竹信三恵子さんの番組である「竹信三恵子さんの信じられない本当の話」を見た。今日のテーマは「壊す政党はどこ?守る政党はどこ?介護崩壊!」であった。番組では、出演者であるNPO法人暮らしネット・えんの設立者の小島里美氏と社会学者の上野千鶴子氏が介護崩壊の実情について語り、それをなんとかくい止めなければ日本の未来は悲惨なものになると警告を発しておられた。
介護保険制度は2000年に開始されてから今年で24年が過ぎた。介護現場は以前から人手不足であったが、それでも2005年頃までは求職希望の応募があった。しかし、その後は求職希望者は極端に減少して、最終的に誰も来なくなった。介護現場は低賃金かつブラックという烙印が押されてしまったからである。そういう状態で、さらに今年の改悪で訪問介護の基本報酬が引き下げられた。訪問介護の報酬は介護保険制度が誕生した2000年が一番高く、それから、改悪されるたびに引き下げられてきた経緯がある。その結果、訪問介護事業所の担い手であるヘルパーさんの求職希望者はなく、人手不足と職員の高齢化による事業の存続の危機が言われてきた。
介護事業所は利益を出して増加しているという報告もあるが、それは都会などの人口密集地だけである。大手は収益を上げるため、人口密集地で事業所を増やす一方、効率の悪い地域には進出しない。訪問介護を展開して在宅介護を支えていた地域の介護事業所が基本報酬の引き下げによる経営悪化のため廃業に追い込まれている。現在では、介護事業所が0の自治体が97町村あり、介護事業所が一つの自治体が277市町村にも広がっている。このままいくと、早晩、訪問介護を受けたいと希望しても、引き受けてくれる介護事業所が存在しないため受けられないという地域が出現する。つまり、介護保険制度の空白化が生じようとしている。
日本の介護保険制度は、①「市民的権利としての制度」であり、また、嫁が担っていた介護を家族がするのではなく、社会でするという②「介護の社会化」の実現であり、さらに、③「当事者責任という一部費用負担による参加」で作られた制度であり、その先進性は国際的にも高く評価されたものである。そのような高い理想のもとに作られた制度が24年を経て、③「当事者責任という一部費用負担による制度参加」だけ残されて、① 「市民的権利としての制度」②「介護の社会化」が機能しなくなってしまう危機にみまわれている。
どうしてこのようなことになったのかについて、上野千鶴子先生は次のように語っていた。
政府は介護保険制度の改悪によって、介護保険対象者を要介護3以上に限定しようとしている。要支援および要介護1、2の訪問介護とデイサービスは介護保険制度から除外して自治体に丸投げしてボランティア等に依存する。利用者の負担を原則2割に増加する。無料のケアプランを有料化する。福祉用具の利用者買取の推進などを行うとしている。この改悪の意図は介護保険への公費負担削減であり、介護の市場化の推進である。これは介護の社会化をやめて、介護を昔のように家族に戻すことを目指すものである。介護3以上は介護保険の対象とするが、介護2以下は介護対象にしないので家族でしてくださいということである。どうしても家族でできなければ、私費を払って市場化した介護事業所の利用を進めるというものである。お金がなければ家族介護をして、お金も家族介護もできなければ在宅放置という選択しか残らない。このままだと、先進的と言われた日本の介護保険制度の趣旨など微塵もない介護保険制度に生まれ変わるようだ。
私は、家族の介護で介護保険制度にお世話になってきた。訪問介護でヘルパーさんに何年も助けられた。またデイサービスも何年も利用させてもらった。これらの制度に助けられてきてこのような良い制度はこのまま続くものとばかり思っていたが、これが崩壊の危機にあることを知って驚いた。
介護保険制度の改悪について、今回の衆議院選挙前に各政党にアンケート調査を実施した結果は次の通りであったと報告されていた。政党で改悪に賛成している政党は自民党、公明党、国民民主党であった。維新は選挙前ということを意識したのか無回答であった。反対に介護保険制度改悪に反対を表明したのは立憲民主党、共産党、れいわ、社民党であった。今回の選挙で自民党、公明党大敗という見出しが踊っていたが、自民党、公明党が大敗しても、国民民主と維新は自民党と同じだから、おそらく自民党政治がこれからも続くのだろう。これでは、介護崩壊に歯止めがかかりそうにない。介護崩壊をくいとめるためにも、早急に自民政治を終わらせなければならない。