ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

「データエコノミー入門」を読む

f:id:battenjiiji:20220204080049j:plain


野口悠紀雄氏の著書「データ・エコノミー入門」を読んだ。
情報通信技術の凄まじい発達によって世界はどのように変わったいくのだろうかという疑問をいつも感じている。そういう中、「マネーという最強のデータをめぐる争奪戦」というこの本のタイトルを目にして読みたくなった。読んで驚いた。今まさに、マネーという最強のデータの争奪戦が、世界中の国家・企業・銀行間で始まっている。そしてその勝者が未来の世界を支配するというものであった。

著書の内容を引用する
データを制するものが世界を制する
いま世界では、「データ資本主義」と呼ぶべき活動が急加速している。Google社1社の2021年6月の時価総額は約189兆円になる。これは東証一部上場企業の時価総額の合計約717兆円の26.4%になる。もう一つの大手 IT 企業 Facebook時価総額は、約110兆円である。GoogleFacebook 2社で約300兆円になる。これは東証一部上場企業(2190社)の時価総額の合計の約41.8%にあたる。このようにGoogleFacebookは日本の企業とは比較にならない巨大企業である。
GoogleFacebook は検索、メール、SNSなどのサービスを提供している企業である。このため「プラットフォーム企業」とも呼ばれる。いずれも、20年前にはこれほど大きな企業ではなかった。急成長したのは、新しいビジネスモデルを開発したからだ。SNS や検索などの利用によって、様々な個人情報がこれのサービスを提供するプラットフォーム企業に集まる。こうしたデータを、「ビッグデータ」という。それが、新しい情報産業の目覚ましい成長の源泉になっている。つまり、GoogleFacebook の驚くべき価値を生み出しているのは、工場や機械などの物理的な資産でなく、ビッグデータなのである。ビッグデータは一つ一つ取ってみればあまり価値がないデータだ。しかし、こうしたデータが莫大な量、蓄積されれば正確な広告(ターゲティング広告)を行うことができるなど、無から有を生み出すことが可能になるのだ。ビッグデータの利用価値は今後さらに高まるだろうと言われている。

ビッグデータは、誰でも入手して使えるものではない。少数の企業がビッグデータを独占し、権力と富を独占している。それだけでなく、技術開発も独占している。プラットフォーム企業の活動の特徴は工場もないし店舗もないことだ。さらに、「工場も店舗もない。しかし、極めて高収益」という企業はこの2社だけではない。AmazonAppleMicrosoft もそうだ。GoogleFacebookAmazonAppleMicrosoft を合わせた企業群は「GAFA+M」と呼ばれている。この企業群が、今アメリカ経済を牽引している。「GAFA+M 」5社の時価総額は2021年4月2日時点で832兆円になる。東証一部上場企業の時価総額717兆円をかなり超えている。

中国の巨大 IT 企業も同じような状況である。中国の IT 産業を牽引しているのはBaidu(百度)、Alibaba(阿里巴巴集団)、Tencent(騰訊)である。これら3社の頭文字を取って「BAT」と呼ばれる。Baiduは検索と AI 技術、AlibabaはE・コマース、TencentはSNS のサービスをそれぞれ提供している。
これらの企業は、ビッグデータを基礎としたビジネモデルを築き上げ目覚ましい成長を遂げているのだ。これまでの世界をコントロールしてきたのは資金力あるいは権力だった。いまそれは、資金力でも権力でもなくデータなのである。これは「データキャピタリズム」(データ資本主義)と呼ぶことができる。データさえあれば、工場や販売店などの施設は持たなくとも、巨額の収益を得ることが可能になった。例えるなら、金が発見されたようなものだ。いま起きていることは、「21世紀のゴールドラッシュ」なのだと書かれていた。そのゴールドラッシュの先頭を走っているのはアメリカと中国である。日本はビッグデータの活用に、もはや追いつけないほど立ち遅れてしまっているようだ。

マネーを制するものがデータを制する。
さらに、電子マネーの登場によって、これまで利用できなかったマネーのデータを利用できるようになった。これまでのビッグデータとして利用されてきたのは、主として検索やSNSやマップから得られるデータであった。しかし、マネーは、決済手段としてだけでなく、ビッグデータを収集する手段としても重要であることがわかってきた。マネーのデータはSNSのデータと違って詳細で正確である。まず、マネーはあらゆる経済取引の裏側にある。誰もが、日常生活の様々な場面で、毎日何度も支払いを行っている。だから、マネーのデータは、ほとんどすべての個人や企業について存在する。しかも数値的に処理できる正確なデータだ。従って、マネーについての大量のデータが利用できれば、それを用いて、SNS などで得られるデータより、はるかに詳しい情報処理ができる。このマネーのデータの争奪戦は、デジタルドル、デジタル人民元の発行の計画に繋がっている。自国のデジタル通貨が世界を席捲できればそこから莫大な情報を入手でき、そこからさらに新しいゴールドラッシュを描くことができるからである。ビッグデータの活用に立ち遅れた日本は、マネーデータを活用することによって日本再生の手がかりをつかむことを期待したいとあった。

私は地方都市に住み、日常生活においてはSuicaも使わないので基本的に現金主義である。しかし、これから地球規模で間違いなくキャッシュレスの時代に向かうのだろう。その時、日本が再び国際的に存在感を示すことができるようになることを期待したい。