ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

「ルポ 貧困大国アメリカ」を読む

f:id:battenjiiji:20201015155727j:plain

著者 堤 未果「ルポ 貧困大国アメリカ」



アメリカ大統領選挙がいよいよ佳境に入っている。大統領選挙のニュースを始め黒人差別事件など様々なアメリカのニュースを目にするが、最近のアメリカ発のニュースは想像を絶するものがある。昔の良きアメリカを彷彿させるようなニュースはなくなり、アメリカ発のニュースは深刻なニュースしか聞かないようになった気がする。現在のアメリカは一体どうなっているのだろうかという思いを抱いている時、図書館で堤未果さんによって書かれた「ルポ貧困大国アメリカ」を見つけた。

 

「ルポ貧困大国アメリカ」はまさに驚愕の内容であった。それは「1%の超富裕層対99%の貧困層」で構成される社会の実態がまさに進行中であった。それは人々の食、街、政治、司法、メディア、暮らしそのものをじわじわと蝕んでいき、あらゆるものが巨大企業に飲み込まれ株式会社化が加速している社会であった。

 

 

その一つに「一度の病気で貧困層に転落する人々」というページがあった。

「1980年代以降、アメリカでは新自由主義のもと、公的医療が徐々に縮小されていった。そのため政府は「自己責任」という言葉の下に医療における国民の自己負担率を拡大させ、「自由診療」という公的保険外診療を増やしていった。

 

それによって、自己負担が増えて医療費が家計を圧迫し始めると、民間の医療保険に入る国民が増えていき、保険会社の市場は拡大し保険会社は利益を上げていった。保険外診療が拡大したことで製薬会社や医療機器の会社も利益を増加させていった。医療改革は大企業を潤わせ経済を活性化するという政府の目的に沿っているようにみえたが、「国民のいのち」を民間企業に託することは、取り返しのつかない「医療格差」を生み出すことになった。

 

アメリカの乳児死亡率は年間1000人あたり6.3人(日本は3.9人)という先進国では最も高い割合を示している。これは医療保険を持たないため医者にかかれず死亡する事例が多いためである。全国民が医療を無料で受けられる小国キューバより悲惨である。

 

アメリカでは、政府が大企業を擁護する規制緩和および福祉削減政策に切り替えてから、一般中間層の人々が次々に破産するようになった。

2005年の統計では、全破産件数208万件のうち企業破産は4万件で残りの204万件は個人破産であった。その個人破産の原因の半数以上が高額な医療費破産であった。

 

医療費破産の事例としてあげられていた内容は以下の通りである。マンハッタンに住むごく普通の会社員であるAさんは2005年、急性虫垂炎で入院して手術を受けた。たった1日入院して請求金額は132万円であった。クレジットで支払っていくうち、妻の出産と重なり借金が膨れ上がり破産宣告となった事例である。日本の医療費と比較すると、日本の盲腸の手術代(2007年)は6万4200円であり入院費は差額ベッド代を除き1万2000円である。4〜5日入院しても高額療養費制度のため高額年収の人でも合計で30万円超えることはない。Aさんが住むマンハッタン地区での一般の初診料は1万5千円から3万円、専門医は2万円から5万円、さらに入院すると1日約20万円から30万円かかる。

 

民間の医療保険に加入していてもカバーされる範囲はかなり限定的で、一旦医者にかかると借金漬けになる例が多い。2005年に行われた調査では、病気になり医療費を払いきれずに自己破産した人のほとんどが中流階級医療保険加入者であったという結果がある。

自己破産したAさんの医療保険の掛け金は年間90万8千円であった。アメリカの医療保険の掛け金は2004年から4年連続平均11%前年より上昇している。原因は巨大資本による独占のせいだと言われている。

 

女性の大事である出産についても事情は同じである。アメリカでは出産のため1日入院すると40万円から80万円余計にかかるため日帰り出産も珍しくないそうである。医療保険に入ってなかった女性が出産のため3日間入院したら請求金額が約200万円になるのは普通である。2007年時点でアメリカ国内では4700万人の無保険者がいる。そのうち900万人は子供である。アメリカの世相が荒れているのは、以前の豊かな国アメリカからは想像できないほど社会の貧困化が進んでいることも関係していると思う。

 

 

 

この医療費破産と医療格差は遠いアメリカだけの話ではない。現在の日本はアメリカからアメリカ企業が日本の医療産業に進出するうえで障壁になっている国民皆保険制度を撤廃するよう強く求められている。国民の反対もあり今まで拒否されてきたが、それも安部首相の時代に「世界で一番企業が活躍しやすい国」を目指すということで、日本国内のあちこちに規制なしの企業天国である「国家戦略特区」を作った。そこでは従来の規制を受けない海外企業の活動が行われていく。日本の国民皆保険制度の維持がますます難しくなってくるのではないかと思う。まさしく現在の日本はアメリカ企業の医療産業への参加によって、アメリカ並みの富裕層しか医療を受けれない社会へ進んでいるのではないかと心配になる。国民皆保険の撤廃と自由診療の拡大は保険診療の枠が狭くなることになり、医療の格差につながることから日本医師会も大反対していることである。医療の株式会社化は間違いなく「国民のいのち」を医療格差へと導くことになる。日本医師会も日本の財産とでもいうべき国民皆保険制度を守るべきという主張をしている。小国キューバ国民皆保険が出来て豊かな国で出来ないはずがない。できないのは政治の怠慢だと思う。国民あげてこの国民皆保険制度の維持に目を光らせていかなければと思う。