ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

NHKスペシャル「夢見た国で〜技能実習生が見たニッポン〜」を見た

NHK テレビより

「私はティエンです。ベトナムから来た技能実習生です。日本は文明国・先進国で法律もちゃんとしている。日本に行ける日が待ち遠しくてワクワクしています」と来日する前に日本への憧れを話していたティエンさんであった。
そのティエンさんがネット上にSOSを発していた。「こんばんわ、今もんだいあります。」「会社こわいです」「わたしたちかいしゃかわりたい」

ティエンさんが働いていた会社は縫製工場であった。そして、その現実はベトナムで想像していたものとは全く違うものであった。ベトナム人技能実習生ティエンさんは言う。「私たちの生活は刑務所の中みたいです。すごく失望していて悲しいです。家畜扱いされて一日中怒られています。仕事と勉強をしたくて日本に来たのに。」
日本で、最低賃金以下で長時間労働にさらされる技能実習生たち。技能を学ぶはずがその目的も果たせない人も大勢いる。2020年、さらに新型コロナウイルス感染が拡大、技能実習生を取り巻く環境はさらに過酷さを増していった。バス停で野宿するベトナム女性の技能実習生がいた。「仕事をやめささられて行くところがない。みんな私を怖がっていましたが、私も怖かった。」という。コロナ解雇などで帰国できず、行き場を失う技能実習生が急増している。「2ヶ月分の給料をもらえていない。もう犯罪に走るしかないぐらい追い詰められている」と話す技能実習生もいる。困窮する技能実習生から金銭を絞るとる闇のビジネスも水面化で拡大している。実習生たちはせっぱ詰まって個人情報を売ってでも金を借りて行く。「実習生はいい金づるになり、裏社会は実習生でかなり儲かっている」と裏社会を知る人はいう。
30年にわたり、拡大の一途を辿ってきた技能実習制度、その裏側で一体何が起きてきたのか、技能実習生制度の実態に迫るという番組であった。

番組は、2019年のベトナムの空港風景から始まる。今から日本に技能実習生として出発する希望に膨らんだ明るい笑顔のベトナムの若者でごった返していた。「愛知に行きます。」「頑張ります。」「私は日本で鋳造を学びます。」「私は惣菜加工を勉強します。」片言の日本語を使って明るい声でインタビューに応えている。
2019年技能実習生の数は41万人になった。その半数はベトナム人である。実習生の多くが貧しい農村部の出身者でベトナムの送り出し機関に平均80万円の高額な手数料を支払ってこの技能実習制度に参加している。日本は人権意識や労働環境が素晴らしい。日本という先進国で技能実習生として技能を学べてしかも給料も得ることができるというこれほど素晴らしい制度はないということで、多くの若者が年収の2倍以上のお金を準備して参加している。

実習生が夢見る日本、しかし、その現実は全く違うものであった。会社の目を盗んで現れた実習生たち。SOSを出した実習生のティエンさんもそうであった。
「勤務時間が長く、ノルマが多くて怒られるうえに正しい給料をもらえていません。毎日我慢して働いて借金を返すためだと自分に言い聞かせています。すごく悲しいです。私は日本で洋服の縫製技術を学ぶと説明された。しかし、実際は全く違いました。日本に来てタオルしか作ったことがない。。誰かに何を作っているのかと聞かれたら必ず婦人服や子供服を作っていると答えるようにと監理団体の人にいわれている」

技能実習制度においては、 実習生が何を学ぶかはあらかじめ契約で決められている。技能実習制度には不正が行われていないかをチェックする仕組みがある。その役割を担うのが国の許可を受けた監理団体である。監理団体は企業に実習生を紹介するとともに、実習生の監理を行い、企業から毎月監理費を受け取る仕組みになっている。その監理団体は、実習が計画通り行われているか、不法な労働を強いていないかを監督することになっているが、その役割は果たされていない。

なぜ、監理団体が機能しないかについて、神戸大学の斉藤教授は、監理団体からすると企業はビジネスパートナーでありお客さんであるから強く指導できないという面がある。さらに、そもそも技能実習制度は国際貢献を建前にする国策であるが、実際は民間に丸投げされて動いているシステムである。

外国人技能実習制度は、1960年代後半頃から海外の現地法人などの社員教育として行われていた研修制度が評価され、これを原型として1993年に制度化されたものである。技能実習制度の目的は、我が国で培われた技能等の開発途上国への移転を図り、当該開発途上国の経済発展を担う「人づくり」に寄与する国際協力の推進と謳われている。また、技能実習法には、「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」(法第3条第2項)と記されている。
しかし、現実には、企業側にとっては外国人技能実習制度は「安価な労働力の供給システム」であり、実習生にとっては「出稼ぎ」が実態とみられ、建前と本音が乖離していることが繰り返し指摘され、早くから国内外から様々な問題点が指摘されてきた。


技能実習制度は国際社会から度重なる批判受けてきた。国連自由権規約委員会勧告(2008年)、国連女性差別撤廃委員会総括所見(2009年)、国連女性と子どもの人身売買特別報告者勧告(2010年)、移住者の人権に関する国連の特別報告者勧告(2011年)、国連自由権規約委員会総括所見・勧告(2014年)などで批判されてきたと同時に米国務省の人身売買年次報告書で2007年以降、継続して批判されてきた。最近では2021年7月、アメリ国務省は世界各国の人身売買に関する報告書(2021人身売買報告書)を発表し、日本に対する報告書では「外国人技能実習制度」を取り上げて、同制度は人身売買にあたると指摘し、改善を要求している。

時給300円の安価な労働力、年間数日の休日など過酷な労働環境、労働災害の多発、技能実習生の高い死亡率など指導監督した企業の70%以上で法令違反があったという。技能実習制度は国際社会から人身売買、奴隷労働と呼ばれ、改善を求められている悪名高い制度である。国内外から問題点を指摘され続けている技能実習制度が改まらないのは、技能実習制度がなくなれば労働力不足で多くの企業が成り立たなくなるという現実があるという。だからといって他国の人々を犠牲にしていい理由にはならない。

国際貢献という言葉で外国の若者を希望とともに招き、失望と怒りを植え付けて送り返すこの技能実習制度は早急に改善すべきである。外国から奴隷労働と呼ばれている技能実習制度を早急に改善しないと、日本は世界から1番嫌われる国になるだろう。