西村カリンさんの意見を記す
「フランスの教育においては、議論ができる人を育てることを目指しているのに対して、日本の教育はどうやら違うようだ。厳しい言い方をすると、日本の教育においては、よい日本人、つまり従順な国民を作ることが教育の目標・役割だと考えているようだ。
議論ができる人とは必ずしも言われたことに従う人ではない。議論できる人は言われたことの根拠も知りたいタイプであるため、「従順な動かしやすい人」にはならない。
日本の社会は、いくら真っ当な理由があってもルールに従わない人は「迷惑をかける人」に見えてしまう。私からすると意味のない、公平でない 、根拠のないルールに何も言わずに従うほうが悪だと感じる。議論の力でその状況(ルール・命令)を変えることができると思っているからだ。
フランスの学校では、教科を問わずあらゆる授業の中で議論が行われる。特に国語の授業では表現することを学ぶため、議論がよく用いられる。
家でも学校でも社会でも子供たちはルールを学ぶ。ある程度決まったルールがあって、この社会が維持されることを知っておくことは大事だ。問題は、そのルールが間違っていた場合である。フランスの教育で重視されるのは、言われていることは事実ではないかもしれないと疑うことだ。「これは本当なのか」「もしかしたら問題があるのではないか」このように考えてから判断する。そのまま信じてはならない。これは「我思う、ゆえに我あり」で有名な哲学者、デカルトの考え方でもある。フランス人はデカルト的思考を小学校から学んでいく。
フランスでは、「子供っぽい態度」とは、自分の意見を言わないことである。意見を言うことで、相手が気分を害する可能性もあるが、思っていること考えていることは伝えるべきで、それを言わないと子供っぽいと批判される。
ところが、日本では自分の意見を主張することが「子供っぽい態度」とされてしまう。自分の意見を元に議論しないことをよしとする態度は、世界的に見てもユニークだ。議論することはよくないとされてしまうと、あらゆる問題を避けて通るようになる。日本では、政治についても触れないという態度こそ「大人っぽい態度」とされている。
とはいっても、日本人が政治やニュースに関心がないわけではない。新聞やニュースをよく読んでいるし、知識も豊富だ。ただ、それを活用していないと感じる。日本では大人も子どももみんな政治の話をしないし、学校でも職場でも家でも政治の話をしない。このままだと、今後、投票率は さらに低くなっていくだろう。
やはり、学校でいかに投票する権利が重要であるかをさらに学ぶ必要がある。世界の一部の国では 投票権がなく、日本など投票権のある国を羨ましく思っている。投票権は民主主義の基本なのだ。学校で民主主義については勉強するものの、具体的な政党や投票については絶対に触れない、話さないという態度は良くない。
日本の政治の特徴は、1955年から多くの時期、自民党が第一党として政権を維持していることにある。この一党支配に近い体制は、他の民主主義国家に比べると非常に珍しいことだ。学校で、まずこの説明をしなければ、日本の政治の歴史はつかめない。政治についてさまざまな考え方があることを勉強することは大切だ。
もしかしたら、日本の政治家は、「考えない人」を作りたい気持ちがあるのかもしれない。代わりに「よい日本人」つまり、疑問を持たずに、従順で言われたことに従う日本人を作りたいのかもしれない。例えば、自民党の麻生太郎議員は繰り返しこう言っている。「政治に関心を持たなくても生きていけるというのは良い国です。考えなきゃ生きていけない国の方がよっぽど問題です(三重県桑名市2022年7月1日)」これは、とんでもない発言である。若者に対して、「あなたは政治のことなど考えなくていい」と言っていること同じである。
結果的に若者は、投票とは何か、自分の票にどれだけの価値があるのかを考えなくなっている。日本では、意図的に、政治について考えない空気が作られているようだ。」
西村カリンさんの著書を読んで、日本の教育の目標は世界標準からずれていると思った。日本の近代教育は明治時代に始まった。明治時代の国家目標は富国強兵であった。そのため日本国の教育は富国強兵にふさわしい、すすんで国家に命を差し出す国民作りに教育の目標が置かれ、そのための教育が行われてきた。1945年日本の敗戦とともに、国家に命を差し出す国民を作るという日本の教育目標は解体されて、新しい教育制度をスタートさせた。しかし、国家に命を差し出す国民作りという大義は無くなったが、良い国民作りという形で、国にとって使いやすい従順な国民作りに現在の教育は利用されているようだ。特に自民党の一党支配のためさらに歪められ、自民党に都合の良い国民作りに現在の教育は使われているように思う。低い投票率は自民党の政策の効果である。カリンさんの著書を読みながら、他国との比較を見ながら日本の教育の問題点がよくわかった。教育は常に政権与党の支配下に置かれる。現在の自民党支配下の文部科学省では日本に未来はないと思った。