ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

「ドイツの森番たち」を読む

 

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著者:広瀬 隆

ドイツは1992年に脱原発向かうことを決めた。この本の作家の広瀬隆さんは1993年にドイツを訪問し、なぜドイツは脱原発に舵を切ったのかその理由を知るためにドイツを取材した。そこでは原発に反対する人も、原子力産業人も快く取材に応じてくれた。それをまとめて「ドイツの森番たち」というタイトルで上梓した。前から読みたいと思っていて読んでなかった本である。今回、図書館で見つけたので、遅くなったが読むことにした。

 

ドイツが脱原発に舵を切った理由はその危険性と費用である。

ドイツが原発の問題を検討した時、まず一番先に考えたことは、原子炉から出る高レベル廃棄物の最終処分についてであった。当時(おそらく今も?)ドイツをはじめ、世界のいかなる国も、高レベル廃棄物の最終処分について解決策を持っていないという事実から出発した。

 

そして、原発政策を考える時に、原発先進国のアメリカの政策に二つの学ぶべき重要な原則があったと当時の担当者が語っていた。

第一は、すべての原子力プラントに課せられている保険制度である。この保険コストが高いため、アメリカでは原発が高くつき、経済的な理由から、もはや電力会社は新規の原発を建設しなくなった。

 

第2は、いわゆる最小コスト計画と言われるものである。これは、新しく発電所を建設しようとする時、今までの発電所よりエネルギー発生コストが安くなければ建設許可がおりないという制度である。

 

この二つのの政策を軸に見直しが始まり脱原発が決定したということであった。この「保険」と「最小コスト計画」は原発をなくしていく最良の制度である。原子力がどれほど経済的にマイナスかを知れば誰でもわかる結論です。と担当者は語っていた。

 

高レベル廃棄物に含まれるプラトニウムの寿命はその半減期が2万4千年である。かなり安全なレベルに近い状態になるまでには、数十万年の歳月がかかる。2千年ではない。

 

その高レベル廃棄物の最終処分について、当時は地下深く穴を掘って岩盤層に埋めるという案が検討されていた。高レベル廃棄物を入れておく金属の容器の表面は60年後も油が煮え立たせるほどの170度の高温で、120年後も150度である。そのような状態で保管する。

ー地底に埋めた金属容器は、1世紀経っても水を瞬時に蒸発させるほど高温で、そこには、この世で最も毒性の高い半永久的寿命を持つ放射性廃棄物が入っている。しかも頑丈な金属容器といってもいつか腐食し、周りには豊富な地下水がある。1993年最終処分場は検討段階であったが、そのようなパンフレットを元に議論が進められている状況であった。

 

この本を読んでドイツ人と日本人の国民性の違いを感じた。オープンに議論する。日本では原発の負の面はすべて覆い隠されて原発が推進されてきたように思う。取材者が反原発に立つということがわかれば、日本の原発推進者はこんなにオープンに話をしないのではないかと思った。1993年のドイツの実態を描いた作品であるが、それから約30年後の2022年にはドイツでは全原発が停止することになっているようだ。ドイツは2050年に太陽光などの再生可能エネルギーの発電比率を80%にする目標で取り組んでいる。2015年には31.6%で(日本は12.6%)、2019年は化石燃料の40%を上回る46%になった。着実に環境先進国の道を歩んでいるようだ。ぜひ日本も参考にしてもらいたいと思う。