毎朝、天気が良ければ早朝ウオーキングをする。いつもは香焼総合公園を通るコースで行うが、香焼総合公園コースは一部崖崩れのため通行禁止になったので、今日はコースを変えて行うことにした。
いつものコースと違って、今日のコースはスタートしたらすぐに上りの長い坂になる。焦らないで一歩づつ上っていく。上りきって平坦な道をしばらく進むと「円福寺」の前に出る。
参道の石段を上ってくると最短距離で円福寺に到達するが、とてもきつい。今日のコースは遠まわりでゆっくり緩やかに上ってきた。「円福寺」は香焼町の名前の由来を伝えるお寺である。その昔、弘法大師、空海が中国へ渡る際、香焼島に立ち寄り、このお寺の境内で香を焚き平安を祈願したという言い伝えからこの島を香焼島と呼ぶようになったといわれている。このお寺では空海所縁のお寺として毎年4月に「弘法さん」と地元の人が呼ぶ「弘法大師祭」が行われている。
円福寺の前を過ぎて道なりに進んでいくと大きなエノキの木が見えてくる。このエノキの木は樹齢200年と言われる大樹である。榎の木に触れて元気パワーをもらう。
大樹に元気を貰ったあとは海岸目指して下っていく。今日の最高高度75mから一気に海岸線の0m地点まで坂を下っていく。下りきったところは芝生広場で、その先が海岸である。青い海を右手に見ながら海岸線に沿って進むと大きな陸橋が見えてくる。 「魚見大橋」である。
魚見大橋は県道切り通しに架けられた橋で、魚見大橋の先には魚見岳の展望台がある。これから高度60mの展望台目指して右に折れて山道を上っていく。
夏は雑草が生い茂り、通るのが躊躇われることもあるが、最近、雑草の刈り取りをしたようだ。整備されていて歩きやすい。感謝しながら一歩一歩上っていくと展望台が見えてきた。
展望台からの眺めは雄大である。しかし、残念なことに、今日の視界は霞がかかって鮮明ではない。眼下に長崎半島がどこまでも続く。その先は東シナ海につながる。鎖国時代、この場所でも異国船の来航を監視していたらしい。
展望台の眺めを楽しんだあとは「魚見大橋」に戻る。この橋の上から下を覗き込むと怖い。高所恐怖症の私は渡るだけでも怖い。怖いのはわかっているのだから覗かなければいいのにと思うが、来たらいつも下を覗いてしまう。
橋の上からの恐怖を十分に味あって、又ウオーキングを再開する。帰路は県道に沿って取り付けられた石段を下りていく。この石段も長い。階段の途中から見る魚見大橋も面白い。何度も振り返りながら降りていく。
香焼港まで歩いて来た。香焼は1968年埋め立てにより陸続きになったが、それ以前は島であり、唯一の交通機関はここ香焼港を出入りする船のみであった。陸続きになって半世紀を過ぎた。今は更に隣の伊王島とも橋で結ばれている。
県道に沿って歩道を歩いて行くと大きなレリーフが目に入る。そこには、ペーロンの勇壮な姿が描かれている。又、車道との間に設置されているガードレールにもペーロンが描かれている。
ペーロンは、その昔長崎に居住していた中国人が行っていた中国風のボートレースで、それを見習って始まったといわれている。ペーロンは長崎に定着して毎年夏には長崎ペーロン選手権大会が行われている。その大会で、以前香焼町は前人未到の5連覇を達成している。ペーロン船は太鼓や銅鑼を打ち鳴らしながら漕ぎ手の調子を合わせるもので、夏には太鼓や銅鑼の音が夕方になると聞こえてくる。夏の風物詩でもある。しかし、今年は新型コロナウイルスの影響で大会が中止になった。銅鑼の音が聞こえない今年の夏は寂しい。
ペーロンに思いを馳せながらウオーキングをしていくと、ゴール地点に到着。いつも同じコースのウオーキングばかりでなく、たまにはコースを変えるのも新しい発見があって面白い。
新型コロナウイルスがまた感染拡大している。ここ長崎でも毎日感染者が出ている。連れ合いから香焼を出ないでおとなしくしていなさいと言われている。しばらくはどこにも行けそうにない。大声を上げてペーロンを応援出来る日が早く来ることを祈りたい。