ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

「日本が売られる」

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堤 未果さんが書いた「日本が売られる」を読んだ。

 

裏表紙の解説に

「水と安全はタダ同然、医療と介護は世界トップ。そんな日本に今、とんでもない魔の手が伸びているのを知っているだろうか?法律が次々と変えられ、米国や中国、EUなどのハゲタカどもが、我々の資産を買い漁っている。水や米、海や森や農地、国民皆保険に公教育に食の安全に個人情報など、日本が誇る貴重な資産に値札がつけられ、叩き売りされているのだ。マスコミが報道しない衝撃の舞台裏と反撃の戦略を、気鋭の国際ジャーナリストが緻密な現地取材と莫大な資料をもとに暴き出す!」とあった。

 

堤 未果さんは名前だけは聞いていたが、その著書を読むのは初めてである。堤未果さんは国際ジャーナリストとして活躍されている方で、多くの著書を出版されている。また、それらの作品は翻訳されて海外でも読まれている。

 

読みながら日本の未来が恐ろしく思えた。日本の水、土、タネ、農地、海、医療などあらゆる日本人の資産が叩き売りされている話を読むと恐怖を覚える。このようなことがあまり国民の話題に上らないようにしながら着々と話が進めれられているのを知って不安と怒りを覚える。

 

 

この本の中で書かれている、狙われている日本人の資産は多岐にわたるが、最初に書かれていた水問題については以下のように書かれていた。

「日本の水道普及率は97.9%であり国民にとって何よりも貴い“命のインフラ”である。21億人(世界人口の10人中3人)が安全な飲み水を手に入れられず、45億人(世界人口10人中6人)が安全に管理されたトイレを使えないこの世界で、貧乏、金持ち関係なく、いつでもどこでもきれいな水が飲める恵まれた国は多くない。世界で水道水が飲める国は、アジアでは日本とアラブ首長国連邦の2ヶ国のみで、全世界でも196ヶ国中15ヶ国のみである。

 

それがなければ生きられない、命のインフラ“水道”は、一旦ビジネスにすると唸るように儲かる巨大な金脈になる。1995年8月世界銀行副総裁は「20世紀は石油を奪い合う戦争だった。21世紀は水をめぐる戦争になるだろう」と言った。そしてその言葉は現実になっている。

 

水道民営化は1980代から始まり、まず南米に導入された。1990年代になると「民間企業のノウハウを活かし、効率の良い運営と安価な水道料金を!」という耳障りの良いスローガンとともに先進国と途上国の両方に急速に拡大していった。

 

公営から民営になった途端、水は値札のついた商品になる。運営権を手に入れた民間企業がまず最初にやることは料金の改定である。世界各国で水道料金が急騰する事態になった。世界の事例を見ると、南アフリカでは4年で140%、オーストラリアが4年で200%、フランスは24年で265%、イギリスは25年で300%上昇した。高騰した水道料金を払えず、南アフリカでは1000万人が水道を止められた。イギリスでは数百万人が水道を止められた。フィリピンでは水道料金を払えない人に市民が水を分けることも禁じられた。

株式会社の最大の目的は株主へ投資した分の見返りを渡すことである。利益を出すことである。追いつめられ汚い川の水を飲んだ住民が、感染症でバタバタと死亡する間も、水道事業株式会社は確実に利益を回収していった。

 

水ビジネスは石油よりも巨大な金脈であり、21世紀の超優良投資商品である。そしてこれからますます水の値段が上がっていくと予想されている。「2025年までに地球の人口の3分の1の人々が新鮮な水にアクセスできなくなり、2050年までに地球は壊滅的な水不足に陥る」とい調査結果が出されている。

 

このような水道料金の高騰と水道水の質の低下などの問題から、現在、世界各国で水道事業の再公営化の動きが起こっている。だが、一旦、民間に渡したものを取り返すのは簡単ではない。公営化に戻すために民間企業への巨額な違約金の支払いが発生している。それは全て、今後税金として住民の肩にのしかかっていくことになる。

 

1980年代から世界各国で盛んに導入された水道事業民営化は、2000年代から巨額な違約金を払ってでも解約して再公営化する動きが世界で進んでいる中、

2013年4月、当時の麻生太郎副総理は、アメリカの戦略国際問題研究所の会議の席で「世界中ほとんどの国では、プライベートな会社が水道を運営しておられますが、日本では全て公営事業です。水道料金の回収が99.9%というシステムをもっている国は、世界でも日本の公営の水道会社以外にはありません。これを今後、民営化します。」と発言した。日本の副総理が“水道バーゲンセールのお知らせ”を宣言した。

 

それから、日本の水道事業民営化が始まった。以後は外資企業が水道事業に参入しやすいように法律を変えたり、新らしく作ったりしながら現在も進められている。

世界各国で失敗の経験を踏まえ、再公営化に戻る動きがある中、日本だけは世界の流れを無視して水道事業民営化の道を急いでいる。」

 

水道民営化は、長期的視点に立つと国民の生存権を脅かす政策である。この政策が進められたのは「今だけ金だけ自分だけ」の新自由主義を推進する自民党政権だからできたのだと思う。安倍政権は退陣しても後を継ぐ管首相も水道民営化はそのまま継続である。国民のことを顧みない政権には早期に退陣してもらうしかない。