ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

検察庁法改正案 今国会断念

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今朝の長崎新聞の第1面には、政府が検察官の定年を延長する検察庁法改正案の今国会成立を断念したことが大きく報道されていた。

 

この検察庁法改正案については、単に定年を延長するだけの改正案ではなく、役職定年制の特例規定があることからツイッター上で著名人を含む多くの国民の反対が表明され、世論の反発が広がっていたものである。

 

検察は政治の影響を切り離さないと、政界疑獄などの捜査はできない。だから、検察官の人事に政治は介入しないという確立した慣例があった。そして、守られてきた。だが、今回の改正案の中には「特例規定」がもうけられた。

 

この特例規定では「通常は六十三歳になると役職から外れ、ヒラ検事となるが、政権が認めた場合に限り、六十三歳以降も検事長や検事正などの地位でいられる。さらなる定年延長もある。つまり政権のさじ加減で検察幹部の人事を左右できる。」という内容である。そうなると検察まで政権の顔色をうかがい、捜査にまで忖度(そんたく)が働きかねない。これが問題の中核だ。三権分立で成り立つ国の根幹が崩されると思い、多くの国民が反対の声をあげるのは当然である。

 

さらに、一般国民だけでなく当事者に関係する検察官OBも反対の声を挙げた。

私は、松尾邦弘・元検事総長らが検察庁法改定案に反対して、5月15日に森法務大臣宛に発表した検察OB14人連名の意見書を読んで涙が出た。

 

意見書には、この検察庁法改定案がどのような経緯で誕生したのか、またどのような国会審議がなされたのか、そしてそれはどのような意味があるのかを子細に述べてきて、安倍総理の国会答弁について、『本年2月13日衆議院本会議で、安倍総理大臣は「検察官にも国家公務員法の適用があると従来の解釈を変更することにした」旨述べた。これは、本来国会の権限である法律改正の手続きを経ずに内閣による解釈だけで法律の解釈運用を変更したという宣言であって、フランスの絶対王制を確立し君臨したルイ14世の言葉として伝えられる「朕(ちん)は国家である」との中世の亡霊のような言葉を彷彿(ほうふつ)とさせるような姿勢であり、近代国家の基本理念である三権分立主義の否定にもつながりかねない危険性を含んでいる。

時代背景は異なるが17世紀の高名な政治思想家ジョン・ロックはその著『統治二論』(加藤節訳、岩波文庫)の中で「法が終わるところ、暴政が始まる」と警告している。心すべき言葉である。』と安倍総理の政治姿勢を厳しく批判している。

 

そして、最後には「しかしながら、検察が萎縮して人事権まで政権側に握られ、起訴・不起訴の決定など公訴権の行使にまで掣肘(せいちゅう)を受けるようになったら検察は国民の信託に応えられない。

正しいことが正しく行われる国家社会でなくてはならない。

黒川検事長の定年延長閣議決定、今回の検察庁法改正案提出と続く一連の動きは、検察の組織を弱体化して時の政権の意のままに動く組織に改変させようとする動きであり、ロッキード世代として看過し得ないものである。関係者がこの検察庁法改正の問題を賢察され、内閣が潔くこの改正法案中、検察幹部の定年延長を認める規定は撤回することを期待し、あくまで維持するというのであれば、与党野党の境界を超えて多くの国会議員と法曹人、そして心ある国民すべてがこの検察庁法改正案に断固反対の声を上げてこれを阻止する行動に出ることを期待してやまない。」

 

[追記]「この意見書は、本来は広く心ある元検察官多数に呼びかけて協議を重ねてまとめ上げるべきところ、既に問題の検察庁法一部改正法案が国会に提出され審議が開始されるという差し迫った状況下にあり、意見のとりまとめに当たる私(清水勇男)は既に85歳の高齢に加えて疾病により身体の自由を大きく失っている事情にあることから思うに任せず、やむなくごく少数の親しい先輩知友にのみ呼びかけて起案したものであり、更に広く呼びかければ賛同者も多く参集し連名者も多岐に上るものと確実に予想されるので、残念の極みであるが、上記のような事情を了とせられ、意のあるところを何卒(なにとぞ)お酌(く)み取り頂きたい。」と結ばれていた。

 

安倍政権が世論の強い批判を受け、法案採決方針を転換するのは異例であると今朝の新聞に書かれていた。しかし、見送りであって廃案ではない。継続審議で秋の臨時国会で成立を目指すとしている。社会面では市民の声として「油断できない」「気を緩めずに監視を」などの意見があった。安倍政権の横暴を許さない。これからも廃案になるまで粘り強く声を上げ続けたいと思う。