アメリカの大学で、パレスチナ自治区ガザ地区での戦争に抗議する行動が広がっている。当初、抗議行動は東部のコロンビア大学やイェール大学で始まったが、今や全米各地の大学に広がっているようだ。パレスチナ自治区ガザ地区での戦争は、昨年10月7日にイスラム組織ハマスがイスラエルを襲撃して始まった。ハマスの襲撃では、イスラエル人や外国人など約1200人が殺された。イスラエルによると、ハマスは253人を人質としてガザ地区に連れ去ったといわれている。イスラエルはこの襲撃後、ハマス破壊と人質解放を目標に、これまでにない激しい戦争をガザ地区に仕掛け、これまでにイスラエルの攻撃で、女性や子供を中心に3万4000人以上が殺され、8000人以上が行方不明になっているといわれている。
私は、パレスチナ自治区ガザ地区での戦争は、これまでの長い歴史の複雑な関係が起因しているというテレビ解説などを聞きながら、知識も何もない者が意見を言うのは憚る気持ちがあり、この戦争に立ち入ることを躊躇していた。しかし、この半年余りで、女性、子供を中心に3万4千人以上が殺されているというニュースを見て、これは紛れもないジェノサイドであると思った。ジェノサイドは人類に対する犯罪である。イスラエルとパレスチナの間にどのような歴史的経緯があるか詳しくは知らないが、ジェノサイドは人類として絶対阻止しなければならないと思った。
パレスチナ自治区ガザ地区は360キロ平方メートルの面積に230万人のパレスチナ人が住んでいる地域である。10月17日のイスラエル侵攻以来、ガザ地区の各都市は攻撃され破壊され瓦礫の山に変わってしまった。北部のきれいな中都市であったガザーシティーもイスラエルの攻撃によって徹底的に破壊され、住民は逃げ惑い、比較的安全と言われた南部の人口20万の都市ラファへ170万人が避難した。しかし、そこは物資もなく治療も受けられず、飢えと渇きの生活を余儀なくされ、攻撃による死傷者だけでなく、餓死者、病死者も増加している。ガザは、これまで人口230万人が住む世界最大の野外監獄と言われてきたが、それが今や21世紀の絶滅収容所といわれる状況になっている。ガザに住んでいる人は明日は生きているかどうか誰にもわからないという日常に追い込まれている。しかし、アメリカはじめとする西側諸国はイスラエルの蛮行に対して黙認しているような状況で、それに対して学生たちが抗議の声を上げ始めたようだ。
現在のガザ地区がこの状況に至る原因は、全ては、昨年10月17日のハマスの攻撃によって始まったわけではない。グテーレス国連事務総長は「ハマスの攻撃は真空状態で始まったわけではない」と語っている。つまり、イスラエルはガザ地区を1967年からイスラエルの軍事占領下におき、さらにイスラエルは2007年からガザ地区を完全封鎖して世界最大の監獄という状況にしてきた。これらは長期の国際法違反にあたり、ここから大きな問題が発生していると指摘されている。つまり、パレスチナ自治区ガザ地区は国際法違反のイスラエルの植民地下に置かれ、そこに住むパレスチナ人は生存権を含むあらゆる人権を蹂躙され続けてきたということである。そのような植民地下では生きていく価値がないと考え、自殺する者も多い。イスラムでは自殺は犯罪と同じで、自殺者は地獄に落ちると教えられている。またその家族は犯罪者の家族と非難される。それでも自殺者が多いのは、どちらも同じ地獄と考える者が多いことを表している。イスラエルは、今回、パレスチナ人がその植民地政策に反抗したことを奇貨として、パレスチナ人のジェノサイドを推し進めているがそのようなことは決して許されることではない。私も、アメリカの大学生に共感してガザでの戦争に抗議の意を示したいと思った。
日本政府は、イスラエルのガザ地区への戦争行動に対して、イスラエル非難をしていない。大阪万博へのイスラエルの参加要請をした時に、イスラエルから、イスラエルのパレスチナ政策を理解してもらえる絶好の機会として参加するという回答を受け取っている。また、イスラエルの企業と兵器開発の共同研究を進めるなど、安倍晋三政権時代にイスラエルと包括パートナーシップ声明を発表して密接な関係を維持している。日本は、ガザ攻撃について傍観者ではなく、イスラエル支持で共犯者の立場にあるといえる。もちろん、アメリカが一番のイスラエル支持国であり、そのアメリカに対して、つい先日、岸田首相は、日本は常にアメリカと共にある。誇りを持って、アメリカのグローバルパートナーとして行動すると述べていた。
日本国憲法は平和主義であり、日本国憲法は日本の為政者に対して、恐怖と欠乏のない世界を実現するために全力を注ぐことを命じている。しかし、岸田首相のイスラエル支持の行動は、その真逆の恐怖と欠乏を増幅させる政策を遂行していることと同じである。憲法に逆らう為政者は引き摺り落とさねばと思う。また、今年の広島市の平和記念式典にロシアは招待しないが、イスラエルは招待すると発表された。このことはダブルスタンダードであると指摘されている。日本政府の意向に沿ってのことであろうが、ダブスタの平和式典では、その普遍性・正当性に傷がつくのは当然であり、国際的に非難を浴びて当然であろう。平和憲法を持つ国として恥ずかしい話である。