自民党総裁選に出馬表明した河野太郎デジタル相が原発の新増設の必要性にまで踏み込んでいる。その理由として「データセンターとAIで電力需要が跳ね上がる。再生可能エネルギーを2倍のペースで入れても、原子炉を再稼働しても足らない」と強調していた。同じことを、原発活用へ旗振りする経産省もキャンペーンしている。データセンターやAIを“人質”に出されると仕方ないか、となりがちだが、これは本当なのかと思う。
河野太郎デジタル相の主張に対して、エネルギー政策に詳しい元経産官僚の古賀茂明氏は「原発は必要ない。河野大臣の発言は、世界の常識から完全に外れています」と次のように語っていた。
「電力自由化が進んでいる各国では、原発は発電コストが高く、もはやお荷物という認識です。太陽光や風力などの再生可能エネルギーは、発電コストは安くても発電量が変動するため安定しないと言われてきましたが、蓄電池の価格が急激に下がり、いまや『再エネ+蓄電池』の組み合わせの方がはるかに優れている。これが世界の常識です」「ドイツのフラウンホーファー研究機構による、エネルギー源別発電コストは次のとおりです(今年7月現在)。原発は16電源のうち最もコストが高く、48ユーロセント/kWh(約77円)。一方、太陽光+蓄電池は12ユーロセント/kWh(約19円)で太陽光+蓄電池発電は原発の4分の1です。
また、AIやデータセンターのため、原発の再稼働や新増設を急ぐ必要という理屈にも“盲点”があります。確かに、AIやデーターセンターは大量にエネルギーを消費しますが、原発新増設など全く必要ないというのが世界の常識です。
「データセンターを建設しようとしているGAFAM(米主要IT企業)は『脱炭素』を進めており、すべてクリーン電力で稼働させることを条件としています。マイクロソフトは原発容認ですが、その他は脱炭素イコール再エネが条件です。データセンターをつくる際、『再エネ電源があるか』が重要になってきます。GAFAMは取引先にも脱炭素を求めており、日本が原発を推進すると日本はIT企業を誘致できないおそれがでてきます。日本企業が焦り始めています」と古賀茂明氏は語っていた。
さらに、自然エネルギー財団の高瀬香絵氏の評論を長崎新聞紙上で拝見した。高瀬香絵氏も「原発は必要ない」として、以下のように語っていた。
「日本のエネルギー問題に関しては今、現状とかけ離れた 時代遅れの言説に基づいた議論が進んでいるように見える。『太陽光や風力などの自然エネルギーは高く、原子力は安い』『自然エネルギーは変動が激しいので安定供給には原子力や石炭火力が必要だ』という議論がその最たるものだ。
国際エネルギー機関(IEA)などによれば、自然エネルギーは今や最も安価なエネルギーで、天然ガスや原子力よりも安い。これは日本も例外ではない。
日本の自然エネルギーが発電に占める比率は、現状25%程度だが、日本よりはるかに多くを導入している国でも安定供給に問題はない。安定化に貢献する蓄電池の価格も急速に下がっている。
人工知能(AI)のデータセンターや半導体製造で今後、電力需要が大幅に増えることを前提に議論が進んでいる。だが、世界のITや半導体の使用企業は自社の電力を全て自然エネルギーで賄うとの目標を掲げている。自然エネルギーが少なくて高い日本に半導体工場やデータセンターがどれだけ立地するかは不透明だ。
我々自然エネルギー財団の研究チームは2035年に自然エネルギーで電力の80% 供給し、エネルギー起源の二酸化炭素(Co2)排出量を19年比で65%減らすことを実現するための電力供給の姿やコストに関するシミュレーションを行った。太陽光や風力など変動する自然エネルギーで電力の50%を供給、蓄電、揚水発電、余剰エネルギーによる水素生産などを加えれば、電力の80%を自然エネルギーで賄うことが可能になるとの結果だった。そうなれば、電気自動車や鉄鋼業での電炉導入との合わせ技で、Co2排出が大幅に減ることになる.
実現には、現在の政府の計画を大幅に上回るペースで送配電網の増強を進め、蓄電池も導入する必要がある。コストは小さくないが、高騰が続く天然ガスの輸入が減らせることから、発電コストはロシアによるウクライナ侵攻前の水準に抑えられることも分かった。
現在のエネルギー基本計画の議論は、新増設を含めて原発への多大な投資を促す方向で進んでいる。高コストの原発新設などに今後も頼り続けるのか、安価で安定的な利用が可能な自然エネルギーの大量導入に舵を切るのか、今回の基本計画の改定がそれを決める最後のチャンスとなるだろう」と述べていた。
河野太郎デジタル相の原発の新増設が必要という主張に対して、エネルギー政策に詳しい元経産官僚の古賀茂明氏も自然エネルギー財団の高瀬香絵氏も「原発は必要ない。」と語っておられる。そもそも日本は地震大国であり、そのような場所に原発を建てること自体が亡国シナリオになりかねないと不安を持つ。河野大臣と古賀茂明氏及び高瀬香絵氏どちらを信用するかと問われたら、当然、古賀茂明氏及び高瀬香絵氏である。安倍晋三元首相は嘘つきは政治家の始まりという諺を作った。それ以来、自民党政治家は信用できない。嘘を平気で垂れ流す政治家など百害あって一利なしである。原発推進の自民党政治は終わらせねばならないとつくづく思う。