ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

「東京五輪の大罪」を読む その2

電通専務で東京オリンピック組織委員会理事を務めていた高橋治之氏は、東京五輪のスポンサー企業選定に関連して紳士服大手のアオキから現金5100万円の賄賂を受け取ったとして逮捕され取り調べを受けていたが、さらに、出版大手「KADOKAWA」から7000万円の賄賂を受け取った疑いが強まったとして、受託収賄容疑で再逮捕する方針を固めたというニュースが9月6日に報道された。解説を読むと、東京五輪パラリンピックを巡る汚職事件は、さらに拡大する模様であるということが書かれてあった。

東京五輪の大罪」の中で東京五輪は「電通電通による電通のための東京五輪」と書かれていた。電通については招致の段階からさまざまな問題が指摘されていたが、無視され強行された結果が東京五輪汚職であったようだ。著者は次のように語っていた。

「売上高約5兆円(海外を含む)を誇る広告業界の巨人である電通はあらゆる国際スポーツイベント(世界陸上世界水泳ラグビー w杯、サッカー w杯など)の放映権や開催権を手中に収めた企業であり、その招致活動から東京五輪に密接に関わっていた。電通の石井直社長(当時)は東京五輪の招致決定直後、『電通はこの五輪で1兆円を稼ぐ』と社員にメールを送って叱咤激励したと言われている。
 その電通は、2020年東京大会のすべてを取り仕切っていた。すべてとは、招致活動からロゴ選定、スポンサー獲得、山のように報道されていたテレビやラジオCMをはじめとする五輪広報・広告活動、聖火リレー、全国で展開される予定だったパブリックビューイング (PV )をはじめとする五輪関連行事、そして五輪・パラリンピックの開閉会式と全日程の管理進行等、文字通り『すべて』である。そこに他の広告代理店はほとんど介在できず、基幹部分は電通の一社独占だったのだ。67社のスポンサーも電通の一社独占独占契約である。
 これが何を意味するかと言うと、五輪マークがついていたCMや広告、関連グッズには全て電通が介在し、その利益も全て電通に集中していたということだ。これは極めて異常な状況で、過去の開催国でこうした例はなかった。まさしく『五輪の私物化』と言えるような状況であり、東京大会とは、まさに『電通電通による電通のためのイベント』と言っても過言ではなかった。
 東京大会はスポンサー企業の数も異常だった。リオやロンドン五輪のスポンサーは一業種一社という取り決めがあり、全部で10から15社程度だった。しかし、東京開催が決まると電通IOC に働きかけて一業種一社制を葬り、何社でもスポンサーになれるようにした。その結果が異様な程のスポンサー企業の膨張であった。15社のゴールドパートナーカテゴリーは5年間で一社150億円、32社のオフィシャルパートナーは同じく60億円 、20社のオフィシャルサポーターは20億円程度をスポンサー料として支払うと言われていた。組織委員会はスポンサー協賛金を3400億円と発表していたが、スポンサー企業を連れてきたのは電通であるから、組織との間に入って管理料を取っていたはずである。つまり3400億円とは、電通の管理料を抜いた後の金額と考えられる。電通の契約管理手数料は、スポンサー料の約20%といわれている。67社のスポンサー協賛金の総合計金額は4570億円となり、そしてその場合、電通の管理料合計は何と910億円となる。その分を合計金額から引けば3656億円で組織委員会が発表していた3400億円にかなり近くなる。まさに金城湯池とも言うべくしく仕組みであった。(スポンサー契約に関する電通のマージン率について組織委員会守秘義務を理由に非開示としている)
 しかし、過去に女性新入社員自殺事件を引き起こし、国によって書類送検されたような企業が、公平な競争や監視のないままで、このように五輪を私物化している状況は、異常であった。さらに同社社員のモラルの欠如は、開催準備期間中に起きたいくつもの事件に現れていた。その具体例を挙げてみよう。
 13年の招致活動時 、JOC が2億円を賄賂目的で海外企業に送金した疑惑に関与していた。この事件がきっかけで退任した当時の竹田恆和氏は、国会で電通の関与を証言している。
 また20年には、五輪組織委員会の理事を務める電通元専務の高橋治之氏が、五輪招致をめぐり招致委員会から約9億円の資金を受け取り 、IOC 委員等にロビー活動を行っていたとロイター通信が報じた。
 15年のエンブレム盗作問題でデザイナーの佐野研二郎氏の選定に不当に関与したとして電通の槇英俊マーケティング局長と高崎卓馬企画財務局クリエイティブディレクターが更迭された。
 20年会閉会式の演出担当メンバーで電通のクリエイティブディレクターである菅野薫氏が、同社の関連会社社員に業務中にパワハラしたとして、19年末に懲戒処分を受け、演出担当を辞任した。
 21年開閉会式の演出総合統括を務めるするクリエイティブディレクター、佐々木宏氏が人気女性タレントの容姿を侮辱したとして統括を辞任した。
以上を見れば、電通という企業が五輪業務を独占的に扱ってきた弊害がよくわかる。様々な悪評の元を辿れば、その多くは電通に行き着く」と書いている。

東京五輪はコロナ禍によって延期となったけど、さまざまな障害を乗り越え、一応成功裏に終わったという人もいるが、実態は、オリンピック疑獄と言われるような汚職が明らかになりつつあるように一部の特権階級の金儲けのために強行された大会で、国際的にもワイロでオリンピックを招致した日本という悪評だけを残した大会であった。それもこの本を読むと、電通の一社独占体制は問題が多いと言われていたが、一社独占の方が利益を追求しやすいという五輪貴族という特権階級による暗黙の了解が下地にあったようだ。五輪疑惑を徹底的に解明して、日本の再生に繋げてほしいと思う。