雑誌で、雨宮処凛さんが「子供の未来を奪うな」と言うプラカードを掲げて抗議している記事を見た。記事は、次のように書かれていた。
「『私は日本で育ち、日本で学んできました。私の心も生き方も、もう日本の中で形作られています。だからこそ、私はここで生きていくしかありません。どうか私たちにも学ぶチャンスと将来へ進む道を与えてください』
11月7日、参議院議員会館に悲痛なの声が響き渡った。声の主は、日本に生まれ、あるいは幼少期に日本に来た高校生、大学生である。そんな子供たちが今、強制送還の恐怖に怯えている。5月、出入国在留管理庁が『ルールを守らない外国人により、国民の安全・安心が脅かされている』として、『不法滞在者ゼロプラン』を始めた。一言で言うと、『強制送還キャンペーン』である。それによって強制送還は昨年比で倍増した。
『不法滞在者なんだから、当たり前じゃん』と思う人もいるだろう。しかし、強制送還されている中には、この日集まったような日本生まれ、あるいは幼少期に来日した子供たちも含まれる。今年1月から8月までに送還された18歳以下は7人である。母語は日本語で日本で教育を受けた子供たちが、言葉もわからず行ったこともなく知り合いもおらずルールもわからない『母国』に送還されているのだ。
よってこの日、当事者である子供・若者たちが入管庁や文部科学省、こども家庭庁で思いの丈を訴えた。『私たちは日本で一生懸命に生き、頑張ってきました。専門学校も奨学金も合格することができました。その歩みをどうか無駄にしないでください。急に強制送還になってしまったら、私たちの将来はどうなってしまうのですか。知らない国で知らない言葉でどうやって暮らせばいいかわかりません』ある高校生の言葉だ。『不法滞在』と言われる中に、このような子供たちが含まれていることをどれほどの人が知っているだろうか。
日本には、このように、法律が想定していなかったがゆえに存在自体が違法とされてしまう子供・若者たちがいる。この子供たちが『不法滞在』とならないためには、生後30日以内に、地方出入国在留管理官署で手続きをしなければいけなかった。親に在留資格がない状態だと、その発覚を恐れて、そこに出向かない。一方、生後間もない赤ちゃんが自力で行く事は不可能。こうして『不法滞在』の子供が生み出されてしまっている」
今、我が国においては、「日本人ファースト」という声が飛び交い、外国人に対して厳しい目が向けられている。このような現状を踏まえ、出入国在留管理庁のホームページには次のように書かれていた。
「昨今、ルールを守らない外国人に係る報道がなされるなど国民の間で不安が高まっている状況を受け、我が国の安全・安心を脅かす外国人の速やかな送還を実施するための具体的な対応策として『国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン』を実施します」とあった。
その一環として、日本生まれ、日本育ちの子供たちも強制送還になっている。不法滞在者ゼロプランの目的は、わが国の安全・安心を脅かす外国人の速やかな送還であるはずだが、日本育ちの子供たちは、本当にわが国の安全・安心を脅かしているのか疑問である。
そいうなか、国際人権法に反する「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」に反対する、日本弁護士連合会の会長声明をネットで見た。声明は多岐にわたっていたが、非正規滞在者の子供の未来については、次のように書かれていた
「ゼロプランは、既に入国している者について、出国、送還の方向の施策のみを示すものであるが、非正規滞在者となっている者の中には、例えば人身売買の被害者であったり、DVを受けていたりするなど、本人の責めによらない事情で在留資格を得られていない者・失う者も多数存在する。日本においては、ノン・ルフールマン原則、子どもの権利や家族結合権など、国際人権法の遵守が不十分であるが故に、非正規の在留が長期化してしまうという現実がある。例えば、日本で生まれ、母国を一度も見たことがない者、幼い頃に親と来日して以来、一度も帰国していない者のように、日本語で考え、日本文化に親しみ、日本社会の中で生きてきた非正規滞在者もいる。また、日本人や正規滞在の外国人と婚姻するなどして家族を構築し、日本社会に根付いている非正規滞在者もいる。こうした者たちは、非正規滞在であるために、言葉も話せず親族はおろか知り合いも一人もおらず、生活の術も皆無である母国に強制送還されてしまうことになりかねない。そうした非正規滞在をなくすためには、国際人権法に基づいた権利擁護をすることで在留を正規のものとすることこそが不可欠である。
ゼロプランは、『国民の安全・安心を脅かす危険な外国人を退去させる』としながら、実際には、国民の安全・安心に何ら脅威を与えず、かつ、保護されるべき外国人の人権を侵害するおそれが高く、国際人権法に反するものである。
当連合会は、国際人権法に反するゼロプランに反対し、偏見に基づく差別が解消され、平等権が保障された共生社会の実現に向けて今後も力を尽くす所存である」と書かれていた。
「日本人ファースト」という外野の声に答えて、出入国在留管理庁は、「私たちは仕事してますよ」と言わんばかりに強制送還の数を発表しているが、非正規滞在の子供は、強制送還するのではなく、国際人権法に基づいた権利を擁護し、在留を正規のものとすることこそが不可欠であると私も思う。即刻、改めていただきたいと思う。