8月の俳句会に参加した。句会は定刻に始まるが、句会が始まる前に、選句の作業があるので定刻20分前に入室する必要がある。今日の兼題は「秋めく」である。講師の元に、前もって俳句会受講者15名が作品を各自3句投句している。講師はそれらの投句作品を作者名を伏せて作品に1番から45番の番号を振って2枚の用紙に印刷している。句会に参加したら、投句作品が印刷された用紙をもらって、その中から自分の投句作品以外で5句を選句する。そしてさらにその中から一句特選句を選んで俳句会の開始を待つ。
定刻に俳句会が始まった。講師の挨拶の後、選句の発表が行われる。順番で発表していき、自分の番が来たら、自分の名前を名乗って選句の発表を行う。因みに自分の名前を名乗る時は、姓名を名乗るのではなく名のみを名乗ることになっている。発表は作品番号と作品を読んで発表する。5句の発表が終わったら、その中から、何番の「・・・・・・・・」を特選句に頂きましたといって発表する。
15名の選句の発表が終わった後、特選句としての投票が多かった作品、選句者の投票が多かった作品が発表されて、それらの作品を中心に講師の説明が行われる。この講師の説明が面白くてためになる。
今日の1番の優秀作品は次の作品であった。
沈黙の海へかなかな鳴きやまず
この作品は遠藤周作氏の小説「沈黙」の舞台となった外海で作られた作品で、「沈黙」と「鳴きやまず」の組み合わせが余情を誘う秀逸の作品という評価であった。もちろん、今日の特選句の投票も選句者の投票も1番多くあった作品である。私は、この作品の「かなかな」が何の意味がわからず、投票しなかった。講師にお尋ねしたら、「かなかな」はセミの蜩のことです。この「かなかな」がこの句の季語ですと説明を受けた。他の受講者はみんな知っておられたようで、私は俳句の基本的知識に欠けていると改めて思った。
大三東徒歩零分の秋の海
この句は島原鉄道の大三東(おおみさき)駅の情景を詠んだ句である。大三東駅はホームの目の前が海という全国的にも有名な駅である。徒歩0分という表現が駅と海の関係を率直に表していて多くの選句者の投票を得ていた。
私の今日の投句作品は次の三句であった
蝉の声変わり季節を暗示する
講師がこの句について感想を述べる。この句は蝉の声が変わり季節を感じたと詠んでいるわけですが、蝉の声が変わったのは暗示でなく明示です。明明白白です。暗示という言葉が相応しくありません。暗示は他の言葉に変えたほうがいいでしょう。
あそぼーい登る高原秋めきて
この句は、特急列車あそぼーい乗車の時に詠んだ歌である。あそぼーいは海抜0mから海抜700mまで登っていく高原列車である。この句は3名の方に選句していただいた。講師は「あそぼーい登る高原秋めきぬ」の方がいいでしょうと修正された。
登り来て阿蘇の空気は秋めきて
この句は登り来ての「て」と秋めきての「て」が二つあり「て」が強い。読むと少し「て」に違和感がある。読んだ時の音にも注意して作ったほうがいいというアドバイスをいただいた。
また、別の日に次の作品について添削をしていただいた。
中天の三角移りて夏惜しむ
この句は、夏の大三角形の位置の移動を感じ季節の移り変わりを詠んだ句である。講師は「夏の大三角形は夏の星空の目印です。夏惜しむは、時の経過が推測できるので移りては不要です。「中天の大三角形夏惜しむ」に添削されていた。夏の夜空には、大三角形の大を使わないとイメージが湧かないので納得した。
白球追う夢破れ夏果てる
甲子園球児を詠んだ句である。この句について講師は「“白球を追う夢”の語句は、野球をしたいという願望です。しかし、この句の中では夢は優勝とか甲子園出場とかの意味に浸かっているようです」として「甲子園の夢は破れて夏果てる」と添削された。
ゲームセット汗と涙で夏尽きる
これも甲子園球児を詠んだ句である。この句について講師は「高校野球、夏予選、汗と涙は手垢のついた定番表現です。できるだけ使わないように。予定調和の世界で終わらず、個性を出しましょう。残念ながら、登場人物、人間が描かれていないのです」とあった。
自信作と思って投句するが、いずれも凡人、駄作という評価ばかりである。他の方の作品をみて、確かに違いを感じる。俳句は写生という。「掛稲にいなご飛びつく夕日かな」この句は正岡子規の写生句の原点になったと言われる句である。確かに見たものをそのまま詠んだ句であるのはわかる。しかし、実際に自分で作ろうとしたらうまく描けない。
名句の条件とは、美しい日本語で、一読して意味がわかり、詠むほどに味わい深くなるものと教わった。わかりやすく詠むと平板すぎたり、奥深く詠もうとすると意味不明になったり、また、手垢のついた言葉、表現を使ったりなかなか簡単にはいかない。面白いけど難しい。焦らず、やっていこうと思う。