ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

岸田文雄か中村哲か

平野貞夫氏、佐高信氏、前川喜平氏の3ジジ放談を見た。今回も日本で、世界で起こっているさまざまな事象をもとに我が国の進むべき方向について三氏の貴重なご意見を拝聴することができた。その中で、佐高信氏が過去に出版した著書「侵略の推進者と批判者 石原莞爾石橋湛山か」の説明をしていた。石原莞爾は日本の陸軍軍人で世界最終戦論を著し、その準備として満洲国建国を推進した人物である。また石橋湛山は戦後の第55代内閣総理大臣を務め、日中米ソ平和条約を提唱した人物である。この本は、二人を侵略者とその批判者という立場で書かれたものである。
 この著書になぞらえて、「岸田文雄中村哲か」という話が出てきた。岸田文夫と中村哲では人物の大きさの違いから、比較することは中村さんに申し訳ない気がするが、中村哲さんのお名前をお借りして「岸田文雄中村哲か」というタイトルで現在を考えたいと佐高信氏が述べて話が進んでいった。

岸田文雄こと岸田首相は、積極的平和主義の名のもとに、積極的に武力の準備に取り組んでいる。武力を保持することで、日本に手を出したら危ないと敵国に知らしめることで平和を保つことができ、それが有効な戦争抑止力になるという考えで、積極的に戦争準備をすることが必要と考えているようだ。軍事費を従来のGDPの1%から倍の2%に増額する計画で着々と進めていく考えでいる。

それについて、前川喜平氏が、積極的平和主義という言葉は世界的に認められ、世界的に使われている言葉であるが、この中身は全く違うものであると説明していた。積極的平和主義というのは、単に戦争や紛争のない状態をつくることに取り組むということではなく、そもそも戦争や紛争は貧困や差別がもとになり起こるものだから、戦争や紛争状態にならないようにすることはもちろん、さらに、戦争の根本原因である貧困や差別の根絶に取り組むことが必要とする思想を積極的平和主義と呼ぶのである。武力を増強して抑止力で平和をつくることは積極的平和主義と言わないと指摘していた。

そして、中村哲氏は、パキスタンアフガニスタンで医療活動に従事して、さらに灌漑事業などを進めて、現地の貧困の克服に長きにわたり貢献された方である。中村氏がパキスタンアフガニスタンに関係するようになったきっかけは、1978年に現地の7000m峰の登山隊に帯同医師として参加し、その時、現地で多くの貧しい人たちが医師の治療も受けられず放置され、亡くなっている現状を見たことである。その後、海外医療協力会から派遣されて、最初はパキスタンペシャワールに赴任し、医療活動に従事した。しかし、治療を施して命を救っても、清潔な飲料水が手に入らないために命を落とすことも多くあることから、まず命の水を確保することが必要と判断して井戸を掘り水を確保する事業を展開した。次に、各地に井戸を掘って飲料水を確保しても農業に必要な水がない。貧しい人が、人を殺す兵士になるのは働く場がないから、農業する場がないからである。働く場があれば、農業するための農地があれば彼らは生活のために人を殺さないでいい。ではその農地を造ろうということで始まったのが、砂漠を広大な畑に変えるための中村哲氏の灌漑事業である。水があれば多くの病気と難民問題を解決できるとしてクナール川からガンベリー砂漠までの25kmに及ぶ用水路を完成させ10万人が暮らしていける基盤を作った方である。

 そのパキスタンアフガニスタンは紛争地域である。2001年10月13日、米国のアフガニスタン攻撃に関連して、自衛隊の現地派遣の是非を論議する委員会が国会で開かれた。そこに中村哲氏は参考人として呼ばれた。中村氏は現地の実情を踏まえ、「自衛隊派遣は現地の人々の日本に対する信頼を崩しかねない。有害無益でございます」と述べた。すると自民党議員から笑い声とヤジが飛んだ。

紛争地域であるアフガニスタンで活動する中村氏は言う。日の丸に何度救われたかわからない。「日本は軍隊を持たない国で戦争しない国である。日の丸は敵ではない」現地の人は日本が戦争しない国ということを知っていた。だから、日本人とわかると釈放してくれた。しかし、日本が自衛隊を派遣したら違う。「日本はアメリカと一緒にアフガニスタンを土足で踏み躙る国になる」と言う。その中村哲氏は銃弾に倒れた。中村哲氏は歩く日本国憲法と言われた人である。日本国憲法で世界の平和に貢献するという憲法9条の戦争放棄を身をもって体現された方である。人類を平和にする理想の姿を追求していた方である。日本国が自衛隊を派遣したことによって中村哲氏は命を亡くすことになったと思う。もちろん、岸田首相の中身のない積極的平和主義では平和を得ることはできない。

 2者択一が必要な時に、日本人はどちらも支持して、択一ができない人種と言われている。「岸田文雄中村哲か」あなたはどちらの生き方を選択するか?日本国はどちらの道を進むべきか?当然、中村哲氏の道しかないと私は思う。では、あなたはどうですか?今、一人一人が問われている。