ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

「植物のかしこい生き方」を読む

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甲南大学教授である田中修さんが書かれた「植物のかしこい生き方」を読んだ。

私たちの周りには多くの植物があって私達の生活を潤してくれている。そのような身近にある周りの植物が生きるためにどのような工夫をしてきたのかを分かり易く解説してくれている本である。私たちの周りにあるたくさんの植物はsmap が「世界に一つだけの花」で歌っているように、みんな違っている。違っているからおもしろい。普段、近くで見ている草花がどのような生き方してきたのかを知って感心したり驚いたりの連続であった。知ることは楽しい。

 

植物は生き残るために主に三つの生存競争という奪い合いをしているということであった。

一つ目は土地の奪い合いである。植物が成長するためには根を張りめぐらせ、水や養分を吸収するための土地を確保する必要がある。そのため、まず土地を奪い合うことになる。

 

二つ目は、太陽の光の奪い合いである。植物は太陽の光を利用して、光合成という反応を起こし葉っぱでデンプンを作る。デンプンは植物にとって生存のためのエネルギーの源になる物質である。この反応を行うためには葉っぱに光が当たらなければならない。多くの植物が隣り合って葉っぱを茂らせると、光を奪い合う競争がうまれる。

 

三つ目はハチやチョウチョなどの虫の奪い合いである。多くの植物は、次の世代を生きる子孫であるタネを作るためにハチやチョウチョなどの虫に花粉を運んでもらわなければならない。多くの植物たちが一斉に花を咲かせると、ハチやチョウチョを花に誘い込む競争が激しくなる。

 

植物たちはこうした競争を避けるために春に発芽したり秋に発芽したりするなどのスタートの時期を変えて対応したりする。しかし、それだけで、競争が回避できるほど自然はやさしくない。同じ時期に発芽して同じように成長し、同じ時期に花を咲かせる植物はまだまだたくさんある。だから、植物は生き残るためにさらなる知恵をめぐらせ工夫を凝らさねばならなかった。ということで、話がスタートした。

 

朝顔の話があった。

植物はハチやチョウチョを誘って花粉を運んでもらわなければ生き残れない。そこで、多くの花は、美しい色で装い、いい香りを放ち、美味しい蜜を準備して懸命に誘い込む努力をする。多くの花がいっせいに咲けば、この競争はとてつもなく激しいものになる。そこで植物は他の種類の植物と開花する時期をずらすという知恵を絞る。季節によって変えたり、また同じ春に咲く植物でも同じ地域で少しづつ開花の時期がずれるようにした。さらに、植物は種類ごとに「月日」だけでなく、開花する「時刻」もずらすという知恵を思いついた。言わば、三密を避けて時差出勤するみたいなものである。アサガオは朝早く、ツキミソウは夕方、ゲッカビジンは夜というように開花する時刻をずらしてハチやチョウチョなどの虫の誘い込み競争を少しでも和らげてより確実に生存競争の生き残る道を選んだらしい。諦めない結果でアサガオができたようだ。

 

 

マリーーゴールド

マリーゴールドは、花を美しくきれいな色で装う。これは自分を美しく装うことで花粉を運んでくれるハチやチョウチョを誘惑するための作戦である。マリーゴールドの花の装いに使われる物質はカロテノイドという色素である。このカロテノイドという色素で美しく装うのは虫を誘惑するためだけではないらしい。もう一つの大切な理由は紫外線対策である。

紫外線は身体に当たると、活性酸素という物質を発生させる。この活性酸素は老化を早め、植物だけでなく人間にとっても多くの病気の原因となる極めて有毒な物質である。

 

花の中で植物の子孫であるタネが作られる。そのタネを紫外線から守らなければならない。それは紫外線から生み出される有害な活性酸素を花の中から除去しなければならない。そこで、植物たちは、活性酸素を除去する働きをする抗酸化物質というものを植物の中に作る。植物たちがつくる代表的な抗酸化物質がカロテノイドある。

 

つまり、マリーゴールドはカロテノイドという色素で花びらを美しくきれいに装い、虫たちを誘惑すると同時に、花の中で生まれる子供を紫外線から守っているというわけである。

強い太陽の光が当たる花ほど、花の色が濃く色あざやかである。それは環境に恵まれた結果でなく、逆境が厳しければ厳しいほど、逆境に打ち勝つ結果として花がますます美しく魅力的になるということである。学びたい姿勢である。

 

 

ヒイラギ

ヒイラギは漢字で書く場合「柊」という文字が使われることも多い。この植物は、晩秋から冬にかけて花を咲かせることからこの字が当てられているようだ。ヒイラギの学名は「オスマントウス  ヘテロフィルス」」というらしい。「ヘテロフィルス」は「異なった形の葉がある」という意味で、その名のとおりヒイラギは、老いると葉っぱの形が変わるようだ。

 

ヒイラギは樹齢が進むと、生まれてくる葉っぱのトゲの数が減り、縁が丸みを帯びてくるようだ。この現象からヒイラギは私たち人間の人生に例えられることがある。

私たちは「若いときには、言葉や感情にトゲや角が多くあるが、年齢を重ねるとトゲや角が取れて人間が丸くなる」と言われる。そのような生き方を「ヒイラギ人生」と呼ぶこともある。

 

ただし、ヒイラギは年齢を重ねて性質が丸くなりトゲや角がとれるだけではない。ヒイラギの葉っぱが丸みを帯びるのは「虫に食べられるなら、自分が食べられることで、若い葉っぱが食べられるのを防ぐため」で、種を繋ぐ役目を果たしている。死ぬまで若い人の役に立つように生きる。できるものなら、私も本当の「ヒイラギ人生」を歩みたいと思う。