ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

「本物の教養」を読む

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出口治明氏の著書、「人生を面白くする本物の教養」を読む。出口治明氏は、1948年生まれの現在72歳で、ライフネット生命保険の創業者であり日本の実業家である。現在は立命館アジア太平洋大学学長でもある。出口氏の活躍する姿を拝見して、氏の著書を見つけたので読んでみることにした。

 

出口氏はこの本の中で「日本はモデルなき時代に入っています。かつてのように、アメリカを「手本」としてキャッチアップを目指してしてやってきた単純で幸福な時代は終焉しました。時代は変わりました。日本は課題(少子高齢化、財政の悪化、国際競争力の低下など)先進国になりました。これからは「手本」なしに自らの道を切り開いていかなくてはなりません。

個人としても同じことです。誰かに言われるままにやっていていればいいという時代は過ぎました。一人ひとりが自分の頭でよく考えて、自分の生き方を考えていかねばなりません。

10年ほど前に、「下流社会」という言葉が日本の新しい状況を言い当てたキーワードとして注目を集めました。その後、「下流社会」は悪化こそすれ、改善してはいません。このままでは私たちは「手本」がなければ向上することができない国および市民になってしまいます。

よりよい社会を作る原動力は、つまるところ、私たち一人ひとりの生き方にかかっています。教養とは、よりよい社会とよりよい人生を実現するための武器です。一人ひとりが自ら培った教養をもとに、私たちが望む生活、望む世の中を作っていくのです。教養をただの知識として蓄積しておくのではなく行動のバネとしてほしいと祈念します。」と綴っている。

 

著書を読んで出口氏の考えに共感するところが多くあった。もちろん教えられるところも多くあった。期待通りのものであった。その中で面白いと思ったことを記す。

 

「北欧の子供より劣っている日本の政治評論家」

『北欧では子供たちに選挙について次のように教える。「もし、あなたが有力候補を支持するのであれば、三つの方法がある。1 有力候補の名前を書いて投票する、2 白紙で投票する、3 棄権する 以上の三つの方法がある。逆に有力候補を支持しないのであれば一つの方法しかない。すなわち、投票に行って別の候補者の名前を書いて投票するしかない」と

現代の選挙システムでは、白票や棄権は有力候補に投票するのと全く同じ結果をもたらす。つまり白票や棄権は有力候補を支持しているのと同じである。2014年の総選挙では、自民党有権者に対する絶対得票率(比例区)は16.9%であった。にもかかわらず圧勝したのは棄権や白票が多かったからである。かつて森元首相が「選挙に関心のない人は寝ていてくれたらいい」と発言したがこれを踏まえての発言であった。

有力候補を支持しないのであれば、他の候補者に投票するしか選択肢はないが、日本の一部の評論家は「白票もノーと言う意思表示である」「棄権はアンチの意思表示である」と推奨していたが北欧の子供たちさえそのような間違いは起こさない。これが日本の偽らざる実情である。』

 

「選挙は忍耐そのもの」

『選挙について、チャーチルは次のように言った「選挙に立候補する人間は、私を含めて、ろくでもない人ばかりである。選挙に出る人は、異性にもてたいとか、お金を儲けたいとか、目立ちたいとか、権力を握りたいとか、せいぜいそんなところが実際の目的だ。選挙とは、ろくでもない人のなかから、現時点で税金を上手に分配できそうな少しでもましな人を選び続ける忍耐そのものを言うのである。だから、民主主義は最低の仕組みである。ただし、王政や貴族政や皇帝政など人類のこれまでの政治体制を除いては」

チャーチルは、いい政府をつくるには相当な忍耐がいるし、政治家に立派な人格を勝手にイメージしてはいけないし、安易に政府や政治家を信じてはいけないと訴えている。チャーチルが語ったようなリアルな発想を学校教育でも教えるべきです。チャーチルの言葉は、選挙や民主主義についての最低限学んでおくべきコモンセンスです。』

 

出口氏の著書「本物の教養」を読んで、高齢化対策や少子化対策にしても腑に落ちることがいろいろとあった。教養という言葉について、単なる知識の量ではなく自分の人生を彩り豊かなものにしてゆくもので、それは世界の謎を解きたいというその人の好奇心が教養を深めるエンジンになるという話も納得できた。世界の謎を解きたい、知りたいという欲求が老いてますます盛んになるよう好奇心を高めていきたいと思う。