ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

「神なき時代の日本蘇生プラン」を読む

日本は今、経済的没落国家と言われている。もはや先進国でもないとも言われている。その上、今すぐ対策を講じないと少子化で、滅亡する危険があると言われている。経済的没落と少子化問題、この二つは国の総力を上げて、国家予算を重点配分しても取り組まなければならない緊急の日本の最重要課題である。日本はそのような最重要課題を抱えているにもかかわらず、その課題解決にしっかりと取り組んでいない。国を守る防衛こそ最重要課題ということで防衛費に国家予算を最優先に最重点に振り向け、平和国家日本をかなぐり捨てて軍事大国化を目指している。さらに、エネルギーは再生可能エネルギーこそ未来のエネルギーという世界の流れに反して、原発に莫大な予算を振り向け、原発再稼働、新規開発を目指している。経済的没落に対して有効な対策を打ち出さないし、少子化対策も掛け声ばかりで予算がないことを理由に有効な対策は打ち出せないでいる。軍事費に莫大な予算を使うのはやめて少子化対策にまわすべきという声に対しては、問題のすり替えをすべきではないという意見が出てきて、一向に方針の転換はなされない。日本は、待ったなしの重要な課題を抱えているにもかかわらず、その課題に対して十分な対策がなされない。私は、日本は間違った選択をしているとしか思えない。なぜ、日本はこのような愚かな選択しかしないのか、このような誤った道をいくのはなぜなのかを考えているときに、「神なき時代の日本蘇生プラン」を見つけた。

この本は宮台真司氏と藤井聡氏の対談本である。副題に「クズになってしまわない」ための処方箋と書かれていた。お二人の対談には次のようなことが書かれていた
「日本は25年間実質賃金が下がり続けたOECD で唯一の国だ 。平均賃金は2015年に韓国に抜かれ 、2018年には1人当たりGDPが抜かれ 、今は最低賃金も抜かれている。すでに先進国ではない。コロナ禍で検査も病床確保もできない日本は、東アジアでの圧倒的な負け組である事実が明白になった。
四半世紀の経済停滞はひとえに既得権益を動かせないがゆえの「産業構造改革の未達」によるものである。この「未達」は人々がアベノミクスを支持したことで「達成」されてきた。現在は1ドル 137円の円安だ。これは「円を使った経済的営みが、低生産性 ゆえに価値を生み出せない」という根本問題による。ゆえに金融財政策のごときではどうにもならない。日本全国どこを切っても 金太郎飴の同じ顔で沈みかけた船の座席争いに淫するばかりである。子々孫々に良い プラットフォームを残す営みが 官・民・マスコミを問わず未だにない

高生産性の鍵は人材だが、義務教育費と子育て支援費の予算割合はOECDで最低水準である。防衛費は2%で5兆円増だが 、小学校から大学までの全面無償化は3兆円で達成可能である。エネルギーシフトも最低水準である。欧州の新車ZEV(ゼロ排出車)比は現在17 %であり、2035年には100%達成予測で進められている。日本は現在0.6%であり、その先行きは不透明である。政策の不備で巻き返すことはできない。先の大戦の発端はエネルギー安全保障をめぐるものだったのに、自給率はOECD35カ国中34位である。再生可能エネルギーは純国産なのに、シフトを放置して安全保障を語ってきた。そんな体制を支持してきたのは国民自身である。

なぜかつて経済大国といわれた日本が、衰退国に成り下がったのかということについてお二人の話は進む。「なぜ産業構造改革ができないか。どこもかしこも『沈みかけた船の座席争い』をするヒラメとキャロメだらけという『日本人の劣等生』のせいです 。言い換えれば、『アメリカのケツを舐める行政官僚・のケツをなめる政治家・のケツを舐める既存業界・のケツを舐めるマスコミ・のケツを舐める自称評論家・のケツを舐める日本国民』という『ケツナメ連鎖』がどの界隈でも展開しているという『ケツナメ連鎖のムカデ競争』のせいです。アメリカの調査では、取締役会の構成メンバーに対する従業員の敬意がOECD加盟国の中で一番低いのが日本。『クソがついたケツでも舐める輩だけが出世する』という事実を誰もが知るからです。でも、それを皆が嫌悪するわけでもなく、心の中では『自分もケツを舐めてポジション上げたい』と考えるクズだらけなのです。

なぜこれほどまでに、日本人は劣化したのかについては次のように語っていた。「日本人はどの国よりも個人が弱い。だから、政・官・民問わず、政治党派を問わず、どこを見ても上を伺うヒラメと周囲を伺うキョロメだらけである。日本人が弱いのは規範を内面化していないからである。いわゆる『価値の空洞』です。価値の空洞ゆえに、周囲への『学習的な適応』だけで、『価値的な完徹』ができない。日本人は一夜にして天皇主義者から民主主義者に豹変した。だから、一夜ににして、フェミニストにもなり、SDGSにもなり、多様性主義者にもなる。つまり『学習的な適応』しているだけで『価値的な完徹』がない。つまり信用できない。しかし、そのような日本人の劣等性が過剰な反倫理性を産まないように阻んできたのが、『世間』であった。市民革命などを体験していない日本人は、市民意識、社会意識が希薄であるが、それに変わるものとして『世間』を有していた。『世間』に顔向けできないというところの世間である。その世間はなくなり、仲間以外みな風景になってしまった。そして、その仲間さえなくなっている。その「世間」「仲間」を40年間かけて崩壊させてきたのが日本です。一つの政治政策の間違いだけでこれほどまでに没落したのでなく、「世間」をなくしたことからこのような日本になることは始まっていた」

政治をかえればすぐにでも良くなると単純に思っていたが、どうもそう簡単な問題ではないようだ。暗澹たる気持ちになる。「明らかに暗い未来が待っているから、だからどうした。日本が沈むからどうだっていうんだ。自分はやるべきことをやればいいじゃないか」宮台氏の言葉に励まされながら進んでいこうと思う。