ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

「私が原発を止めた理由」の講演を聞いた

福井地裁の元裁判長で原発差し止めを命じる判決を出した樋口英明さん(69)の講演会「私が原発を止めた理由」を見た。樋口さんは、福井地裁判事として2014年5月に関西電力大飯原発3、4号機(福井県)の運転差し止めを命じた方である。定年退官後は各地で講演し、原発の危険性を訴えている。自身が書いた当時の判決に「今もまったく迷いはなく、正しかったと思っています」と樋口さんは語っていた。

 
樋口氏は、原発の運転差し止めを命じたことから進歩的な裁判官と言われることがあるが、そのことについて「私は元々進歩的な考え方をする裁判官ではなく、どちらかというと保守的な考え方をする裁判官です。それなのになぜ、このような判断をしたのかというと、訴訟を通じて、日本の原発というのが極めて危険であるということがはっきりわかったからです。はっきり分かったことを元に判決を書いたらこういう結果になったということです。私が原発運転差し止めを命じたことで、反原発派からは権力に忖度しない信念の裁判官と言われたり、逆に原発推進派からは、変わり者の裁判官と言われたりしています。裁判官は一般的に忖度するとかしないとかは関係ありません。私は訴訟の中で出てきた事実に基づいて判断しただけです」と語っていた。

樋口裁判長が原発差し止めを命じた判決の理由(樋口理論)は以下の通りである
原発の過酷事故は極めて甚大な被害をもたらす
② それ故に、原発には高度の安全性(事故発生確率が低いこと)が求められる
地震大国日本において原発に高度の安全性があるということは高度の耐震性があるということに他ならない
④ しかし、わが国の原発の耐震性は低く、それを正当化できる科学的根拠もない
  従って原発の運転は許されない
これが樋口理論と言われている原発差し止め理由で、単純明快である。

講演の中で樋口さんは語っている。
福島原発事故は15万人が避難するという大規模事故になりましたが、これはさまざまな奇跡が起こって、むしろこれくらいの事故で済んだということを訴訟の中で知りました。当時、福島原発の責任者であった吉田所長は福島二号機が大規模爆発を起こすと現場にいる者は即死するのはもちろん東日本壊滅を意味するといいい、それはチェルノブイリの10倍の被害をもたらすと言っていました。また、原子力規制委員会近藤駿介委員長は菅首相から福島原発の爆発事故で最大どの程度の避難が必要かと問われ、福島原発から半径250km圏内の全て人々の避難が必要と答え、それは東京を含め、4000万人の避難が必要と語っていました。まさに間一髪のところで大規模爆発に至らずことなきを得ましたが、福島原発事故は日本滅亡になってもおかしくない状況であったということを知りました。」

「日本は地震大国です。震度1以上の地震は全国で年間約2000回発生しています。震度4以上は年間約80回発生しています。ガルは地震の強さの単位ですが、2000年以降日本で起こった主な地震は、2008年岩手宮城内陸地震4022ガルでした。2011年東日本大震災2933ガル、2004年新潟県中越地震2515ガルでした。それに伴って、三井ホームが5115ガルの耐震住宅をつくったり、住友林業が3400ガルの耐震住宅を提供するようになっています。原発はそもそも危険なものですから、地震にも耐えられる堅牢な耐震設計によって守られているはずと思っていましたが、大飯原発の耐震設計は405ガルでした。そのような低レベルの耐震設計では安全は確保できないということで差し止めを命じた判決を書きました。その後、大飯原発は耐震設計を見直し強度が800ガルまで上がっていますが、近年日本で発生した地震の規模を考えると800ガルだから安心、大丈夫とはとても言えません。大飯原発に限らず、どこの原発も耐震設計は脆弱です。日本においては原発は危険極まりない状態です」

「裁判官が、自分が下した判決について語ることで法に触れるということはありません。しかし、裁判官は弁明せずという伝統があって、元裁判官の方が判決文について語っているのは私も見たことがありません。私は在職中にいろんな判決文を書いてきましたが、原発裁判以外では語るつもりはありません。しかし、原発裁判については、私が下した判決が高裁において逆転敗訴したことを受けて、原発裁判は、福島原発事故が示したように国が滅亡する危険を内包していることから、看過できないと考えて、判決を書いたものの責任として事実を伝えたいと思い活動を始めました」と話されていた。

話は変わるが、昔、ビートたけしさんが、「原子力発電を批判するような人たちは、すぐに『もし地震が起きて原子炉が壊れたらどうなるんだ』とか言うじゃないですか。ということは、逆に原子力発電所としては、地震が起きても大丈夫なように、他の施設以上に気を使っているのだから、地震が起きたら、本当はここへ逃げるのが一番安全ですよね。(笑)」という発言をしていたことを思い出した。ビートたけしさんの話を聞いて、確かに原発は安全に最大限気を使っている施設だから、原発が一番安全かもしれないと思った人も多かったと思う。しかし、樋口裁判長は「原子炉は地震で壊れないかもしれませんが、そこに接続する配管とか配電設備が地震に耐えれない設計である限り冷却できなくなりメルトダウンという過酷事故を引き起こす危険が大いにありますと語っていた。ビートたけしさんもこんなに地震に弱い施設とは知らんかったのかもしれない。地震大国の日本においては、原発は即事廃止しないといけない。30年以内に巨大地震が起こる可能性は80%以上というニュースを見たことがある。一時的な儲けのために日本国を失うことなどあってはならない。