ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

「デジタル・ファシズム」を読む その1

堤 未果さんの著書「デジタル・ファシズム」を手に取った時に、サブタイトルの「日本の資産と主権が消える」という文字が目に入った。2021年9月にデジタル庁が発足した。デジタル庁は、日本のデジタル化を促進するためのさまざまな政策に取り組む組織である。日本はデジタル後進国といわれていて、その遅れを取り戻すべくデジタル庁を発足させて懸命に取り組んでいるところなのにどういうことだろうと疑問に感じ読むことにした。堤 未果さんの豊富な知識にはいつも感嘆するが、今回も驚きの事実を見せられて唖然とする思いであった。

堤さんは著書の中でデジタル庁について、「最高権力と利権の館、デジタル庁」という見出しで第一章に挙げていた。堤さんは、デジタル庁は三つの大きな特徴を持っていると語っている。
「一つは権限がとてつもなく大きいことである。通常は閣議決定を通さないと出せない他の省庁への勧告も、直接出せる権限がデジタル担当大臣には与えられている。二つ目は巨額の予算がつくことである。デジタル庁の年間予算は8000億円であるが、初年度はさらに1兆円が追加された。三つ目は、民間企業とデジタル庁の間の『回転ドア』である。デジタル庁が予定している職員は600人うち200人の管理者・技術者を民間企業から迎え入れるという。世界は米中を筆頭に IT 人材の争奪戦が起きている。平井大臣は、鍵を握るのは『回転ドア』だという 。IT人材不足が著しいここ日本で、公務員レベルの給料で良い人材を集めようとしても限界がある。ならば回転ドアをくぐるように、民間企業と政府の間を自由に出入りする形にすれば、今の仕事を辞めずに柔軟に働いてもらえるだろうと言っているが、本当にそうだろうか?

グローバル企業と政府の間を、利害関係者が頻繁に行き来するアメリカでは、『回転ドア』は利益相反と同義語である。企業から出向してくる人間たちは政策決定の場に入り、自社に都合のよい政策を誘導した後、再びドアをくぐって会社に戻り、出世の階段を上ってゆく。政府の内部事情が分かるので、インサイダー的な情報漏洩も危ぶまれるポジションである。
企業側に有利なこの仕組みによってアメリカでは、軍需産業に製薬業界、食品、農業、エネルギー、金融業界に教育ビジネスと、巨額の税金が企業に流れ続けている。間違いなく一部の企業が利益をえるシステムである。

『デジタル改革推進に向けた機運を一緒に形作ってゆく想い・覚悟のある人材募集』という熱い言葉と共に、デジタル庁はハイレベルな実務経験を必須条件に人材募集をかけている。だが政府の本気度が現れるのは、言葉よりもそこにかける予算額である。募集条件を見ると、週2〜3回勤務、勤務時間は90時間以内、賞与ゼロ、昇給なしの非常勤、各種社会保険なしという、大臣の言う『想いと覚悟』など瞬時に吹っ飛ぶような非正規待遇になっている。この条件で集まれるのは大手IT企業から出向で送り出される社員だけだろう。不十分な待遇の政府と、十分な給与をくれる自社と、非常勤職員は一体どちらの利益のために働くだろうか?私たちが、今まで嫌と言うほど見せられてきた、税金を私物化する「官民癒着の構造」は変わっていない。まさに今世紀最大級の巨大権力と利権の館、それがデジタル庁である」と書かれていた。

さらに、2020年10月から運用が始まった中央省庁向け政府共通プラットフォームのメンバーとして選ばれたのは米IT大手のアマゾンウェブサービスである。安全保障にかかわる政府システムを、他国の民間企業に任せるケースは世界でも珍しい。なぜなら、デジタル化する際、マイナンバーに統合される私たち日本国民の戸籍、年金、税金、健康保険などの個人情報や、防衛、外交などの国家機密情報を扱う政府にとっての最優先事項はまずセキュリティだからである。アマゾンは、CIA (米国中央情報局)や NSA (米国国家安全保障局)など米国の情報機関との関係が深い企業である。同社は CIA と660億円の契約を結び、2020年にはキース・アレクサンダー元NSA局長を取締役に迎えている企業である。日米は2020年1月に、「日米デジタル貿易協定」を締結している。この協定によって、〈デジタル製品への関税禁止〉、〈個人情報などのデータは国境を越えて移動させてもOK〉、〈コンピューター関連設備を自国内に設置する要求の禁止〉、〈ソースコードアルゴリズムなどの開示要求の禁止〉、〈SNS のサービス提供者が損害賠償責任から免除される〉などが盛り込まれている。つまりデジタルを通して私たち日本人の資産をアメリカのグローバル企業に際限なく売り渡す協定が既に結ばれているのである。データは宝の山である。そのデータについてアメリカは2018年に成立したクラウド法によって、アメリカ政府は米国内に本拠地を持つ企業に対し、国内外に保存するデータを令状なしで開示要求できるようになっている。つまり、アメリカはアマゾンを通じて自由に日本のデーターをいつでも入手可能ということである。

デジタル化が必要、世界の流れに遅れるなという掛け声で国民の応援を受けながらデジタル庁はスタートした。しかし、やっていることは国民のためにならないことばかりで驚いた。自民党一強体制がファシズム政治を可能にしている。「デジタル・ファシズム」というタイトルはデジタル独裁政治という意味なのかもしれない。この独裁政治を終わらせないといつまでも、今だけ金だけ自分だけの政治が続く。