ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

料亭橋本での会食

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玄関に飾られた生花 長崎花浪漫


知り合いからお祝い事の招待を受けた。コロナが拡大している中、会食に出席していいのだろうかと迷ったが、わざわざご紹介していただいたことやご招待していただいた方と私の年齢を考えると親しく酒を酌み交わす機会はこれから何回あるだろうかと考えると、今回、是非とも出席したいと考え出席した。私の年齢になると出席する行事、催事について、これが最後の機会になるかもしれないと思って出席することがこれから多くなるだろうなぁと思いながら出席した。

 

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「料亭橋本」玄関

場所は料亭橋本である。料亭橋本は長崎で有名な料亭の一つである。料亭橋本のある中川という場所は、昔は桜の名所として有名な場所であった。ここは明治20年、時の県令、日下義雄が郊外から中川に数千本の桜を植樹し、春のみならず、四季を通して、長崎市民の憩いの場として賑わっていた場所である。当時、この地を訪れた東大教授でドイツ人医師のベルツ博士より、この地がドイツとチェコの国境にある温泉地カルルスバードに風景が似ていることからこの地を「中川カルルス」と名付けられた。料亭橋本は、かつて桜の名所カルルス跡地に建つ純日本建築の料亭である。

 

 

定刻20分前に料亭に行く。大きな玄関の方に進んで行くと係の方がお迎えしてくれる。そして、手指の消毒をした後、体温のチェックを受ける。問題がなかったようで玄関を上がりロビーに案内される。そこで茶菓の接待を受けながら会場への案内を待つ。知った顔がロビーに集まり談笑していると、「お部屋へご案内します」という係の方の声がかかり部屋へ移動する。今日のお祝いの会の参加者は11名である。会場の部屋に入ると、係の女性が「最初に記念写真をお撮りしますので緋毛氈の方へお願いします」と言われ、そこで二列に並んで記念撮影をする。

 

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左:卓袱料理 右:会席料理(パンフレットより)

記念撮影の後、席に着く。席は結婚式みたいに名札が書かれておりその名札を見て席に着く。今日の料理は会席料理である。長崎の料亭料理は卓袱料理が定番であるが、コロナの影響で最近は会席料理が多くなった。

ちなみに卓袱料理(しっぽくりょうり)とは、中国料理や西欧料理が日本化した宴会料理の一種である。長崎市を発祥の地とし、大皿に盛られたコース料理を、円卓を囲んで味わう形式をもつ。和食、中華、洋食(主に出島に商館を構えたオランダ、すなわち阿蘭陀)の要素が互いに交じり合っていることから、和華蘭料理(わからんりょうり)とも評される。日本料理で用いられている膳ではなく、テーブル(円卓)に料理を乗せて食事を行う点に特徴がある。献立には中国料理特有の薬膳思想が組み込まれていると考えられている。また、円卓は身分の上下を取り払う意味があるといわれている。

しかし、最近のコロナの感染拡大により大皿の料理を取り分けることが感染につながる危険があると考えられ、卓袱料理は遠慮されている。現在は長崎でも一人一人に配膳される会席料理が一般的になっている。

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11人の食事会なので5人と6人が対面式する形で席が設けられていた。広い部屋にソーシャルディスタンスを十分に取った席作りがなされていた。横、前の方の話し声は聞こえるが、それ以上離れた方とは会話はできない。安全・安心に配慮された席作りである。しかし、わがままを言わせて貰えば、時世とはいえ隣の人との間隔が少し遠すぎると思った。早くコロナが収束して昔みたいに顔突き合わせて酒を酌み交わす時代が早く来て欲しいと思った。

 

料亭橋本の背には長崎の彦山(ひこさん)がそびえている。江戸時代に、狂歌三大家の一人と言われた天才狂歌師である太田南畝(別名:太田蜀山人)は文化元年から文化2年(1804〜1805)長崎奉行勘定役として長崎に滞在した。その蜀山人が彦山を歌った狂歌を残している。

「彦山の 上から出づる 月はよか こげん月は えっとなかばい」

蜀山人はわずか一年余りの滞在で長崎弁を使いこなし、万人の笑みを誘う長崎情緒を歌い上げている。

蜀山人が歌った彦山の月を見るのに一番適した場所がこの料亭橋本の庭であると人は言う。次は、月が上がる頃にまた来てみたい。