今日の「薬草で健康」のフィールドは稲佐山公園である。稲佐山公園は長崎市民にとって一番の憩いの場である。稲佐山公園は四季折々の風情を友達やファミリーで楽しむことができる公園であり、イベントやコンサートを楽しむ公園でもある。そしてなによりも展望台から絶景を楽しむことができる公園である。しかし、今日はその絶景には目もくれないで、ひたすら草木を見つめながら公園内を歩き回った。


公園に入ってすぐに先生が杖を指して「これはヒカゲノカズラです。」と説明を始める。先生は80代であるが声は相変わらず若くそして元気である。ヒカゲノカズラは、山野に自生する多年草で、カズラという名を持つが、つる状ながらも他の植物の上に這い上がることはなく、地表を這い回っている。針状の細い葉が茎に一面に生えていて細長いブラシのような姿である。 植物体を乾燥させても比較的よく緑を保つことや紐状で様々な形に加工できることからドライフラワーやアート素材などに用いられる。金魚の養殖、産卵巣に使われる。
生薬名は「伸筋草」という名前がつけられているとおり、筋肉の凝りをとって軟らかくする、関節痛や捻挫などの薬とされている。使用方法は全草を乾燥させ酒に漬けて服用するか、患部に外用する。


ツボクサはセリ科の植物で、地表を這い回る多年生草本である。和名は壺草と書く。壺は庭の意味で、庭や道端に生える植物という意味である。中国では「積雪草」と呼ばれ、全草を解熱・利尿・止血薬として使われている。ベトナムでは薬用に用いるほか、日本の青汁のような健康飲料として飲まれているようだ。
ウマノアシガタはキンポウゲ科の野草で北海道から南西諸島まで広く分布する多年草である。日当たりの良い山野に生える。草丈30〜60cmで茎と葉裏に白い毛がある。春に直径2cmほどの黄色い花を咲かせる。花弁は5枚で倒卵形である。
ウマノアシガタは有毒植物である。これを食べた牛が中毒を起こすことがあるらしい。この草を食べると口の中が腫れ上がり、胃腸も炎症を起こすので注意が必要である。
オオバコは道端などによく見ることができる野草で、地面から葉を放射状に出して、真ん中から花穂をつけた茎が数本立っている。踏みつけに強く、人などがよく踏む場所のほか、校庭や公園などでも見られる。
葉や種子は煎じて服用すると咳止め、下痢止め、消炎、利尿に効果がある。若い芽や若葉はゆでて、水にさらすと食用になる。外皮から取れる食物繊維は、カロリーが低く満腹感を感じさせる ので、ダイエット食品の材料としても使われている。


ヘビイチゴは日本全土に広く分布するバラ科キジムシロ属に分類される多年草である。和名の語源はヘビが食べるいちごから来ているという説がある。ヘビイチゴの赤い実は食べることができるがほとんど味もなく美味しくない。普通のイチゴにはビタミンCなどの栄養素が含まれるが、ヘビイチゴには栄養分も期待できない。ただし、ヘビイチゴを焼酎漬けにして肌に塗ると、かゆみや肌荒れに効くという民間療法があるようだ。


ニワトコはスイカズラ科ニワトコ属の落葉低木である。日本の漢字名は接骨木は、枝や幹を煎じて水あめ状になったものを骨折の治療の際の湿布剤に用いたためと言われている。
若葉を食用としたり、その葉と若い茎を利尿剤に用いたり、材を細工物にするなど多くの効用があらるため昔から庭の周辺に植えられている。
ヤツデはウコギ科ヤツデ属の常緑低木である。日当たりの悪い場所でも育つので庭の中でも家の陰になっているところで見かけることが多い。ヤツデの葉の形は人の手に似ていることから「お客さんを招く」「お金を招く」とされ縁起の良い木として玄関先やお店の入り口に飾られていることも多い。ただし、ヤツデの葉には殺虫剤になるヤツデサポニンという毒が含まれているので食べることはできない。


トベラはトベラ科トベラ属の常緑低木である。主に枝の先に葉が集まって付く。葉はつやのあるみどりいろで、周辺部がやや内に巻くように、葉全体が反っている。4〜5月頃芳香のある白い5弁の花をつける。枝葉は切ると悪臭を発するため、地方では昔から節分にイワシの頭とともに魔除けとして戸口に掲げられた。そのため扉の木と呼ばれていた。トベラという名前は扉の木からきていると言われている。
先生の説明を聞きながら、写真を撮ったり記録をしたりしながら先生について行く。突然、先生が私の方を見て、「〇〇さん、この黄色い花は以前見ましたね。この黄色い花は何でしょうか?」と質問された。試験が始まった。私は即座に、「これは春のノゲシです。この花は毒植物なので注意が必要です。」と話し始めたら、「違います!これはオニタビラコです。毒ではありません。」とバッテンをもらってしまった。言われたら思い出すが即座に正しい名前が浮かばない。80代の先生が70代の生徒に指導する。物覚えの悪い70代の生徒を持つと先生も嫌になるだろうと思うが、先生は嫌な顔一つされないで何度でも指導してくれる。有難い。弛まず歩み続けるしかない。