ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

「日本はなぜ、『基地』と『原発』を止められないのか」を読む その3

この著書を読みながら、日本は、真の独立国になれるのだろうかという不安ばかり感じるが、この著書には同じ問題を抱えていたドイツの取り組みについて書かれていた。ドイツの取り組みは大変参考になり、勇気をもらえるものであった。

著書を要約する。
「差別条約である敵国条項が適用される国は日本、ドイツ、イタリア、ブルガリアハンガリールーマニアフィンランドの7ヵ国を意味するというのが定説である。しかしそのうち、日本とドイツ以外の他の5ヵ国は、全て大戦中に枢軸国から離脱し日本とドイツに対して宣戦布告を行った国々である。そうした意味で真の敵国条項の対象国は、当初から日本とドイツの2ヵ国だけだったと言える。

もっとも信頼できる国連憲章の解説書である“コマンテール国際連合憲章逐条解説”によると、敵国条項について、『敵国だった過去を消すことはできないので、敵国条項は変わらず効力が存続する』と書かれている。しかし、別の箇所に『西ドイツが行った東方政策の諸条約は、1970年代以降、西ドイツと東側の隣国との関係において、敵国条項107条及び53条を無効にした』と書かれている。つまり、1970年代までに西ドイツが行った東方外交政策の結果、ドイツに関しては、敵国条項は事実上、死文化していると書かれている。ところが、日本についての記述はどこにもない。つまりこの本においては、日本に対する敵国条項の効力は依然として存続しているということを教えてくれている。

ドイツは敗戦後、東方政策という外交方針のもとに、広大な領土をポーランドやフランスに割譲することを認め、国家としての『謝罪外交』を真摯に展開し、必死になって『過去の克服』を行うことで『新しいヨーロッパ』の中心国としての地位を固めてきた。その輝かしい成果が現在のヨーロッパ連合(EU)であり、ドイツはその中心にしっかり腰を下ろして、他のヨーロッパ27カ国と共に、強固な地域共同体を形成している。現在のドイツをアメリカの属国とか国連憲章に置ける敵国だという人はどこにもいない。そして、1990年に結んだ『2プラス4条約』に基づき 米英仏ソの駐留軍は全て1994年までにドイツから完全撤退した。こうして日本と同じく第二次大戦の敗戦国であり、国際法上の『敵国』だったドイツは、長く苦しい、しかし戦略的な外交努力の末、戦後49年目にして、ついに本当の意味での独立を回復することができた。

しかし、日本はドイツのように、周辺諸国に真摯に謝罪し、『過去の克服』を行うのではなく、戦後間もなく成立した冷戦構造のなか、米軍基地の提供と引き換えに、外交と安全保障を全てアメリカにまかせっきりにして、国際社会への復帰を果たした。そして過去に侵略を行った韓国や中国などの周辺諸国に対しては、贖罪意識よりも、経済先進国としての優越感を全面に押し出すようになり、戦後70年のあいだ、本当の意味での信頼関係を築くことが、ついにできなかった。その結果、日本は世界でただ一国だけ、国連における『敵国』という国際法上最下層の地位に今なお留まっているのである。日本全国に駐留し、国内法を無視して都市の上空を飛び回る在日米軍の存在がその証である。いまだに軍事占領が続く沖縄と、横田、厚木、座間、横須賀など、首都圏を完全に制圧する形で存在する米軍基地、そして強大な横田空域がその証である。そんな国は世界中探しても、日本以外、どこにも存在しない。

アメリカに従属していれば、その保護のもとで、『世界第3位の経済大国』という夢を見ることができる。しかし、ひとたびアメリカから離れて自立しようとすれば、世界で一番下の法的ポジションから、周辺国に頭を下げてやり直さなければならない。それはまさに戦後の西ドイツが歩んで来た道そのものである。いまさらそんな大変なことをやりたくないし、そもそもどうやっていいかわからないと言いながら、ただただ米軍の駐留継続を自ら希望しているのが現在の日本政府である」と書かれている。

この著書において、参考になる国はドイツだけではなく、フィリピンの取り組みも大変参考になった。フィリピンは世界有数のアメリカ軍基地を自国に駐留させる国であった。アメリカ軍の基地使用に関しては力関係から不平等条約であったことから、さまざまな問題が起こっていた。アメリカ兵がフィリピン女性をレイプしても犯人はアメリカに帰国し、無罪になることは当たり前みたいに起こっていて、そのような問題から国民の基地反対運動が起こった。反対闘争の中では「米軍撤退後はフィリピンの終わりが訪れるのではないか」という人までいたが、それでも米軍基地を撤退させるという国の主張を貫き、アメリカ軍基地の撤退に成功した。そして新たに米国と条約を締結して現在に至っている。

ドイツやフィリピンの国々が取り組んできたことは、独立国としては、どんなに困難であっても避けて通れない課題であった。そうしなければこの地球社会では、植民地国として軽蔑されるだけで、国家として敬意を表される位置にはたどり着けない。
30年前、第5代西ドイツ首相であるヘルムート・シュミット氏は日本の外交問題に意見を求められるたびに「日本は周囲に友人がいない。東アジアに仲のいい国がいない。それが問題です」と助言していたと書かれていた。確かに、身近なアジアの国々に信頼されない限り、日本の真の独立国としての道はないと思う。現政権にはとても期待できないが、若いによって、そのような真の独立国・日本が近い将来誕生するのを期待したい。