
朝、窓を開けると、風が気持ちいい。この風を感じながら俳句を作ろうと思い俳句散歩に出かけることにした。


散歩の出発点は、いつもの通り香焼町シンボルパークである。時間は6時25分。日の出時間は過ぎているがここでは太陽はまだ見えない。7時頃になるとこの近辺も出勤の車が多くなるがこの時間まだ閑散としている。シンボルパークで蝉の声を聞く。
秋蝉の声聞く朝の散歩道


出発点から西の方へしばらく行くと海に出る。今日は穏やかな海である。太陽がまだ届いていないこの日陰が気持ち良い。潮の香りを楽しみながら、静かな海を眺めながら堤防に沿って歩いて行く。
朝まだき潮の香濃いし秋の海


ヨットが沖合に向けて静かに進んでいる。この情景をみて、城ヶ島の雨を思い出した。城ヶ島の雨では次のように「雨はふるふる 日はうす曇る 舟はゆくゆく 帆がかすむ」と帆掛船のことを歌っていた。今日は「城ヶ島の雨」と違って晴れであるが、ヨットを題材に「城ヶ島の雨」のように情景と心状を重ね合わせた句作を試みるが思い浮かばない。


右手に海を見ながら進んでいくと、対岸に伊王島が見えてきた。よく見ると伊王島の教会が小さく見える。伊王島は香焼と約500mの大中瀬戸によって隔てられていたが、今そこには、伊王島大橋が架けられて陸路からも行けるようになった。
朝日受く祈りの島と秋の海


道沿いにゆっくりと歩いて行く。路面が赤紫の花びらで覆われている。何の花かなと立ち止まってよく見ると葛の花である。葛はつる性の多年草で、日本では万葉の昔から秋の七草に数えられ、食材や漢方薬などにも使われてきた植物である。ただ繁茂力が強く荒れ地など覆い尽くすことがある。葛の花を見ると、折口信雄の「葛の花 踏みしだかれて 色新しい この山道を行きし人あり」という有名な歌を思い出す。この歌は壱岐の山道を歩いていた時に作られたようだ。この歌に習って
しだかれし葛見て知るや色の良し


香焼総合公園海老瀬側入口に到着。この入口は香焼総合公園の裏口にあたりここには駐車場はない。車で総合公園に来る場合は、正面入口の大駐車場に車を停めて、正面入り口から入ることになる。裏口にはいつも近所の飼い猫が門番みたいに門人ならず、門猫している。そして通る人を「お土産は?」みたいな顔で見る。手ぶらで通ろうとすると「礼儀しらずめが!」みたいな目で見る。いつかお土産をと通るたびに思っているのだが、いつも忘れて、いつもここに来て思い出す。私の今日の散歩はここで折り返しである。猫の冷たい目を感じながら引き返す。