ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

論説「誤った道を歩んでいないか」を読んだ

長崎新聞に、論説「誤った道を歩んでいないか」が掲載された。
 「12月8日は太平洋戦争が始まった日である。1941年12月8日、旧日本軍が米ハワイの真珠湾を奇襲攻撃し、太平洋戦争が始まった。今日で81年目となる。戦争に負け、1945年8月15日の終戦までに日本人だけで310万人が犠牲になった。アジア諸国も戦争に巻き込んだ。広島、長崎には非人道性の極みである原子爆弾が投下された。無謀な戦争に突き進んだ反省の下、戦後日本は平和主義の道をこれまで歩んできた。-----中略-----

 しかし、日本は憲法9条の下、戦後堅持してきた『専守防衛』の防衛政策を、いま大きく転換しようとしている。政府は相手国の領域内を攻撃する『反撃能力』の保有を打ち出した。
『昭和史の語り部』と呼ばれた作家、故半藤一利さんの言葉に耳を傾けてみたい。半藤さんは2010年の著書『いま戦争と平和を語る』で、『21世紀になって、相手が攻撃してくるかもしれないから、先制的に防衛的攻撃を仕掛けて撃破することは正義である』という形で戦争が始まっていると指摘し、『これは非常に危険なことだと思う。相手が攻撃してくるかもしれないということは勝手な主観』と警鐘を鳴らした。
 他国の領域内を攻撃する能力の保有は、抑止力どころか、むしろ戦争の危険性を高めかねない。過去を反省し『二度と戦争をしない』と誓ったわれわれは、いつの間にか誤った道を歩もうとしていないか。冷静に見詰める『開戦の日』としたい」とあった

 私は、この論説を読んで、確かに半藤さんが警鐘を鳴らしている通りのことが日本で、今起こっているのだと思った。21世紀は先制的な防衛的攻撃によって、敵を撃破することは正義であるという考えが出てきているようだが、日本にとって、その敵国とはウクライナと戦争を始めているロシアであり、ミサイル発射を繰り返す北朝鮮であり、台湾侵攻を目論み、尖閣諸島で対峙する中国などを想定しているようだ。

しかし、これらの敵国は本当に脅威なのか。まず、ロシアはウクライナに侵攻して、現在ウクライナと戦争中である。そのロシアはウクライナと戦いながら、さらに日本と戦争をする両面作戦をとるはずがない。そのような余力はロシアにはない。ロシアはウクライナ侵攻で経済的に疲弊し、戦争が終わっても20〜30年経済的苦難に見舞われると言われている。そのような国が日本に侵攻することは考えにくいから、ロシアが差し迫った危険とは考えにくい。

北朝鮮はミサイル発射を繰り返しているが、決して日本を狙ったものではないことは明白である。人工衛星よりはるか高い軌道でミサイルを発射していることを日本では騒ぎすぎという意見もある。戦争は金食い虫である。冷静に考えた場合、国力もない、最貧国の北朝鮮が日本に戦争を仕掛ける余力はない。その意味では北朝鮮も差し迫った危険は考えられない。

では中国はどうか、中国はアメリカと並んで世界トップクラスの国力を保持する国である。世界の覇権を巡ってアメリカと軍事競争をしている国と言ってもいいだろう。しかし、台湾問題はロシアのウクライナ侵攻と同じではない。日本国もアメリカも「台湾問題は中国の内政問題であり、中国は一つ」ということを条約で認めており、台湾問題に干渉することは国際条約違反であり、内政干渉となることは明白である。他国のことで国際条約違反までして、こちらから戦争に突入する理由は何もない。また、中国から台湾問題で他国に戦争を仕掛ける理由もない。つまり、本来は台湾問題は国際紛争になるものではない。だから日米が望まない限り台湾問題は戦争にならない。

また、尖閣諸島などの領有権の問題は、日中友好条約締結時も問題点にあがり、田中首相周恩来総理は解決を未来に託そうとして棚上げにした経緯がある。それを目立ちたがり屋の石原元東京都知事の策動によって一方的に国有化をしてしまったことから日中間の領土問題に発展したものである。一方的な国有化宣言は全ての問題を平和的手段により解決をするという日中友好条約の精神に反すると中国から批判されても仕方がないし、問題の種を日本側が作ったことは多いに問題である。

田中首相周恩来総理が会談した後に共同声明が発表されたがその第六条には次のように書かれてある。
日本国政府及び中華人民共和国政府は、主権及び領土保全の相互尊重、相互不可侵、内政に対する相互不干渉、平等及び互恵並びに平和共存の諸原則の基礎の上に両国間の恒久的な平和友好関係を確立することに合意する。両政府は、右の諸原則及び国際連合憲章の原則に基づき、日本国及び中国が、相互の関係において、すべての紛争を平和的手段により解決し、武力又は武力による威嚇に訴えないことを確認する。」
日本は中国と友好条約を締結している。その中国に対して、貴国を仮想敵国として敵基地攻撃能力を準備してますよと公言することは友好条約の精神に違反している。これでは信頼されないだろう。日中友好条約の締結国としては、相手国を非難するだけでなく自国の振る舞いも謙虚に自省する必要があると思う。その積み重ねが真に友好条約を強固なものにしていくことだと確信する。仮想敵国としている、ロシア、北朝鮮、中国どれをとっても日本に差し迫った危険は感じられない。防衛費を倍増して備えるという意味が全くわからない。捨て金にしかならない防衛費に多額の金を投資することは日本の成長発展の芽を摘んでいるのと同じである。その防衛費に使う予定の財源を日本国の成長発展に使うことができれば、日本の未来に大きな夢と希望を描けると思う。われわれの税金を無駄にしないでもらいたい。

 長崎新聞の論説には、過去を反省し『二度と戦争をしない』と誓ったわれわれは、いつの間にか誤った道を歩もうとしていないか。冷静に見詰める『開戦の日』としたい」とあった。為政者には「二度と戦争はしない」と誓った先人の思いに立って、冷静に見つめる日にしてもらいたいと思う。