ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

安倍元首相の「台湾有事」を考える

昨年の12月から「台湾有事は日本有事」と安倍元首相が盛んに強調している。安倍元首相が考える台湾有事とは、中国が台湾を武力攻撃することらしい。もし、そのようなことが起こるのであれば、確かに日本もその戦争に巻き込まれる公算が高いから「台湾有事は日本有事」であることは間違いない。

 

台湾有事に伴い、アメリカと中国の間に戦争が勃発した場合、米国は日本に展開している沖縄、佐世保、岩国、厚木、横須賀、横田 座間、三沢など全国の米軍基地から軍隊や艦船、戦闘機を出動させるだろう。それに伴い、日本は中国から敵国と見なされ日本が直接攻撃を受けることになり、戦争に巻き込まれるというよりは戦場そのものになりかねない状態になる。まさに「台湾有事は日本有事」である。

安倍元首相は台湾有事ということを声高に叫んでいるが、台湾有事で日本が戦争に巻き込まれることは絶対あってはならない。だから、なんとしても台湾有事にならないように、全力を上げて取り組む、ということにはならないらしい。

安倍元首相や岸田首相の最近の言動を見ると、「台湾有事が迫ってます。この危機に備えて軍事費を現在の2倍に増額します。また、この非常事態に備えて、日本国憲法を変えます。憲法9条に自衛隊を書き入れます。また非常事態宣言を付け加えます」と岸田首相は言っている。台湾有事を防衛費の増額と憲法改定に利用しているようにしか思えない。

台湾有事の根本問題は台湾の独立問題である。中国は台湾を「一つの中国」という立場から中国固有の領土と考えており、台湾の独立は絶対あり得ないと考えている。台湾が独立宣言をするようなことが有れば、中国は武力攻撃も辞さないと考えられている。中国が台湾を武力統一しようとする場合、最終的には上陸侵攻し、台湾軍を撃破して占領する必要がある。来援する米軍とも戦わなければならない。
このような台湾有事について、2021年3月に米国のデービッドソン・インド太平洋軍司令官(当時)が「中国の脅威は6年ほどで現実のものとなる」と発言したことが発端となり、台湾有事についての議論に火がついた。以来、日本国内ではデービッドソン発言に誘発されたかのように、自衛隊OBも含めた台湾有事論がメディアに登場するようになり、安倍元首相は2021年12月「台湾有事は日本有事」と述べて、軍備増強などして備えるという発言をしている。

 

しかし、2021年3月の米国のデービッドソン・インド太平洋軍司令官(当時)発言については、海軍に予算を引っ張るための意図的な誘導であり、本当にそう信じているのなら海軍大将にふさわしくない軍事知識の持ち主、という批判が米国内でも出ているし、また、2021年6月17日、米軍トップのミリー統合参謀本部議長は上院で「現在、中国は台湾への侵攻能力を備えていない。また備えるには長い時間がかかり、その意図もない」と述べ、デービッドソン発言を否定している。軍事専門家からするとそれが現実であるという意見が多い。

さらに、台湾有事の問題について、日本は法律的に大きな制約がある。日本は台湾を応援するとか支援するとか言っても条約的に助けることができない。なぜなら、1972年9月29日、日本政府は当時の田中首相中華人民共和国との間に締結した日中共同声明に調印しているからである。その日中共同声明において
○  日本国政府は、中華人民共和国政府(共産党政権)が中国の唯一の合法政府であることを承認する。「一つの中国」
○  中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。
○  中華人民共和国政府は、中日両国国民の友好のために、日本国に対する戦争賠償の請求を放棄することを宣言する。などが書かれている。

日中共同声明からすると、台湾有事は中華人民共和国の内政問題であり、台湾有事という内戦が勃発した場合に、中華人民共和国を助けにいくことはできても反乱軍に当たる台湾政府を支援することは条約上できないことになっており、それに反すると日本国憲法違反となるおそれがある。

なかなか難しい台湾有事問題であるが、軍事ジャーナリストの田岡俊治さんの次の発言を聞いて納得した。「日本が台湾有事の戦争に巻き込まれないようにするために、やるべきことは決まっています。台湾の世論調査では、台湾として独立したい人は全人口の約5%、中国と統一したいという人は約1%でした。そして87%の多くの台湾人は現状維持という結果でした。87%の現状維持という人は中国とつかず離れずという関係でいきたいという人であり、台湾として必ず独立したいと思う台湾人は決して多くはないのです。その中で、台湾に対して、日本国は、日中共同声明に調印しているので台湾独立は認められないということを伝えて、中国には台湾独立は日本も認めないので冷静に対応するように提言していくしか道はないという話であった。確かに日本が戦争に巻き込まれないように積極的に平和外交を進めるべきだと思った。それにしても、安倍元首相や自民党政権の中国敵視政策や防衛費増強で台湾有事に備える論法はますます危険につながる気がして怖いばかりである。