ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

「ジェロントロジー宣言」を読む

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寺島実郎氏の著書「ジェロントロジー宣言」を読んだ。冒頭、寺島氏はジェロントロジーの意味について、ジェロントロジー(Gerontology)とは辞書を引くと「老年学」(老化・老人問題などの研究をする学問)と訳されていることも多いが、「高齢化社会工学」と訳すべきと述べていた。つまり、ジェロントロジーを老年学の視点で見ると、高齢者が今後ますます増えて、社会的コストの負担をどうするかといったたぐいの議論に集中しがちになる。しかし、私たちは異次元の高齢化社会を迎えるいま、今までとは違う社会の創造を行う必要に迫られている。社会構造の変化を視野に入れて大きな構想力と枠組みでもって高齢化社会を議論しなければならない。年金や福祉などの経済的な安定の問題から、医療や介護などの身体の健康に関する問題、認知症や不安といった心の健康に関する問題、さらに高齢者の社会参加プラットフォーム形成まで、人間社会総体に及ぶ議論を本格的に始める必要があり、むしろ「高齢化社会工学」と理解すべきと述べていた。

寺島氏は具体的数字を上げて現在の状況を説明していた。
総務省の統計によると2018年6月1日現在の日本の総人口は1億2652万人である。日本の人口がピークだったのは2008年の1億2809万人であったが、その後、減少に転じて10年間で約160万人が減少している。
問題はその内訳である。総人口1億2652万人のうち高齢者と呼ばれる65歳以上は3545万人、80歳以上は1102万人にのぼる。65歳以上がすでに全体の28.0%に上ることにも驚くが、80歳以上が1000万人の大台を2015年に突破し、その後も増え続けていることにさらに大きな衝撃を覚える。

ちなみに世界保健機関 (WHO)の定義では、65歳以上を高齢者と呼び、全人口に占める65歳以上の高齢者の割合が21%超の社会を「超高齢化社会」と呼ぶ。日本において「超高齢化社会」はすでに現実のものとなっているのである。現在、100歳以上の人口は7万人にのぼる。以前であれば、100歳以上の高齢者はごく稀で、家族だけでなく自治体をあげて長寿を祝ったものである。100歳以上をどう生きるかといったことも普通に考えるべき時代になっている。

国立社会保障・人口問題研究所の日本の将来推計人口の予測を見ると、2030年には総人口は1億1913万人(ピーク比で約900万人減少)となり、その時65歳以上は3716万人、80歳以上は1569万人、100歳以上は19万人と予測される。少子高齢化は、その後もさらに加速し2050年には日本の人口は1億人に迫り、その時100歳人口は53万人、80歳人口は1607万人、65歳以上人口は3841万人(総人口の37.7%)という状況を迎えると予測されている

日本の人口が一億人を超えたのは1966年のことである。その後、人口は1億人からさらに増大し続け、2008年に1億2809万人というピークに達した。そして、減少に転じて日本の総人口は2053年前後に一億人を割ると予測されている。総人口を単純に数字だけで考えると42年間かけて一億人が1億2809万人になり、また45年かけて一億人に戻るということになる。しかし社会構造は大きく異なる。日本の人口が一億人を超えた1966年65歳以上の高齢者は660万人(比率にするとはわずか6.6%)であった。これから一億人を割ると予想される2053年には65歳以上の高齢者は4000万人(比率にすると40%)に達すると予測される。同じ1億人でも意味がまるで違うのである。

急速な少子化と高齢化、これが異次元の高齢化と言われる所以である。異次元の高齢化に合わせて一人ひとりのライフスタイルをどう切り替えていくのか、日本全体の社会システムをいかに改革していくのか、変えていくのか。一人一人の生き方から日本全体の社会構造まで、ものの見方を本当の意味で転換していかなければ、変化に追いついていけなくなっているのである。ジェロントロジーを狭い意味の「老年学」ではなく「高齢化社会工学」として捉え「知の再武装」が必要とされる時代に突入していると述べていた。

団塊の世代である私たちの多くは、企業に就職して、定年まで勤めあげ60歳〜65歳で定年を迎え、退職後の老後は福祉の対象者として年金で生きて行くライフサイクルが想定され、社会システムが構築されてきた。これも、70代まで生きれば充分という時代は過去のものとなり100歳人生が現実になりつつある。100歳人生はこれからの日本人全てに該当する人生である。ジェロントロジーは高齢者だけの問題ではなく全世代に関わる問題である。この本を読み、100歳人生を前にして「知の再武装」の必要性を強く感じた。