ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

スポーツウオッシュに加担したくない

 東京大学准教授で経済思想・社会思想が専門の斎藤幸平氏(37)による「五輪ボイコット」発言が話題となっている。斎藤氏は7月29日にTBS「news23」にコメンテーターとして出演した際、小川彩佳キャスターから「パリで開催されているオリンピックを斎藤さんはご覧になっていますか?」と聞かれると「いや~全然見てないですね」と返答。小川キャスターと同局の藤森祥平アナウンサーが「全然?」「全く?」と反応すると、「私、反五輪で、ボイコットしてるんですけど」と笑みを浮かべつつ自身の立場を表明した。

 “ボイコット”の理由について「いろいろある」とし、「行き過ぎた商業主義が好きじゃないとかもあるが、やっぱり今回私が一番理由にしているのはスポーツウオッシュに加担したくないっていうことです」と説明。「イスラエルの問題で、ロシアは今戦争を理由に出ることができないわけですね。ところが国際司法裁判所のICJがイスラエルのやっていることはジェノサイドであり占領政策自体も国際法違反だと勧告している。にもかかわらず国際社会やオリンピック協会はイスラエルとしての参加は認めているダブルスタンダードがある」とパレスチナ自治区ガザ地区で攻撃を続けるイスラエルの五輪参加に言及した。

 「これでみんなで盛り上がって“平和の祭典よかったね”っていうふうにみんながなってしまったら、もしかしたらパレスチナ、ガザの人たちが忘れられてしまって、ジェノサイドを覚えている人たちがいないっていうことになってしまう。私は少しでも抵抗したいなと思って、見ないようにはしてるっていうことですね」と続けた。

 この発言がSNSやネット記事で拡散されると、ネットでは「よくぞ言ってくれた」「素晴らしいコメントだった」「国内でも大切なことが報道されていない」「こういう意見が報道されるのは貴重」「日本もこういう意見がどんどん出て来なければ」「五輪のニュース一辺倒のニュース番組に対する意見なのかも」などの意見が上がった。

 私は、この記事を読むまでは「スポーツウオッシュ」という言葉を知らなかった。辞書を調べると、スポーツウォッシュ《sportswash:名詞》とは 、2018年にオックスフォード辞書に認められた英語の新語のひとつで、国家や団体、人物などが、スポーツを利用して自らのイメージを高めようとしたり、不都合な事実を隠したり、不都合な事実から目を背けさせようとすることを意味するとあった。

 また、斎藤氏は、別の機会では、政治学者で米パシフィック大教授のジュールズ・ボイコフ氏の「祝賀資本主義」という言葉を引用して「五輪のような大きなイベントで盛り上がると、空気的に批判しにくくなる。盛り上がっている間に、その裏でいろんな人たちが利権や賄賂で懐を潤していく。日本の東京五輪汚職問題は、まさに祝賀資本主義の本質であったと“祝賀資本主義”による問題点を批判していた。

 この斉藤氏の発言について、元大阪府知事で弁護士の橋下徹氏が8月3日、カンテレ「ドっとコネクト」に出演し、五輪に関する識者のコメントで気になるものもあったと次のように述べた。
「特定名は言いませんけど『五輪が政治的な問題になってて、ボイコットの意味で、私は見ません!』みたいなことを言う人がいた。『五輪に興味がないから、なければホッとする』って。いいんですよ、いいんだけど、選手に対するリスペクトを持った上で、そういう意見を言ってほしい」述べていた。

 橋下氏は特定名は言っていないが、斉藤氏の発言を指しているのは間違いない。橋下氏は、斉藤氏が選手に対するリスペクトがないと言っているようだが、斉藤氏の発言は選手に対するリスペクトとは全く関係ない。橋下氏の発言は、斉藤氏を貶めるための、お得意の問題点すり替え発言であると思った。
 私は、斉藤氏のスポーツウオッシュに加担したくないという意見に賛成である。また、オリンピックには祝賀資本主義の問題点があるという点も見逃せない。現在の国際秩序は平和の祭典が開催できて良かったねと手放しで喜ぶ環境では決してない。斉藤氏の視点は常に忘れないようにしなければと思う。そうしなければ、スポーツを利用して不都合な事実を隠そうとする人たちの思う壺になるからである。いつの時代にもそのような悪巧みに反対する人もいれば、忖度する人もいるものだと思った。