ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

「増える自死 社会に要因」

 

長崎新聞の「NEWS 論点」のコーナーに「増える自死 社会に要因」というタイトルの論文が載った。執筆された方は全国自死遺族連絡会代表理事田中幸子氏である。

 

田中氏はその論文の中で以下のように述べていた

『新型コロナの感染対策は、端的にいえば「人と人との接触や会話を減らすこと」だ。一方、自殺の対策は「孤立を防ぐこと」であり、正反対に位置している。

コロナ前はカウンセリングやサロン、カフェなど人と話す機会をつくることが自殺対策となっていたが、コロナによってこのような場が奪われたことは深刻であり、電話相談やSNS相談員の増員が求められる。これまで以上に地方行政は多様な民間団体と連携して取り組むべきである。

 

感染拡大で自殺が増えるのは予想できた。感染拡大の対策を徹底すれば、食事も一人、家族とも会話せず、買い物でも誰とも接触しないことを求められる。気晴らしの外出も許されない。自殺の危険を抱えている者にとっては、よくないことだらけである。厚生労働省はこうした観点も含めた対策をもっと早く取るべきであった。救えた命は多くあったはずだ。

 

国による自殺対策法人「いのち支える自殺対策推進センター」の代表理事厚労省での10月の記者会見で、最近の若者の自殺の増加は「ウエルテル効果」だと説明した。自殺した芸能人らの「後追い」で自殺が増加するとの説である。しかしこの説は、人が他人に影響されて軽々しく命を絶ったイメージを与えるが人はそれほど簡単に死なない。いろんなものに極限まで追い込まれて死ぬのだ。

私は単純に「コロナ渦の経済的要因で自殺が増えた」という論調に反感を持つ。コロナは最後の引き金になったと位置付けるのが妥当である。

 

2006年に策定された自殺対策基本法には「自殺の背景には様々な社会的要因があることを踏まえ、社会的な取り組みとして実施する」とあるのに、国は人を追い込む社会的要因を放置し、「追い込まれたら相談してください」というだけの「支援」を14年間続けてきた。コロナ渦に出現した自殺の増加の原因は、社会的要因の放置によるものだ。いじめや不登校、過労、パワハラ、労災、ひとり親家庭の貧困、非正規雇用、派遣切り、学生の経済的苦境などがいずれも増えてきている。コロナ渦で自殺が増えたのは、もともとハイリスクの人が一線を越え「氷山の一角が頭を出しただけ」とも言えるのではないか。

 

このままでは、真面目な人はこれまで以上に生きにくくなり、追い込まれていくことが容易に想像できる。それを防ぐために、感染対策とは別に、救える命を増やす様々な対策を講じていくことが必要』と述べていた。

 

先日の新聞報道によると、新型コロナウイルス感染による日本の死者数は(世界的にみれば)かなり少ないが、最近自殺者が急増しているという記事であった。警察庁のデータによれば、今年10月と11月の自殺者は、それぞれ約2200人、1800人で1月~11月の自殺者は1万9000人以上になり年間では2万人以上になるだろうといわれている。因みに10月の自殺者は、前年同月比で男性が約22%増で、一方女性は約83%増となり、女性の自殺者が急増しているという分析であった。

 

 

私も、田中氏の論文を読み、また最近の女性の自殺者増加のニュースを見ても、自殺者の増加は社会に要因があると考える。

例えば女性の自殺を考えた場合、コロナによるパンデミック発生後の失業者のうち、女性は少なくとも66%を占めているといわれている。これは、小売業やその他のサービス業で働く労働者に占める女性の割合が高いことが原因だと思う。「非正規雇用」の女性の比率が高いことを反映したものでもある。

こうした働き方での仕事は、基本的にはパートタイムで、給料も手当も少なく、雇用の保障もほとんどない。これは、現在の日本が抱える最も深刻な“持病”のひとつである。

 

日本政府は8年前、男女平等の実現を真剣に受け止めていると主張して、政府は女性の就労率を約70%にまで引き上げたが、問題はこれらの女性たちの大多数が、「非正規」で雇用されていることである。非正規雇用の従業員は、パンデミックが起きるなど経済的に困難な状況に陥れば、簡単に人員削減の対象にできる。コロナ禍に見舞われる前でさえ、社会学者たちは日本女性、特にシングルマザーたちの貧困率を憂慮していたことである。

 

このような非正規雇用という雇用の保障のない働き方という社会的要因が女性の自殺者の増加の原因の一つであるあるとするなら、それを改善して女性にとっても住みやすい生きやすい国にするのが政治家の役目であろうし、国民の願いでもある。女性や子供が安心できる国づくりを目指さない国に明るい未来はないと思うのは私だけだろうか。