ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

「一票の反対」を読む そのI

先日、元参議院議員平野貞夫さんが司会者から「政治家にとって大事なことは何だと思いますか」と聞かれていた。平野さんは、即座に「それは信念です。政治家として、これだけは達成したい、これは絶対譲れない、この実現のために政治家を目指すという政治家としての信念です。現在の日本の政治家と言われている人たちを見ていると、信念がない人が多い。信念も何もなく金儲けのため、自己保身のため右往左往している人が多い。これではだめですよ」と語っていた。私は、平野さんの話を聞いて、確かにそうだなと思った。安倍元首相をはじめ、今の自民党の政治家は信念なんかないから、自分の利益のため、反日で反社会的集団である統一教会とさえも手を結び、国民が苦しめられ、搾取されても平気なんだと思った。

そういう中、「一票の反対」を読んだ。この本の主人公はアメリカの女性政治家である。この本は、著者である大藏雄之助氏が日米開戦にたった一人反対したアメリカの国会議員がいたことを知ったことから誕生した本である。この本を読んで政治家の信念というものをまざまざと見せつけられた気がした。

主人公のジャネット・ランキン(1880年6月11日 生- 1973年5月18日没)さんは、アメリカ合衆国の初めての女性下院議員である。生涯を通じて平和主義者として活動し、アメリカ合衆国が第一次・第二次大戦に参戦することに対して、ただ一人両方に反対したことで知られ、ベトナム戦争での反戦活動の先頭にも立った方である。

彼女は、1917年3月、36歳の時アメリカ初の女性下院議員となった。在任中に第一次世界大戦が勃発しアメリカが参戦するかどうか議決を求められた。投票の前に、彼女は周りから様々な説得を受けた。「大勢はすでに決まっている。あなたの反対で決定が覆ることはない。その結果、戦争になれば、国民はきのう平和を主張したことを忘れて、愛国的、好戦的になる。そうなると、あなたの再選はおぼつかない。将来のために今回は賛成すべきだ。」彼女は言った「私は国の力になりたいと思います。でも、戦争に賛成の投票はしません。国際紛争を解決する手段として戦争は愚かで空しい方法であると確信します。戦争は避けることができます。アメリカ・ドイツ双方の国民男女が政府を支配する声を持っていれば戦争は避けられます。現在は特別な商業権益を持つものが世界を支配しているのです」彼女は戦争に反対した50票の1人となった。そして、次の選挙で政党の支持を得れず落選した。

議員を辞めた後は女性活動家として平和や貧困や女性の地位向上などに取り組んできた。そして議員を辞して22年後の1941年61歳の時、再度、推されて下院議員に当選した。その時日米開戦の議決に直面することになった。

アメリカ大統領ルーズベルトは議会で演説した「昨日1941年12月7日(米国時間)、日本帝国海空軍は突如アメリカ合衆国を襲撃しました。昨日の奇襲攻撃でアメリカ軍は大打撃を被り、多くのアメリカ国民が戦死しました。昨日、日本軍はマレーに攻撃を開始しました。昨夜、日本軍は香港、グアム、フィリピン、ウエーク島を攻撃しました。今朝、日本軍はミッドウェーを攻撃しました。このように日本は太平洋全域にわたって奇襲攻撃をかけました。私は、陸海軍の最高指揮官として防衛のためにあらゆる手段を採るようすでに命令しました。日本の計画的侵略を阻止し、アメリカが勝利を勝ち取るため、日本に宣戦布告することを要請します」

攻撃を受けた直後であり、議場も傍聴席も総立ちになってルーズベルト大統領の演説に拍手と喝采を送った。採決の結果宣戦布告賛成388、反対はジャネット・ランキンの1票のみであった。第1次世界大戦参戦に反対した50人のうち20人が議員として在籍していたが、今回はその20人も対日宣戦布告に賛成した。反対票を投じた後は、非国民!ナチスの回し者!、議員を辞職しろ!自決しろ、日本に帰れ!などの罵声を浴びせかけられ、たくさんの非難の手紙が送られてきた。彼女は「敵の攻撃に反撃するのに宣戦布告は必要ない。イギリスはかねてからアメリカを戦争に引きずりこもうとしていた。今回も彼らの策略かもしれない。国民の生命を消費する戦争ほど悪い圧政はない。戦争か平和かを決めるに当たっては確固たる証拠が示されなければならない。政府は、議会と国民に全ての事実を公表し、十分審議すべきである。大急ぎで宣戦布告しなければならない納得できる理由は明らかにされていない」と語った。

 ジャネット・ランキンは演説会場で「貧乏人が戦争で利益を得たという話を聞いたことがありますか?なぜ戦争するのか?先の大戦で一番得をしたのはベツレヘム鉄鋼の社長です。USステールの大戦中の利益は戦場で命をかけて走り回るアメリカ兵200万人の給与の総額と同じでした。ユタ銅山の利益は大戦中に200%増加して320億ドルに達しました。製肉業者は利益を3倍にし、製粉会社も、ボタンメーカーもシャツ製造業者も資本家はみんな儲けたのです。それが戦争です」と語っていた。

 日米開戦に1票の反対をした後、彼女はさまざまな非難の的となった。そういう中、当時著名なコラムニストであったウイリアム・ホワイトが新聞に投稿し、彼女を称えた。「おそらく百人ぐらいの議員は彼女と同じことをしたかったであろう。一人としてそうする勇気がなかっただけのことである。当新聞は彼女がとった考え方とは全面的に意見を異にするが、それにしても何という勇気ある行為であろうか。今から百年後にこの国で、道義的義憤に基づく勇気が、真の勇気が称えられる時、信念のために愚かしくも堂々と立ち上がったジャネット・ランキンの名前が、その業績の故にではなく、その行動の故に、記念の銅像に刻まれるであろう」

日本にもこのような信念を持った政治家が誕生してほしいと思う。否、我々国民が、国会にこのような信念ある政治家を送り出さなければと思う。