NHK BSで「ネーミング・バラエティ」という番組をやっていた。今日のタイトルは「ワケあって改名、ヒット曲の真相」であった。別にこの番組をみたいと思って電源を入れたわけではないが、見ているうちに引き込まれて最後まで見てしまった。
題材にあがったヒット曲は「異邦人」「心のこり」「みちのく一人旅」の三曲であった。
一つ目の異邦人は久保田早紀さんが作詞作曲したヒット曲である。
子供たちが空に向かい両手をひろげ
鳥や雲や夢までも つかもうとしている
その姿は きのうまでの何も知らない私
あなたに この指が届くと信じていた
空と大地が ふれ合う彼方
過去からの旅人を 呼んでいる道
あなたにとって私 ただの通りすがり
ちょっとふり向いてみただけの 異邦人
この歌は中東の世界を想像させる異国情緒たっぷりの曲である。しかし、作曲した久保田早紀さんによると彼女は中東に行ったことはない。この曲は、大学生時代に東京の中央線を使って通学していた時に、中央線の沿線の情景を眺めながら作った曲ということであった。久保田さんは大学時代に新人歌手オーディションに応募して自作のこの曲を「白い朝」という曲名で提出していた。それが審査員の目に留まりこの曲をエーゲ海から中東にかけた地域へのイメージソングに使いたいという提案があり、曲名を「白い朝」から「異邦人」に変え、合わせて歌詞も一部手直ししたいという提案があった。久保田さんは最初、「異邦人」という曲名に違和感を持ったそうだが、違和感なくスっと入る言葉は記憶に残らないからダメですと言われて了解したらしい。それが瞬く間にヒットして、今考えると曲名が平凡な「白い朝」だったらヒットしなかったかもしれない。「異邦人」に改名してよかったと感想を述べていた。この曲は中東をイメージさせるが実際の背景は日本の中央線沿線ということも面白いと思った。
二つ目は細川たかしさんの「心のこり」であった。
私バカよね おバカさんよね
うしろ指 うしろ指 さされても
あなた一人に命をかけて
耐えてきたのよ 今日まで
秋風が吹く 港の町を
船が出てゆくように
私も旅に出るわ 明日の朝早く
この曲の曲名は、当初歌詞の通り「私バカよね」だった。しかしこの曲名では、新人のデビュー曲ということもあり、PR活動など挨拶回りに支障があると判断され「心のこり」に改題されたということであった。
この曲は細川たかしのデビュー曲ながら、オリコンで1位を獲得し、また第17回日本レコード大賞の最優秀新人賞を細川にもたらした曲である。細川さんが当時の思い出話として、どこに行っても「あのお馬鹿さんだ!」と大人や子供さんからまでも言われてそうとう売れているのが実感できたと語っていた。
ここでいっしょに 死ねたらいいと
すがる涙の いじらしさ
その場しのぎの なぐさめ云って
みちのく ひとり旅
うしろ髪ひく かなしい声を
背(せな)でたちきる 道しるべ
生きていたなら いつかは逢える
夢でも逢えるだろう
この曲は、当時無名歌手の山本譲二に巡ってきた名曲である。山本は、初めてこの曲を聞いた時素晴らしい曲だと思い、この曲を私にくださいとお願いしてもらった曲である。山本は当時29歳、なかなか芽が出ずにいたが、この曲を最後の曲としてこの曲に賭けようと思って取り組んだ。この曲は当初、「最後の女」という曲名であった。発表に向けてレッスンを受けている時に、山本は曲名は「最後の女」ではなく「みちのくひとり旅」がいいのではないかとひらめいた。そこで山本は曲名変更を願い出た。それを作詞家の方が受け入れてくれて実現した曲名である。山本は当時のことを思い出しながら、当時の立場からすると歌手がそのようなことを言うと身の程知らずと言われ、仕事を干されても仕方のないことなのによく受け入れていただいたと話していた。この曲の大ヒットのおかげでみちのくの観光客がその後増大していったということであった。
どの曲も私の好きな曲であったので曲に秘められたエピソードを楽しく聞き入った。今は仲間と一緒にカラオケで歌を楽しむことができない。でも、またあの楽しい時間が来ればいいのにと思う。それまでは一人カラオケでストレスを発散しながらその日が来るのを待とうと思う。