ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

朴慶南(パク・キョンナム)さんの話を聞く

作家でエッセイストのパク・キョンナムさんと佐高信さんの対談を聞いた。話は昨年ブームになった韓国ドラマ「愛の不時着」を話題にして始まった。「愛の不時着」は敵対する国の若い男女が恋に落ちるという韓国版ロミオとジュリエットの話である。

 

ドラマ「愛の不時着」の主人公は北朝鮮軍の若き将校のリ・ジョンヒョクと韓国の財閥令嬢ユン・セリの二人である。ドラマはその二人の恋を助けるものがいたり、邪魔するものがいたり、涙あり笑いありの展開で最後までハラハラドキドキの連続であったが、二人の恋の一番大きな障壁は国家であった。

ドラマの中で、北朝鮮軍の若き将校リ・ジョンヒョクの部下がなんとか二人の恋を実らせたいと思い悩むシーンが出てくる。そのとき、思い悩んだすえ、祖国を統一するしかないと自分に言い聞かせる場面があった。

パク・キョンナムさんはこれが、このドラマの底流に流れる大きなテーマであると語っていた。

 

パク・キョンナムさんは鳥取県米子市生まれの在日韓国人である。高校までは日本名新井慶子を名乗っていたが、大学進学とともに朝鮮名の朴慶南をを名乗るようにしたということであった。朴さんのお父さんは日本に来て朴さんを育てるために懸命に生きてきたわけだが、昔そのお父さんが「祖国を無くしたらどんなに惨めなことになるか」と言いながら、泣いていた様子が今も忘れられないと語っていた。その韓国は今もって韓国と北朝鮮の二つの国家に分断されたままである。

 

佐高信さんが韓国の歌手にイムジン河をリクエストしたところ断られたという話をしていたが、それはイムジン河の歌詞に「だれが祖国を二つに分けてしまったの  誰が祖国をわけてしまったの」という歌詞があるから歌わなかったのではとパクさんは話していた。

 

現在、韓国と北朝鮮は38度線で分断されているわけだが、この38度線はそもそも日本がつくった分断線という話であった。つまり、旧日本軍が韓国を植民地統治している時代に作った分断線であるという話であった。つまり日本は韓国を植民地統治しているときにソウルに司令部を置く朝鮮軍と新京に司令部を置く関東軍の二つの軍隊を派遣して韓国を統治していた。その二つの日本の軍隊が38度線より南は朝鮮軍管轄地とし、それより北は関東軍管轄地として統治していたということであった。38度線の歴史に日本が関わっていたことを知り驚いた。

 

韓国は第二次世界大戦が終了するまでは日本の植民地として統治され国が存在しなかった。第二次世界大戦で日本が無条件降伏して、同時に韓国は朝鮮の地に再び祖国が蘇るはずであったのに、分断国家として二つに分けられてしまうという悲劇が始まった。

パク・キョンナムさんと佐高信さんの対談の中で分断国家としての韓国の悲劇が話されている中、日本分断統治計画の話が出てきたのでこれも驚いた。

 

日本の分割統治計画は、第二次世界大戦終了後の日本本土を連合国が分割統治しようとした計画案で合衆国陸海軍による記録が残されている。

「日本を占領統治するなら、コストを節減し米軍は最小限にとどめるべきだ。米国が日本軍政に主な責任を負うべき理由はない」とあり、米軍負担の軽減化のため、連合国による日本共同占領案がが提案されていた。それによれば、

占領開始期は、米国が単独で占領せざるを得ず、二十三個師団・八十五万人の米軍を投入する。組織的抵抗、反乱のため一年間は維持する。

その後、米軍を撤収させ、各国軍に占領させる。

ソ連:北海道、東北地方。

アメリカ:本州中央(関東、信越、東海、北陸、近畿)。

中華民国:四国。

イギリス:西日本(中国、九州)をそれぞれ統治

東京は四カ国共同占領。

一年後、各国兵力を半数以下に削減し、米軍は13万5千人程となる。

という日本分断統治計画が起案され成立していたにも関わらず、情勢変化のためアメリカ軍による一国統治がなされその流れで現在につながっている。

 

分断されるはずだった日本が分断を逃れ、代わりに韓国が分断国家にされてしまった。韓国では、同じ韓国語を話す者どうしが敵味方に分かれ、今まで自由に行き来していた場所に自由に行き来できなくなり、親戚として仲間として友人として親しく交流していたことが、親しく交流することが全て禁じられ、その後は分断の苦しみの歴史を歩んできている。

 

この分断国家に日本がなっていたかもしれないと思うと、韓国が背負っている分断国家の悲しみ苦しみをとても他人事とは思えない。韓国の祖国統一のために日本人としてアジア人として何かの力になりたいと思う。

パク・キョンナムさんと佐高信さんの対談から日本と韓国(北朝鮮を含む)の間の歴史を見直すことができた。悲しい歴史を乗り越えて友好の歴史を紡いでいきたいと思う。