ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

米不足について

 テレビでは、毎日コメ不足のニュースが流れている。これからますます米が高くなっていくとも報道されている。この原因は昨年の夏の暑さのため米の収穫量が減ったためであるとか、インバウンドによる外国人の訪問客が増えて、その分、米の消費が増えたことなどにより、米不足につながっているという解説がなされていた。解説を聞きながら、昨年の米作りが不作だったとは知らなかったし、観光で外国人が増加したとはいえ米不足が起こるとは驚きであった。反論する知識も何もないので、解説を聞き、そういうものだと思うしかないが、米不足は国民の飢餓に関わる問題であるだけに、こんなに脆弱でいいのだろうかと思ってしまう。

 そういう折、農業問題の第一人者とも言われている東京大学大学院教授の鈴木宣弘氏の論文を拝見した。以下に一部を引用する
 「過剰、過剰と言われた米が、突如足りないと言われ始めた。昨年の猛暑による減産・品質低下と訪日客の急増による受給逼迫が原因と言われるが、猛暑などの異常気象はいつものことであるし、インバウンド需要も新型コロナ前に戻っただけなのだから、想定外とは言い難い。
 根本原因は別にあるある。それは、米の過剰在庫を理由に、①生産者に米の生産調整強化を要請していること、②水田を畑にしたら1回限りの「手切れ金」を支給する田んぼ潰しに取り組んでいること、③材料費の高騰などで稲作農家の廃業が増えていることが原因である。
 米不足は予想されていたのだから、むしろ米の増産を奨励し、消費の1.5ヶ月分しかない米の政府備蓄を増やしていれば、その放出で調整できるのにそれをしてないから、対応できないのだ。
 どれだけ、稲作農家が苦しんでいるのか。実際に、農林水産省公表の経営収支統計を確認すると、農家の疲弊の厳しさに驚く。2020年で、稲作農家が1年働いて手元に残る所得は1戸平均17万9千円で、自分の労働への単価は時給に換算すると1時間181円である。21年、22年は、両年とも、所得は1万円、時給では1時間当たり10円まで低下している。とても稲作農家はやっていけない状態で、総崩れの様相を呈している。しかし、日本政府は、現在、農村現場で頑張っている人々を支援しない
 しかも、この深刻な総崩れの事態を放置して、農家への支援策は出さずに、一旦有事が発生したら、罰則で脅して強制増産させる「有事立法」を準備するという。そんなことができるわけもないし、していいわけもない。

 反面、日本政府が力を注いでいる農業政策は、生産や食品自体にテクノロジーを活用するフードテックの推進である。フードテックの推進では、一部企業の儲けにつながる昆虫食や培養肉、人工肉、無人農場などを推進するとしている。農村現場で頑張ってる人々は支援せず、農家を退場させ、一部の企業の利益につながるような政策を推進するのは、フードテック推進にも、後述する改訂『食料・農業・農村基本法』にも共通する。
 このようなことを続けたら、農業・農村は破壊され、国民に対する質と量の両面の食料安全保障も損なわれる。これほどに日本の地域と国民の命をおろそかにしてまで一部企業の利益を重んじることが追求されている。どうして、ここまで『今だけ、金だけ、自分だけ』の政治になってしまったのか。

 現在、我が国の農業従事者の平均年齢は68.7歳である。この衝撃劇的数字はあと10年もしたら日本の農業・農村の多くが崩壊しかねないことを示している。しかも今のコスト高で、農家はコストを販売価格に転嫁できず、赤字に苦しみ、稲作農家だけでなく、酪農・畜産事業も廃業が後を絶たず、崩壊のスピードは加速している。私たちに残された時間は多くない。国際情勢は、もうお金を出せばいつでも食料が買える時代ではなくなっている。
 5月29日、農政の『憲法』たる『食料・農業・農村基本法』が25年ぶりに改定された。基本法の見直しを行う意義とは、世界的な食料需給情勢の悪化と国内農業の疲弊を踏まえ、国内農業を支援し、種の自給率も含めて食料自給率をしっかり高め、不測の事態にも国民の命を守れるようにすることである。そういうことを宣言するんだとみんなが考えた。
 しかしながら、基本法の原案には食料の自給率向上という言葉さえ出てこなかった。誤った政策を改善するどころか、『政策は十分であり、潰れるものは潰れればよい。農業・農村の疲弊はやむを得ない。一部の企業が輸出やスマート農業で儲かればそれでよい』かのような方向性を打ち出した。
 なぜ、こんなことになるのか。最近、納得できた。農業・農村の崩壊を前提にしているのだ。農業就業人口が急速に減少し、もうすぐ農家はさらに潰れ、農業・農村は崩壊する。だから、非効率な農家を支える無駄をせず 、企業などの参入で儲かる人だけ儲ければいいではないかと。みなが潰れないように支える政策を強化すれば事態を変えられるという発想はない。『食料自給率』や『農村』という概念は希薄だ。『国消国産』のために食料自給率を向上するという考え方もないし、農村コミュニティが維持されることが、地域社会、伝統文化、国土・治水も守るといった長期的・総合的視点はない。
 だから 食料自給率を軽視する発言が繰り返される一方で、『規模拡大によるコストダウン、輸出拡大、スマート農業』が連呼され、加えて、海外農業生産投資、企業の農業参入条件の緩和を進めている。日本政府は企業の利益しか考えていない。
 このままでは、IT大手企業らが描くような無人農場などが各地にポツリと残ったとしても、農村漁村の大半が原野に戻り、地域社会と文化も消え、食料自給率はさらに低下し、不測の事態には超過密化した拠点都市で餓死者が続出する『歪な国』に突き進みかねない。」とあった。

 米不足の原因は、米の不作とインバウンドの増加ではないようだ。自民党政権による農政の失敗によって起こっていることだと述べられていた。さらに、この状況は改善することはなく、ますます、悪化することが予想されるようだ。農村コミュニティを維持して、地域社会、伝統文化、国土・治水も守るといった長期的・総合的視点を持った国しか生き残れない。しかし、それはせず、裏金自民党らしく裏金を提供する企業向け政治を推進した結果こうなったようだ。世界的な食料事情を考慮した場合、これから食料自給率の向上は日本国にとって、ますます重要な必須な課題である。自民党政権には任せられない。早急に退陣してもらいたいと思う。