
山崎雅弘氏の「ある裁判の戦記」を読んだ。本書は、山崎氏が政治評論家で作家の明治天皇のやしゃごにあたるという竹田恒泰氏から名誉毀損で訴えられた裁判の記録であった。
そして、この裁判の発端は以下のとおりであった。
富山県朝日町の教育委員会が竹田恒泰氏を講師に招き、中高生向けの講演会を企画したことに対し、山崎雅弘氏がツイッターで次のように批判した。
「竹田恒泰と言う人物が、普段どんなことを書いているか、Twitterを見ればすぐ確認できる。それでもこの人物を招いて、町内の中・高校生に自国優越思想の妄想を植え付ける講演をさせる富山県朝日町の教育委員会に、教育に携わる資格はないだろう。社会の壊れ方がとにかく酷い」
「竹田恒泰と言う人物が過去に書いたツイートを4つほど紹介する。これだけでも、この人物が教育現場に出してはいけない人権侵害常習犯の差別主義者だとすぐわかる。富山県朝日町の教育委員会が何も知らずに彼をわざわざ東京から招聘するわけがない。つまり今は教育委員会にも差別主義者がいる可能性が高い」
「竹田氏の過去のツイートを四つ紹介します。①韓国は、ゆすりたかりの名人で、暴力団よりたちが悪い国だ。そういう国とはつき合わないのが1番。韓国は黙殺し、反論は国際社会に対してすれば良い。②そもそも韓国に毀損されるような名誉があるのか???③韓国が慰安婦の像を作るなら、日本は嘘をつく老婆の像でも作ったらどうだ?口をとがらせてまくしたて、片手には札束を握りしめて、ゆすりたりをしている感じで。④事実かどうかはもはやどうでも良い。韓国は胡散臭い。韓国政府が何を言っても信用できない。だからホワイトから外す。理由は胡散臭いから。それ以上の理由は不要。この4つのツイート内容だけでも竹田氏が教育現場に出してはいけない。人権侵害常習犯の差別主義者である証拠になると理解します。教育委員会が主催する中学生や高校生向けの講演で演壇に立たせてもいい人物かどうか、この4つのツイートを読めば、誰でも判断できるだろう」
その後、富山県、朝日町教育委員会は、竹田氏の講演会について、山崎氏以外からも、教育勅語を広める授業であるなどの批判的な意見が保護者や町民から多数相次いだことで、講演会を中止すると発表した。
朝日町教育委員会が、竹田氏の講演会を中止したことを受けて、竹田氏は講演会中止は山崎氏の批判的言動が直接の原因と判断し、また、山崎氏の批判には真実はなく名誉毀損に当たるとして提訴したものである。
山崎氏が名誉棄損で訴えられた裁判の経過は次のとおりである。
2019年11月 8日、富山県朝日町で中高生対象に竹田恒泰氏の講演会が教育委員会主催で開かれることに対して、山崎雅弘氏が批判的ツイートを発表した。
11月11日、山崎氏を含む多数の批判を受けて、朝日町教育委員会は竹田氏の講演会の中止を決定した。
11月16日、竹田氏は山崎雅弘氏及び山崎氏のツイートをリツイートした人々告訴すると表明。
2020年 1月21日、竹田氏は山崎雅弘氏を名誉棄損で東京地裁に提訴する。慰謝料5百万円を要求。
2020年 3月26日、山崎正弘さんの裁判を支援する会が発足し共同呼びかけ人81人が集結。裁判費用募金開始。
2021年 2月 5日、東京地裁、山崎氏全面勝訴の判決 (竹田氏控訴)
2021年 8月24日、東京高裁、山崎氏全面勝訴の判決 (竹田氏上告)
2022年 4月14日、最高裁、 山崎氏全面勝訴、竹田氏の訴えを棄却、
この名誉毀損裁判において、東京地方裁判所と東京高等裁判所の裁判官はいずれも、双方が提出した準備書面や陳述書、それらの根拠となる厖大な証拠(竹田氏が過去に行った発言や叙述内容なども含む)を法理と論理に基づいて綿密に精査した上で、山崎氏の投稿は「公正な論評」であり、「ツイートとして相当と認められる範囲内にとどまり、名誉毀損にあたらない」「人権侵害常習犯の差別主義者と言う言葉は名誉毀損にあたらない」として竹田氏の請求を棄却し、それを不服とした竹田氏側の上告も、最高裁判所は棄却する判断を下した。これにより、山崎氏は竹田氏との裁判において、地裁、高裁、最高裁のすべての戦いで「勝訴」が確定した。
当然の結果であるとも思うが、日頃から差別的言動を繰り返し、「自国優越思想」「歴史修正主義」「戦前的教育への回帰指向」「天皇の過剰な権威化」などを主張している竹田氏が中高生に講演をするなどは百害あって一利なしである。本来差別をなくす教育を推進すべき立場の教育委員会が、差別を煽る様々な差別発言を繰り返してきた竹田氏を講師に招いて講演を行うことは、教育委員会が竹田氏の差別発言にお墨付きを与えることと同じである。朝日町教育委員会で、どのような経緯で差別主義者である竹田氏の講演が決定されたのか不明であるが、日本の公教育において、教育委員会の中に差別主義者の竹田氏の主張を支持する人がいるのだと考えると怖いことだと思った。