ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

俳句講座 第三回目受講

第三回目の俳句講座は実践講座である。実践講座を始める前に、俳句の基本の勉強として有名句の説明があった。
「古池や蛙飛び込む水の音」芭蕉
この句は元禄時代中期の絢爛豪華で華やかさがもてはやされている時代に、その時代の空気に抗するように侘び寂びを求めて作られた作品である。以後、新しい俳諧の世界が展開するようになった。この句の批評で、蛙が飛び込むのは池だから、水の音の水は不要と主張する人がいたが、当時の蛙は鳴き声を歌に詠む習慣があり、音の説明としても水は必要である。この句は、古池やという上五で静を表し、蛙飛び込むで動をあらわし、さらに下五の水の音の連体止めで、静の余韻を残している。この句には、古池、蛙、水、音の名詞とや、のの助詞と飛び込むの動詞からなっている。俳句は名詞、助詞、動詞で基本構成される。形容詞や形容動詞は極めて少ないという説明であった。

「菜の花や月は東に日は西に」蕪村
この句は動詞がない。名詞と助詞だけでできている句です。そして東と西の対句になっているのが特徴です。菜の花は黄色、月は白色、日は赤色です。一面の黄色い菜の花畑に東に白と西に赤の広大な風景を描いた作品です。

「雀の子そこのけそこのけお馬が通る」 一茶
この句の解釈として、お馬が通るは、①武士が乗った馬が通るという解釈と②子供が笹竹に跨って馬に乗っている様子のふた通りあるが、どちらも面白い。一茶は俳諧師として認められた後も、さまざまな不幸に見舞われて淋しい人生であったとも言われるが、多くの一茶の作品が後世に遺されたのは、高い評価を受けたということであり、その意味では幸せであった。

有名俳句の説明が終わった後は実践学習が始まる。自分が作った俳句を発表し批評してもらう時間である。
受講者10名の作品が黒板に書かれる。それをお互いに鑑賞して、その中から、各自が、自分の句以外の一押しの俳句をそれぞれ一句発表する。受講者の発表では、特定の俳句に票が集中することはなかった。みんなの投票はバラバラであった。

①川波の光連ねて夏の空
この句は川波の光と夏の空の関係がよくわからない句です。意味が伝わるように作りましょう。添削は「川波の夏の光を連ねたり」

②代搔きの水面きらきら田植えどき
この句は代搔きと田植えどきの二重季語です。どちらか一つにしてまとめていきましょう。添削「車窓より代田の水面きらきらと」

③タンタラランアバニコ舞いて靴ならす
この句はフラメンコの様子を詠んだ句です。タンタラランはカスタネットの音、アバニコはフラメンコで使う扇、そしてフラメンコで使う鋲を打った靴です。この句は材料が多すぎます。欲張りすぎです。一つの材料で作ってみましょう。添削「アバニコを舞はせて夏のフラメンコ」

④しとしととひときわきれい花菖蒲
この句は失敗作です。それはきれいという形容詞を使っているからです。きれいという形容詞を直接的に使ってきれいを表現するのではなくて、きれいという形容詞を使わないできれいと感じさせることが俳句です。形容詞を使わないようにしましょう。また、ひときわという副詞も要注意です。できたら使わないで表現しましょう。添削「しとしとと雨に艶ます花菖蒲」

⑤浦上川西高ボートや新学期
西高が練習するのは浦上川というのは、長崎では自明のことだから浦上川は省きましょう。そして新学期の様子を詠みましょう。添削「西高のボートの逸る新学期」

⑥衣更身につけぬまま陽は落ちて
身につけぬままは裸の状態を想像するが、作者の意図は、使わないまま衣更を迎えたということなので、もっとわかりやすくしましょう。添削「衣更着衣決まらず陽は落ちて」

被爆地層鋏の欠けや麦の秋
被爆地層を見学した時の俳句ですが、地層に残っていたのは鋏の欠けた部分ですか、欠けた鋏そのものですか?どちらでしょうか。欠けた鋏そのものであればそのように詠んでください。添削「被爆地層に欠けし鋏や麦の秋」

⑧ミッフィの切手の遺書や梅雨晴間
遺書は重い言葉です。ミッフィの切手と遺書と二つ主がありますが、どちらを主にするかでずいぶん違ってきます。添削「遺書に貼れるミッフィの切手梅雨晴間」

⑨雨の中紫陽花さらに艶めいて
この句は、さらにの副詞が余計です。この言葉を使わないで表現してください。添削「ひさしぶり雨に艶めく濃紫陽花」
 
⑩かけっこに笑顔はじける南風
この句は、子供たちの情景が目に浮かびます。いい感じですね。添削なしです。合格です。今日の一押しの句は⑩に決定

今回、私は⑨の紫陽花の句を発表したが、さらにという副詞の使い方を指摘された。今日の講座では形容詞は基本使わないように注意を受けたが、同様に副詞も要注意である。艶ますにかかる「さらに」「ひときわ」の副詞が添削で削除された。艶ますの中に「さらに」「ひときわ」の意が入っているから省略可能ということのようだ。17文字という限られた語数で表現する俳句は無駄は徹底的に排除していく必要がある。副詞も形容詞も便利な言葉だけについ誘惑に負けて使いたくなる。言葉との葛藤が続く。