ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

「寺島実郎の世界を知る力15」を見る

昨年の12月にネット配信された「寺島実郎の世界を知る力15」という番組を見た。案内に「2022年への展望ー欧州からの視界と21世紀の日本経済と産業の進路を語る」とあった。興味を感じ番組を見た。

番組の冒頭、寺島氏はロンドンエコノミストが発行する雑誌「ワールド・アヘッド2022」について語っていた。この雑誌はロンドンエコノミストが世界について取材し、新年展望としてまとめた雑誌である。この雑誌は歴史のある雑誌で毎年発行されているようだ。
寺島氏が、この雑誌を毎年注目してチェックする理由は二つある。一つはこの雑誌が欧州からの視点で世界を見ているという理由からである。寺島氏は、日本はアメリカを通じてしか世界を見ないあるいは見れないという情報環境の中に埋没している。つまり日本の情報は視界が狭い。アメリカの視点は世界の中の一つの見方でしかない。世界を多面的に見る必要がある。日本の情報環境の限界を一歩踏み出すためにロンドンエコノミストの情報はとても重要であると語っている。
もう一つは論点の集約である。ロンドンエコノミストはインテリジェンスユニットという編集長会議で一年を展望して集約として今年のキーワードを毎年提示している。このキーワードが毎年、その年を的確に暗示していることが多い。だから世界はそのキーワードに毎年関心を持ち注目しているようだ。

2022年のキーワードは「新しい現実との調整」という言葉が掲げられている。寺島氏の解説によると、この中身は副題として「パンデミック(感染爆発)からエンデミック(貧者の風土病)」と「民主主義対専制」という言葉で表されており「ポスト・コロナと中国の台頭にどう向き合うか」ということを意味しているらしい。

中国の台頭については副題として「民主主義と専制」という言葉が使われている。今、世界は民主主義陣営対中国、ロシアに代表される専制主義陣営との力学の中にあり、2022年はその調整が一つの世界のテーマになるということのようだ。この「民主主義対専制主義」について寺島氏は次のように述べていた。日本人は、日本は民主主義国家であり、日本は、もちろん民主主義陣営の一員と日本人全員が思いがちだが、この機会に民主主義とは何かを考える必要がある。「与えられた民主主義」という言葉がある。日本は民主主義を獲得するために血まみれになって戦った歴史がない。ある日突然民主主義を与えられた。敗戦をきっかけに民主主義国家になったということになっている。この機会に、私たち日本人は、民主主義に対して愛着や敬意や大切にする心が本当にあるのか問い直すことが重要と語っていた。つまり、日本は、民主主義というのではではなく、国家や政府がなんとかしてくれるのではないかと国家に期待する国家依存主義が日本の空気を作っていると寺島氏は語っていた。

番組の中で、1860年の万延元年遣米使節団に随行した勝海舟の思い出話が紹介されていた。米国滞在中、勝海舟アメリカの役人に「初代大統領ジョージ・ワシントンの子孫は今何をしておられますか?」と尋ねたところ、だれも子孫のことは知らないと答えた。勝は、日本の身分制度と違う社会制度があることを知って驚嘆したと記している。当時の日本は士農工商身分制度の下に成り立っていた。武士に生まれたら子々孫々武士という世襲制度による社会体制であった。それが当たり前と思っていた勝海舟にとってアメリカの民主主義はとても新鮮で驚きであったようだ。


寺島氏の話を聞きながら、世界標準からすると日本は民主主義国家とは言えないのではないかという感じを持った。日本人は民主主義を基盤として、民主主義に対して確固たる信念を持って行動しているのか疑問に思うことがある。政治家の子供に生まれたら政治家になるという世襲制度が日本では当たり前のようになってきている。民主主義の観点からすると不公平な制度ということで断固抗議して、制度を正すべきなのに日本人は怒らない。それはお上に対して恐れおおいという国家依存主義が根底にあるため、民主主義という立場からすると当然怒るべきことも怒らないのだと思うことも多い。日本は民主主義国家とは程遠いのではと思う。そこから日本人は目覚めていく必要性があると感じた。

 

日本経済の現状

日本はコロナに入る前までは、国内株が上がっているからなんとかうまくやっているという感じを持っている人も多いが、今、真剣に現実を直視する必要があると言って、2000年から20年間の日本経済の変化の実態を説明していた
マクロ経済指標
日本の国内総生産であるGDPが世界に占める比重は、2000年の14%から2020年は6%に低下した。最大は1994年の18%からすると三分の一に縮小している。日本の経済力が世界においては最盛期の三分の一になっているということである。20年前に比べると、粗鋼生産21.9%ダウン、エチレン生産22.0%ダウン、国内自動車生産20.4%ダウン、国内自動車販売22.9%ダウン、一次エネルギー供給21%ダウンし基幹産業の産業力低下が顕著になっている。20年間で産業力が約2割減少している。安倍政権以来、統計を改竄しながら日本は豊かになっている、株価は上昇しているなどと言われ続けてきたが、間違いなく日本は斜陽化しているのが現実であるという話であった。

 

今真剣に取り組むべきことは10年後20年後、我々の子孫が食べていける産業創生と経済基盤つくりに取り組むことが重要であるとして、寺島氏は豊かさだけでなく国民の安全と安定のための産業創生を目指すべきとして次のように提言をしている。未来を支える基幹産業として、1  食料自給率37%から70%をベースとした「食と農の分野」、 2  コロナワクチンの開発を始め国民医療充実における「医療・防災分野」、3  教育における人材育成と文化に光を当てて文化による成長を目指す「教育・文化の分野」の産業創生を提示していた。「食と農の分野」「医療・防災分野」「教育・文化の分野」この三つの分野で日本がまた世界をリードする日が来るのを期待したい。