条約である。日米同盟は明らかに日本にとって不平等であり、これが明治時代だったら、陸奥宗光小村寿太郎を持ち出すまでもなく、日本人の誇りをかけて不平等条約の改定に立ち向かったはずである。戦争が終わって75年も経とうとするいま、日本人は条約改定に立ち向かう根性さえ失っている。アメリカは日本を独立した国家として認めていないということを感じるべき。75年占領下に置かれているのに、外国の基地にいてほしいと思っている国及び国民の心理というのは恥とするべきだ。」という寺島さんの主張に対して、「私はナショナリストでは全くないが、対米関係において独立国家の主張をはっきりと主張し、アジアに対しては出来る限りナショナリズムを抑制して友好関係を深めるという2次方程式を今こそ解かなくてはならないと思う。」と佐高さんが答えていた。お二人の立ち位置に全面的に共感する。そして、今まで不平等条約に取り組む気概ある政治家を育てなかったことを悔やむ

 

 

民主主義の話題の中で、勝海舟の話があった。

勝海舟アメリカから帰ってきて、老中から「アメリカはどうだったか?」と訊ねられた勝は「あの国では賢い者が上に立っています」と答えたという。勝がなぜそう思ったかというと、「国父と言われているジョージ・ワシントンの子孫は今どうしているんでしょうか」と訊ねたら、皆が顔を見合わせている。「さあ、どうしているんだろう」と、誰も知らなかった。それに勝は驚く。そしてその瞬間、民主主義とはこういうことかと思ったと記している。

 

その民主主義について寺島さんが語った言葉は肝に命じておきたいと思う。

「我々が戦後世代として、今こそ発しなければならないメッセージの一つが民主主義へのこだわりです。我々は戦後民主主義を冷笑したり嘲笑したりするのではなくて、民主主義がどこまで根強いものかを見届けないといけない世代なんです。戦後、我々は徴兵検査に並ばされたわけでもなく、張り倒されたわけでもない。国家の強制力によって引きずり回されたわけでもない。自分の人生を自分で決めていいという時代に生きてきた。そのことをこの後の時代に覆してはだめです。我々の世代が戦後初めて、強制のない時代を生きた。そのことを、弱さも含めて伝える必要がある」

 

民主主義については、寺島さんの次の意見も心に留めておきたいと思った。

戦後民主主義をどう育てて展開させるかという課題を考えると、民主主義という仕組みこそ、実はリーダーが大事なんです。誰がどういう選択肢を提示して、人々を牽引していくかというリーダーシップです。外国のリーダーを見ると、一人のリーダーによってこれだけ国が変わるのだということを思い知らされることがある。いま、日本人が気づかなければならないことは、続々と登場してくるリーダーが、まず政治家の2世3世ばかりだということです。日本の様々な現場で歯を食いしばって支えた人がリーダーになっていくのではなく、多くは家業として代々政治家をやってきたからそういうものだろうというレベルでいる。そういう人たちが、政治家で飯を食っている人の大部分を占めている状況は、世界広しと言えども日本にしかない。これは端的に、戦後日本の歴史が新しい方向感覚を見失って劣化しているということです。この国の政治に対する期待がどんどん低減しているということです。」

 

私たち戦後日本を生きた世代が次世代に確実に引き継ぐべきものは民主主義であると思う。その民主主義は第二次世界大戦での敗戦という多くの犠牲の上に獲得したものなのに、それがないがしろにされ、国家主義に塗り替えられようとしている危機感も迫っている。民主主義は国民の立場に立てば当然あるべきの権利のように見える。しかし、権力者にとってはこの民主主義ほど邪魔なものはないと思われている。平和な時代に慣れると民主主義を破壊しようとする人がいることさえも忘れてしまうが、権力者はいつも虎視眈々と民主主義を骨抜きにするための準備を怠らない。生きている限り全力で民主主義を確実に次代に繋げていきたいと思う。