ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

安倍首相の負のレガシー

 

 

安倍晋三首相はこの8月24日には、佐藤栄作内閣の7年8カ月を抜き、史上最長政権になったのもつかの間、8月28日、官邸で辞任表明を行った。

 

それに伴い、安倍晋三首相は日本と日本国民に何を残したか、安倍首相のレガシーは何かという話題が様々なところで行われている。安倍政権の目玉であるアベノミックスは失速し、外交面においてはマイナスはあっても成果は無く、多くの人はレガシーにあたるものを見つけることができないように見受けられる。

 

池田勇人氏ならば「所得倍増」、佐藤栄作氏は「沖縄返還」。昨年亡くなった中曽根康弘氏は「国鉄民営化」「行政改革」あたりが思い浮かぶ。最近では、小泉純一郎氏の「郵政民営化」だろう。歴代の長期政権は、その是非はともかくとして、印象深いレガシーを残している。

 

 

そういう中、政治学者の中島岳志さんの評論を長崎新聞に見つけた。

中島岳志さんはその中で

安倍晋三首相は長期政権であっても、歴史に残る成果が見当たらないと言われることが多いが、本当だろうか?私は、安倍内閣が未来の日本に与える影響は思いのほか大きいと思う。

将来、言論統制が強まり、リベラルな価値観や言論空間が窒息する状況が生まれたとき、歴史家はその重要な起点と役割を安倍内閣の功績に求めるだろう。

 

安倍内閣で、権力が個人の内面に介入する法律が整ったことを見逃してはならない。2013年に成立した特定秘密保護法、2017年に成立した共謀罪法、これらの法律が将来の日本で暴走する可能性を視野に入れなければならない。特定秘密保護法は防衛、外交、スパイ活動、テロに関する事項を秘密指定できるとしているが、秘密とされる範囲が明確ではなく、恣意的な処罰への懸念が払拭されていない。

 

戦前・戦中の日本には軍機保護法という性質の似た法律が存在した。この法律の成立によって見せしめ逮捕がなされた後は、国民は自ら権力に忖度し、自らの言論や行動を制限するようになった。国民が勝手に自主規制するようになった。さらに隣組という相互監視システムが起動して同調圧力強化されていった。

国民の側に監視されているという意識をうえつけることによってこそ、監視権力は最大化する。権力のまなざしの内面化こそが、自由な言論を圧迫するという学説通り、権力にとって、軍機保護法は最も効率的で効果的に国民を服従させる方法であった

 

安倍内閣は平成の時代に軍機保護法と似た同じような法律を成立させた。この法律の成立は日本の言論統制に大きな傷を残すだろう。この傷を丁寧に治癒しなければ、大きな禍根を残すことになる」と中島氏は主張している。

 

私も中島氏の意見に同感である。

今までの歴代の日本国首相は、日本国憲法が求める国民主権基本的人権の尊重、平和主義という三つの原則の下に日本国憲法を尊重してリーダーシップを発揮されてきた。しかし、安倍晋三首相は内乱予備罪で告発されることがあったように、日本国憲法を無視する態度・方針が顕著であった。安倍晋三首相は日本国憲法の中味を大日本帝国憲法に変えたいと思っておられたように、日本国憲法を無視する人に基本的人権の尊重など期待するのがそもそも最初から間違っていたのかもしれない。日本国の首相になってはいけない人が首相になっていたのかもしれない。

 安倍晋三首相は、在任中に目立った成果は何もなしえなかったが、大多数の国民が望まない言論統制に効果的な法律だけは残した人であるということを決して忘れないようにしたい。そしてこれ以上、言論統制というこの傷が大きくならないように、そして早くこの傷を治すように努力していかなければと思う。

戦前・戦中みたいに言論の自由報道の自由を失う時代が二度と来ることがないようにしなければと心から思う。