ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

「デジタル・ファシズム」を読む その2

デジタル・ファシズムを読み進んでいくと、「本当は怖いスマホ決済」というタイトルでキャッシュレスについて書かれていた。

日本でもキャッシュレス化が進みつつあるが、日本のキャッシュレス決済比率は約30%にとどまっているようだ。ちなみに世界各国のキャッシュレス決済比率のトップは韓国(97.7%)であり、二番手は中国(70%)である。
ただ、キャッシュレス化と一言で言っても、中国はQR決済が主流であり、韓国はクレジットカードが主流となる。また、スウェーデンのようにデビットカードが主流の場合もあり、国や地域によって、それぞれメインとなる決済方法は異なっているようだ。

キャッシュレス化では韓国が世界トップを走っているが、韓国は財政危機を脱するために国民の消費拡大を促進する一環としてクレジットカードによるキャッシュレス計画を推進してきた。その結果、景気はV字回復したが、それと同時に莫大な多重債務者を産むという社会問題が発生している。

韓国に次ぐキャッシュレス社会の中国はQR決済が主流である。
中国は今や都市部を中心にほとんどの経済活動がキャッシュレスで回っている。通勤のシェア自転車からタクシーを呼ぶ配車アプリ、買い物に旅行にホテルにジムに、何をするにもまずはニ大IT 大手であるアリババのアリペイかテンセントの WeChat Payというモバイル決済のどちらかに登録しなければならない。屋台で餃子を買っても、コンビニでタバコを買ってもスマホ決済。レストランの映画館も旅行もホテルも、公共料金の支払いもパスポートの申請も、スマホ画面上の QR コードをかざすだけでサッと会計が済む。

キャッシュレス化によって、ボロボロの汚いお札を使わずに済むし、偽札をつかまされる心配もない。強盗に怯えながら紙幣を入れた財布を持ち歩く必要もなく、従業員がこっそりレジから売上金をくすねる心配もない。中国ではその便利さと引き換えに国民はデジタル社会における資産を差し出している。
「いつ、どこで、何を、いくらで買ったのか。何月何日の何時何分に、どこからどこへ移動したのか。どこに住んで、どんな味を好み、どんな家族構成で、どんなペットがいるのか。一週間に平均で食事にいくらかけるのか。どんな本を読み、どんな薬を服用し、どんな金融商品を買っているのか。子供の成績から交友関係、自身の思想信条に至るまで、ありとあらゆる個人情報」をアリババとテンセントに吸い取られる。
データは分析され、2社にとってさらなる商売の種を生み出してゆく。
この2社は、ますますデジタル化が進む世界の中で、個人情報という宝の山にいち早く目を付け、途方もないビジネスチャンスをものにした。アリペイを提供するアリババは、2014年にニューヨーク証券取引所に上場して、2017年時点で時価総額Amazon を超える世界有数のIT企業に成長した。同社の創業者であるジャック・マー氏と中国共産党習近平国家主席の両者は、吸い上げた個人情報を集積したビッグデータを、これは「現代の産業革命の石油である」と表現している。

キャッシュレスは政府が国内外のお金の流れを正確に把握するための最高のツールになった。
同時に、中国政府は広い国土に住む全国民を効率よく管理するシステムとして「スマートファイナンス」を導入した。アリペイは2015年に、決済情報から取り込んだ個人の買い物データや銀行へのローン返済履歴に、日常的に集められる莫大な個人情報を合体させ、AIが点数化した社会信用スコア「芝麻(ジーマ)信用」を開発し、自社の決済システムに搭載した。

この信用スコアは、学歴や勤務先、資産、人脈、行動(買い物や交通違反、各種トラブルなど)、返済履歴(未払など)の5項目から計算されるものである。地下鉄の駅には、「社会信用スコアが低くなると、ローンや融資の審査、就職や入学など、様々な場面で日常生活に影響が出る可能性があります」という警告文が表示されている。

「スマートファイナンスグループ」はこの信用スコアを使うことで、わずか8秒で融資の可否を審査する。その数、月に200万件、見事クリアーすれば借り入れとともに、個人情報の吸い上げも開始され、ビッグデータはますます大きくなっていく。

クレジットカード問題に詳しい消費生活ジャーナリストで、長年にわたり人々の消費生活を取材してきた岩田昭男氏は、信用スコア制度の全国展開を進める中国を「究極の監視社会、窒息社会だ」と批判している。

中国では、政府が導入した信用スコアとキャッシュレスの組み合わせを導入して以来、政府に対する国民のお行儀が格段に良くなったと言われている。国全体のデジタル化を急速に進める中国では、「信用スコア」の点数によって、受けられる公共サービスに差がつけられる。政府が好ましくないと判断した人物は、デジタル化した中国社会でまともに暮らせなくなると言われている。信用スコアは完全管理型社会のツールとして活用されているという内容であった。

 

現金がなくてもスマホひとつあれば決済ができるキャッシュレス化は文明の象徴みたい言われ日本もキャッシュレス化を急ぐべきという評論家先生の意見を時々聞く。しかし、キャッシュレス化と信用スコアとを結びつけると従順な国民を簡単に作れるという中国の事例を聞くとキャッシュレス化は国民を幸せにするのか疑問に思う。キャッシュレス化によって、お金の動きと信用スコアの二つを握れば、国民の全てを監視できるというのが明確になった。中国に限らず、キャッシュレス化の目的は国民の管理ツールであると考えたら、本当に怖いと思った。