暑い日が続く中、「茂木四国八十八ヶ所霊場巡り その4」を予定通り行いますという連絡を前日に受けた。当日、定刻までにメンバー5人全員が今日の出発点である唐八景バス停に集合した。唐八景は長崎市内の景勝地として、昔から市民に親しまれている場所である。唐八景バス停前は唐八景公園入り口と同時に市民の森入り口になっている。私たちの八十八ヶ所巡りは市民の森の中から伸びている山道を通っていく。ここからアップダウンを繰り返しながら3キロほど先にある市民の森グランドを目指す。
市民の森の舗装道路を周りの景色を眺めながらおしゃべりしながら歩いていく。今日も暑いが幸いなことに曇りである。日差しを浴びないですむのはラッキーである。
緩やかな上り下りを繰り返しながら目標地点の市民の森グランドに到着。ここで水分補給をしながら休憩をとる。出発前にリーダーから今日の八十八ヶ所巡りについて説明を受ける。現在地の標高は250mでこれから標高2mの低地まで下りていきながら今日の八十八ヶ所巡りをしていきます。途中アップダウンの繰り返しもありますが、基本的に体力的負担が少なくなるように下りコースで計画しています。始める前に注意をします。わたしたちはハイキングを行なっているわけではありません。私たちは八十八ヶ所霊場巡りのお遍路です。お遍路にはお遍路のしきたりがあります。その一つはお遍路の道中、リーダーである先達より前を歩かないこと。順番を決めますのでそれより先に出たり遅れたりしないようにしてください。先達は私が勤めます。殿は〇〇さんが担当してください。道中、気ままにバラバラにならないようにお互い周りに気を配って行動してください。皆さんに質問します。仏教はお釈迦様の教えですが、お釈迦様は何を私たちに教えているのでしょうか。皆さんはどう思いますか?お釈迦様はよく生きよと教えています。悪いことをするな!良いことをせよ!とおっしゃっておられます。しかし、これがなかなか難しいのです。例えば、お釈迦様は殺すなかれと教えています。しかし、私たちの社会は死刑制度をやめることができないのです。お釈迦様の教えを守れない。社会制度ではなく個人的にもなかなか難しい。孫が遊びに来ます。孫が可愛いから小遣いをあげます。良いことしたと思っていたら、これが甘やかしにつながり孫をダメにすることもあります。良いことをしたつもりが悪いことになることもあるのです。今までの自分を振り返ると、良いことをしたつもりが寧ろ半分以上は間違ったことをしてきたと思ってください。それが私たちの本当の姿だと思って間違いないでしょう。お遍路はそう言う間違いの多い自分を見つめる修行の場です。同行二人、お大師様が常に一緒にいてくださることに感謝しながらお遍路を歩いてください。僧侶の資格を持つリーダーの説明を聞いて出発する。
市民の森の中程から脇道に入り下りていく。しばらく進んだら今日の最初の霊場である八十一番霊場の白峰寺のお堂に到着する。ご本尊は千手観世音菩薩である。整列して般若心経を唱和する。お参りした後は合掌して感謝の言葉を心の中で唱えて下がる。
八十一番霊場を参拝した後は平地までドンドン下って行く。その坂はあまりにも急すぎて勢いがついたら止まれないほどである。ゆっくり下りていく。コース案内役を務めるOさんはコース確認のため事前に八十一番霊場に足を運んだそうだ。しかも下から上りコースで歩いたということだったので驚きである。私が上りコースで挑んだら、間違いなく途中でリタイヤしたと思う。山奥の小さなお堂に迷わず行けるのは、毎回、コース案内役のOさんの予行演習のお陰である。Oさんの献身的な取組に感謝である。
次は、第五十番霊場である繁多寺へ行く。ご本尊は薬師如来である。御真言は「おん ころころ せんだり まとうぎ そわか」である。御真言というのはサンスクリット語の音訳で唱える仏の功徳のあるといわれる呪文である。
次に六十六番霊場である雲辺寺に行く。六十六番霊場のご本尊は千手観世音菩薩である。六十六十六番霊場のお堂は人家の庭の中に建てられてあった。人家の庭だから、入る前に玄関で家の方にお参りさせて下さいと承諾を得て庭に入っていく。整列して般若心経を唱和する。
次に三番霊場、六十五番霊場、十五番霊場の三つを訪ねる。この3つの霊場はすぐ近くに御堂が建てられていて、続けてお参りしていく。
そして今日最後になる第四十番霊場である観自在寺へ行く。今まで三つの霊場は固まっていたが第四十番霊場は2.2km先になる。しかも上りが続く。疲れも蓄積してきているのがわかるくらい足が重い。途中、冷たい山水が湧き出ている場所では顔を洗い、タオルを冷たい水に浸してそのタオルを首に巻くと生き返る思いがした。そうこうしながらやっとの思いで四十番霊場に到着する。ご本尊は薬師如来である。整列して般若心経を唱和する。
今日の予定を完了したところでリーダーからお話があった。「お疲れ様でした。今日も無事にお遍路を続けることができました。次回は一月後になりますが、それまでに私からお願いがあります。般若心経をもっと速くスムーズに読めるようにしてもらいたい、間違えないで読めるようにしてもらいたいと思います。そのため、1日100回読経をしてください。速く間違えないで読めるようになって次回は来てください」リーダーのお話にただうなづくだけであった。