ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

大谷選手の「運」を考える

大谷選手の活躍が楽しみである。午前中にBSなどで大谷選手が出場するゲームが実況放送されていたので、それを見るのが毎日の楽しみな日課であったが、オリンピックで大谷選手の放送枠がなくなってしまいがっかりしている。試合での活躍はもちろん楽しみだが、グランドのゴミを拾ったとか、審判に笑顔で応対したとか、大谷選手がアメリカ人に好感を与えているさまざまなエピソードを見るのも楽しみである。アメリカのテレビでは、彼の人間性あふれる振る舞いを好意を持って伝えているのがよくわかる。
彼の大リーグでの活躍は凄いことだが、それだけでなく、彼がアメリカ国民から好感を持って迎えられ、そしてアメリカ国民に愛されているニュースを見ると嬉しくなる。彼の人間性はどこの国に行ってもどこの国民からも愛されるだろうと思う。それと同時に彼のこのような人間性はどのようにして形成されたのだろうと気になった。

花巻東高校に入学して彼は目標達成シートを作成した。そこには野球選手としての技術的成長と同時に人間的成長を目指した目標達成シートが作られた。その目標達成シートの中で、私が驚いたのは、彼が「運」を目標達成の項目として掲げていることであった。私は、「運」については「その人の意思や努力ではどうしようもない巡りあわせ」と思っていたので「運」を目標達成項目にあげることは、当初、何か違和感を覚えた。彼は「運」を努力によって引き寄せることができるものだと考えているようだ。彼は、「運」に恵まれた人生にするための必要な要素として「あいさつ」「ゴミ拾い」「部屋そうじ」「道具を大事に使う」「審判さんへの態度」「本を読む」「応援される人間になる」「プラス思考」を掲げていた。
私はこの目標達成シートを見て、「運」についてそのような考え方があるのかと16歳の高校生から人生訓を教えられたような気分になった。先日、テレビを見ていたら大谷選手の目標達成シートが話題になり、大谷選手の考え方は中村天風という方の影響があるという話があった。私は中村天風氏については知らなかったが、興味がわき中村天風氏の書物「運命を拓く」を読むことにした。

 

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中村天風氏は、心身統一法の普及啓蒙を目的とする「天風会」の創始者明治9年に東京に生まれ、昭和43年、93歳で永眠された方である。著「運命を拓く」は中村天風氏が修練会などにおいて講述されたものをまとめ上げ発表されたものである。

「運命を拓く」にはいろんなことが書かれていたが、取り急ぎ、「運」について書かれている項目を探すと第6章に「人生と運命」という項目があってそこから読み始めることにした。そこには運について以下のように書かれていた。
「今の人達は、自分がある程度努力して、この努力が実らないと、それを運命だと思ってしまう。例えば、病の時でも一生懸命手を尽くしても治りが遅いと、“運命”だと思ってしまう。あるいは、事業を盛り返そうと一生懸命努力しても、自分の思うとおりにならないと、これもまた“運命”だと思ってしまう。こうして何もかも運命だと片付けてしまうのだけれども、人間の力ではどうにもしようがない運命というものは、たくさんあるものではない。自分の思慮が足りないか、あるいは力が足らないかの理由で運命が開けないことを、いわゆるどうすることもできない運命だと決めてしまうのは軽率極まりない話である。運命には2種類あることを知って欲しい。すなわち“天命という運”と“宿命という運”である。天命は絶対で、宿命は相対的なものである。もっと分かりやすく言うなら、天命というものはどうすることもできない。この現代に生まれるのも天命なら、昔に生まれたのも天命。また末の世に生まれるのも天命だ。これはどうすることはできない。しかし、宿命というのは人間の力で打ち開いていくことができるものである。ところが今の人は、打ち開くことのできる宿命にぶつかったときでも、それを天命という。自分の努力が足らないことは棚に上げ、どうにもしようがない、というのが多い。
繰り返していう。運命というものには2種類ある。どうにもしようがない運命を天命といい、人間の力で打ち開くことのできるものを宿命というのである。
自分の人生を明るくするためには、まず正しい運命を作れということである。そうするには、第一に、変えられる運である宿命を統制して活き、変えることのできない運、天命に安住することである。宿命を統制するには、常に正義を実行し、運命を選ぶ法則を自覚することである。すなわち、正義を実行すると、それが自然と運命を選ぶ法則に合致する。(略)
宿命統制にもう一つ必要なことがある。それは常に心の中に感謝と歓喜の感情を、持たせるよう心がけることである。習慣として、感謝と喜びで人生を考えるよう習慣づけよう。この心がけが、宿命統制にすこぶる効果があるということが分かるなら、宿命統制ということが、さほど困難でないと悟れることと思う。」とあった。これを読んで、大谷選手の運についての考えが納得できた。

 

中村天風氏によると、運命の「運」は2種類ある。天命という「絶対的な運」と宿命という「相対的な運」の二つである。天命という絶対的「運」は変えることができないので、これは素直に受け入れるしかない。しかし、宿命という相対的「運」は変えることができるということだ。大谷選手が目標達成シートに掲げた「運」は変えることができる宿命という相対的「運」である。さらに、この書には良き運命に出会うためには、心を正しくして、習慣として、感謝と喜びで人生を考えるよう習慣づけようとあった。
つまり、良い運命の主人公として活きていきたかったら、心を正しくして、常に心の中に感謝と歓喜の心を持ち続けることだと書かれていた。大谷選手が行っていることはまさしくこういうことなのかと納得できた。

なるほどと頭の中で理解することはできても言行一致は凡人にとってはなかなか難しい。それが素直な心で言行一致ができているところが大谷選手の凄さであり、人間的魅力でもある。大谷選手を見習って、私も、良き運に出会うために心を正しくして、さらに心の中に感謝と喜びの気持ちを保ち続けたいと思う。頭の中の理解と行動が言行一致できるように努力したいと思う。