ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

「サービサーの朝」を読む

 雑誌の書籍紹介の欄でこの本を知った。タイトルのサービサーという意味がわからなかったが債権回収会社のことだと説明を読んで知った。自分が知らない世界であり興味を感じて読むことにした。著書の紹介の欄には次のように書かれていた。
 
サービサー」(債権回収会社)は、あまり聞き慣れない言葉かも知れないが、平成10年に成立した「サービサー法」(債権管理回収業に関する特別措置法)に基づく実在する会社である。サービサー法は、バブル崩壊後の不良債権処理の切り札として成立したもので、この法律によって、従来、弁護士法72条により、弁護士のみに許されていた回収行為が、法務省の許可を受けたサービサーに限って解禁されるようになったのだ。 本書は、かつてサービサーに在職していた元社員が、その驚くべき実態について告発したものである。サービサー法には、反社会的勢力の排除や悪質な回収行為を規制することが明記されているが、それらはしばしば無視され、監督官庁である法務省の監督機能も十分に果たされているとは言えない。本書は、重要な社会的機能を担っているにもかかわらず、今まであまり取り上げられてこなかったサービサーについて、超リアルに描いたフィクションである。

 この本はフィクションである。だから実在の会社のことを書いたものではない。しかし、著者はその業界で仕事をした経験をもとに、その業界の実態をできるだけ忠実に小説として描いたようだ。小説は、まず、ハローワークの紹介で債権回収会社(サービサー)へ就職する社員が会社で仕事の説明を受けることから始まっていく。

担当者が仕事について説明する
サービサーは、不良債権の処理を専門に行う会社です。元来、再建の回収行為は、弁護士法72条によって、弁護士以外のものが業としてやってはならないことになっています。つまり、弁護士の独占業務だったのです。ところが、不良債権の処理が社会的に大きな問題となり、弁護士のマンパワーだけでは処理しきれなくなってきました。そこで、平成10年に「債権管理回収業に関する特別措置法」、通称 「サービサー法」が成立しました。この法律によって、法務省から許可を受けたサービサー、つまり債権回収株式会社に限って、弁護士法72条の非弁活動の禁止の例外として、回収行為ができるようになったのです。サービサー法が成立してから約5年余り経った現在、約70社のサービサーが存在しています。だから、当社を含め、サービサーは全て新らしい会社です。

  不良債権の処理には、引き当て金を積んで帳簿上で処理する間接償却と、実際に売却してバランスシートから取り除いてしまう直接償却という2つの方法があります。直接償却の一つとしてサービサーへの売却があるのです。そして我々サービサーは、金融機関から不良債権を買い取った後、実際にその債券の債務者のところにまで出かけて行って、債権回収について直接交渉しなければなりません。これは債務者と真正面から対決する、ガチンコの勝負といえます。様々な理由があるにせよ、サービサーに売られてきた不良債権の多くは、金融機関が持て余し、投げ出してしまった難物揃いです。自分のところで回収できるのなら、わざわざサービサーに安く売り飛ばす必要など、初めからないわけです。ですから、我々が交渉する相手というのは、大変手強い人々であるということを肝に銘じておいてください。

 小説の中のサービサーの会社はフューチャーという社員数30名くらいの会社である。
数日、先輩から仕事の指導を受けて、その後は一人で業務をこなしていく。しかし、入社した社員が驚くのはここでは労働基準法なんてあってないようなものである。給料も出来高制で回収が進まないと給料は増えない。そして、何よりもびっくりしたのは、社員たちが次々と辞めていくことである。今日も4人の新入社員が入ってきたが、この1ヶ月間におそらくこれと同じ数だけの4人の者が辞めていくことだろう。創業以来続いているものは、3人だけである。この3年間にざっと 200人近くの社員が入り、同じ数の者が立ち去って行った。この会社では、次から次へと社員たちが辞めていき、3ヶ月続くものが半分、1年続くものが1割にも満たないような状況である。

 サービサーは金融機関から不良債権のまとめ買いをする。この債券を一括して大量にまとめ買いすることをバルクという。バルクの場合、不良債権の中身は玉石混淆で、サービサーにとっておいしい案件もあれば回収不能のポンカス債権もある。
 小説では、460件の元本総額約95億円のバルクをフューチャーが金融機関から4億7000万円で購入した。原価は元本総額の約5%である。元本総額の1割でも回収できれば5%の粗利が見込まれるはずであった。フューチャーは全力をあげてその債権回収に取り組むことになる。そのまとめ買いした不良債権を社員に分配し、分配を受けた社員は、その債権回収の責任者となる。入社3ヶ月目の社員は朝礼で決意表明をする。「素晴らしいチャンスを与えて頂きありがとうございます。私はこのチャンスを活かすべくあらゆる手だてを用い、必ず1億円を回収し、会社の期待に応えることをお約束いたします」1億円の回収ができた場合の特別報酬は500万円である。電話でアポイントを取り、連絡を取ることから始まる。しかし、債権者(借金取り)から逃げ回る債務者も多い。その時は自宅でも会社でもあらゆる手段をつくして探し出して、債権の回収を図る。順調に進むことは少ない。しかし上司は決算までに目標回収に死に物狂いで取り組むことを要求する。サービサーであり、法務省の許可があると言っても、結局やることは、借金取りと同じことだ、その回収ノルマの厳しさに耐えられなくて辞めていく者も多い。しかも、心を崩して辞めていく者もいる・・・小説はそのような流れで進んでいく。

 私は、債権回収会社のことは何も知らなかったので驚いた。サービサーの全てが小説に出てくるような超体育界系の軍隊組織でないことを祈りたい。社会には、いろんな仕事がある。サービサーも社会が必要として生まれた会社である。この会社に入社して自分に合わないと思ったら、早く辞めてもらいたいと思う。心を崩す前に早く辞めてもらいたいと思う。自分を一番大事にしてもらいたいと思う。しかし、現実は、どこに行っても、非正規で安い給料でこき使われるだけだから、ここで頑張るしかないという方も多いのだと思う。この小説を読みながら、日本の労働環境の一端を垣間見たような気持ちになった。