「アイ イン ザ スカイ (eye in the sky)」という映画を見た。英語を翻訳すると“空の目”ということになる。また、この映画の副タイトルは「世界一安全な戦争」と書かれていた。「世界一安全な戦争」とは何だろうと思い見たところ、この映画は軍事用ドローンを使った作品であった。映画を見て、この映画はノンフィクションではないかと思われるような内容であったが、この映画は史実ではなくフィクションである。しかし、この映画が作られた2015年当時、すでに世界中で1万台を超える軍事用ドローンが実際に使われていたことから、この映画を作成する段階で、軍人やドローン技術者からのアドバイスを受けて作られた映画という説明であった。作品自体は史実ではないが、ドローン攻撃をする場合は、このような形で行われるということが十分に想定される内容であった。
この映画は、軍事用ドローンを使ったイギリスとアメリカによる合同軍事作戦を描いたものである。この作戦の実行責任者は、イギリスのロンドンに置かれているロンドン常設統合司令部に詰めるイギリス軍のパウエル大佐である。パウエル大佐は必要に応じてイギリス内閣府と連絡をとり、必要な許可を取りながら作戦を遂行していく。また、パウエル大佐は、アメリカ国防省に詰めるベンソン中将と協力してこの作戦を遂行する。使用するドローンはアメリカ軍のドローンで、アメリカ軍のドローンはネバダ州空軍基地のドローン部隊の操縦士であるスティーブ中尉によって遠隔操作されている。また、ドローンが収集した写真などの画像はハワイ州空軍基地にある画像解析部隊によって解析管理されている。そして今回の攻撃目標はアフリカのケニアの首都ナイロビに潜伏するテロリスト集団である。この映画では、攻撃目標はアフリカのナイロビ、作戦指揮はロンドンとワシントン、作戦実行部隊はアリゾナ州とハワイ州というように全世界にまたがっている。現代の戦争は戦場に行く必要はない。事務所でコンピュータの前に座って、スクリーンに写し出される詳細な映像を見ながら情報を共有しながら、指揮官の指示に従ってレバーを操作するだけである。
詳細な映像はナイロビ上空6000mに滞空しているドロンの高感度カメラが映し出している映像である。6000m上空から10cm程度のものまでは判別できる性能らしい。しかし、木立の影とか家の中までは見えない。その時は小鳥型のドローンや虫型ドローンが使われる。虫型ドローンは部屋の中までも入り込み映像や音を収集する。本人であるかどうかは高性能カメラで顔の輪郭や耳の形などで判定する。変装しても100%見分けることができる性能らしい。
現在の軍事用ドロンは、高性能で高解析能力を持つカメラを持つと同時に、またミサイルに相当する強力な破壊力を持つ武器も備えているようだ。だから、単に偵察に使用されるだけでなく、攻撃用にも使われることも多い。
この映画でも、最初は偵察任務だったが、テロリストがテロの実行準備に着手したため、急遽攻撃が命じられた。テロリストが潜む屋敷に照準を合わせて、攻撃命令が出され、カウントダウンが始まってあと2秒というところで、子供が屋敷に近づいていることに気づいたパイロットが攻撃をストップした。そして、殺傷圏内に子供侵入を報告する。子供の動向を見ながら、攻撃のチャンスを伺う作戦本部は、新たな対策を講じて攻撃命令を出す。パイロットは、もはや逡巡できない立場に追いやられ、引き金を引くと言うストーリーであった。
「世界一安全な戦争」は、ドローンの出現によって実現した。空軍基地で軍事用ドローンをオペレーションをするドローンパイロットは基地の近くに家族と一緒に住み、通常の会社員が通勤するように通勤して、基地内のドローンオペレーションセンターでドローンを操縦して戦争に参加して、人を殺傷して、時間が来たら退庁して自宅に戻る。また、翌日も同じように戦争に参加して殺傷する。これが彼らの仕事である。
軍事用ドロンパイロットは毎年数百名単位で養成されるそうだが、それ以上に辞める人が多く、常に人員不足が続いていると言う話がある。当然だと思う。殺人行為を仕事にできるはずがない。軍事用ドローンパイロットをAIが担う研究がされているようだ。なかなか、戦争を止める方向には行かないらしい。