ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

映画「日本と再生 光と風のギガワット作戦」を見る

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映画「日本と再生 光と風のギガワット」より


福島原発事故であぶり出された原発利権構造。 日本政府は執拗に原子力発電の復活を目論んでいる。 すべての原発を止めようとする脱原発弁護士・河合弘之氏は「原発をなくしても、自然エネルギーで地域も経済も再生できる」と信じ、世界の自然エネルギーの実情を知る旅に出た。この映画はその記録である。この映画を見て、世界はAIやIOTの発展により集中型システムから分散型システムに移行しているのがよくわかった。そして分散型システムのエネルギー革命がこれからの世界の成長を担っていくという印象を受けた。

 

ドイツは福島第一原発事故に学び、原発を廃止して再生可能エネルギーへの転換を進めている。ドイツではたくさんの地域や都市が再生可能エネルギーへの事業に進出している。例えば、フランクフルト郊外にある人口10万のラインフンスリュック郡では太陽光発電や風車の森という300基の風力発電事業を展開し、電力自給率262%を達成している。余った電力は売電されている。発電事業は新しい地域の雇用を生み出し、年間50億円の利益を出している。地域には安い料金で電気が提供され、再生可能エネルギー事業から得られた収益は税収の半分に上り、住民の税負担の減少に貢献して地域の豊かさに繋がっているということであった。担当者は言う。「今まではエネルギーに使う石油代金をアラブの人に払っていました。今は電気を自由に使って50億円収入があるのです。住民は再生可能エネルギー事業を喜んでいます。」

 

デンマーク自然エネルギー電力先進国である。2016年時点で電力の40%を風力発電でまかなっている。風力発電の80%は各地の協同組合や市民によって運営されている。デンマークでは1980年代から自然エネルギー発電が各地で草の根のように広がり、エネルギーシステムは集中型から分散型に変化していった。集中型とは火力や原子力など大容量の発電所が広範囲の需要を支えるシステムである。分散型とは風力発電太陽光発電などの小さな発電所が地域ごとの需要を支えながら連携するシステムである。原料費ゼロの自然エネルギー発電は地方自治体や個人の手で始めやすいことから自然エネルギーイコール分散型と捉えることができる。

 

デンマークのサムソ島は人口4300人の農業を主体とする過疎の町であった。この島では電力の地産地消に取り組み2008年に電力自給率100%を達成した。今では電力販売が島の主要産業になっている。島に25基ある風力発電は島民の共同組合が出資を募り作られた。今では年利13%の高配当を出している。

 

分散型では地域経済が伸び、財政が潤い、人口が増え、雇用の創出が見られるという結果がどこでも見られている。過疎地であった場所に地域産業が生まれ人口増加につながったということが起こっている。集中型である東京電力柏崎原子力発電所の40年間の地域経済における経済効果調査では地域の経済は伸びず、財政は潤わず、人口は増加せず、雇用創出も見られていないという結果がでている。このことは他の原発立地地域の経済も同様であった。原子力産業は原子力発電を誘致すると誘致地域の経済が活性化すると訴え続けてきたが40年間の調査結果は必ずしも活性化につながらないという結果であった。

 

福島第一原発事故以降、日本でも自然エネルギーによるエネルギーの自立を目差す自治体が増加した。安全なエネルギーで地域の産業と雇用を生み出そうとする動きが活発になった。原発はいらない。太陽光発電風力発電水力発電地熱発電バイオマス発電など地域にあった自然エネルギーを使った自前の再生可能エネルギーでエネルギー自給率100%を目指す自治体が増加した。エネルギーの地産地消から地域おこしにつなげる動きが見られた。

 

しかし、そのようなエネルギーの自立を目指す動きに対して、大手電力会社は自然エネルギー発電の普及を阻むために強固な壁を作った。大手電力会社が提案して作られた以下の三つの壁は現政権により政策として採用され自然エネルギー発電の電力事業への参入の大きな障壁になっている

1  接続可能量の制限、2  各地の空き容量制限、3 連系負担金

自然エネルギーで作られた電力を売電するためには大手電力会社が所有する送電網を使って送電する必要がある。その送電網を使うために厳しい条件が設けられ希望する通りに送電網を使えない。また使うために高額の負担金を要求されるなど大きな壁が作られた。この壁は日本政府の政策によって実施されておりこの政策の下では自然エネルギー発電の普及は期待できない。

 

そもそも、日本政府のエネルギー基本計画によると2030年の日本とドイツの自然エネルギー電力目標は日本は最大24%に対してドイツ50%である。日本はドイツの目標の半分でしかない。しかも2020年の欧州各国の自然エネルギーの電力目標はデンマーク52%、スペイン40%、ドイツ39%、イギリス31%、フランス27%、イタリア26%であり日本は欧州各国の2020年度の目標にも届かないレベルを2030年に設定しており、日本は地球温暖化防止に熱意のない国という指摘を世界各国から受けている。

 

世界各国が福島第一原発事故から学び、危険すぎる原発から自然エネルギーへの転換を急いでいる中にあって、日本にとって今なお、原発は重要なベースロード電源であるとして原発再稼働を急いでいる。日本は世界におけるエネルギーの流れからどんどん取り残されていく。日本においては、自然エネルギーの普及は三つの壁が大きな障壁となって参入が難しい。現政権が政策として三つの壁を続けるならば、なんとしても現政権を次の選挙で与党から引きづり落とさねばと思う。