ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

「分断と凋落の日本」を読む その2

「日本は3年以内に破綻すると思います」という話を聞き、私はまず戦争による破綻を想像した。「軽武装・国民生活優先」の政治から、「重武装・軍事優先」の政治に変換した結果、戦争による破綻への経路である。しかし、戦争による破綻の可能性は低いという解説を聞いた。日本は3年以内に必ず破綻するというのは、戦争によるものではないとして、「分断と凋落の日本」の著書を読み直しながら、日本の破綻のあらすじを再度考えた。

 日本は、1980年代は米国に次ぐ世界2位の国内総生産(GDP)を誇りジャパン・アズ・ナンバーワンと言われていたが、現在は、その時の勢いは全くない。1990年の日本のGDPは米国の6〜7割に迫りまさに米国を追い上げていた。また、ドイツの約2倍、中国の8倍の実績を誇っていた。しかし、そこから30年経った2021年の日本のGDPは惨憺たる状況にある。この30年、日本だけが成長から取り残され、現在日本のGDPの規模は米国の5分の一、中国の三分の一である。世界の発展から日本だけ取り残されてしまったのである。国民の豊かさを示す一人当たりGDPでは、かつて世界一と言われたが、2021年には世界27位まで落ちた。日本の労働者の平均給与は韓国やイタリアにも負けている。
 日本の凋落は、データが如実に示している。かつてメイド・イン・ジャパンは家電産業においては世界市場を席巻したが、今は見る影もない。かなり前から、韓国や中国に負けている。韓国や中国には価格で負けるが性能は日本が格上という人がいるが、今や性能面でも中国製、韓国製が日本製を超えている。日本製品は世界市場での存在感を失ってしまった。そもそも、日本メーカーの名前であっても、実際は中国企業、台湾企業になってしまったメーカーが大半である。家電産業はテレビは韓国、スマホは中国が世界シェアを占め日本勢は競争にならない。日本の家電産業はほぼ壊滅したと言えるほどの凋落ぶりである。半導体においても同じである。日本の半導体は1988年には世界シェアで50%を超え、半導体の世界トップ10企業に日本企業が6社入っていた。半導体においては日本が世界をリードしていた。しかし、2022年にはトップ10に日本企業の名前はない。今や、その半導体でトップを走るのは台湾であり、台湾企業の最先端技術から日本は10年以上遅れ、もはや挽回することは不可能と言われている。
 自動車産業においても同様である。日本はトヨタガソリンエンジン車の販売で今も世界をリードしている。しかし、次世代の自動車として、電気自動車(EV)が開発され、ハイブリッド車を含むガソリンエンジン車の販売禁止の期限が迫っている。しかし、トヨタは電気自動車の開発ができていない。日本は次世代車として水素自動車に取り組んだが開発に失敗し、同時に電気自動車の開発においては大きく出遅れてしまって、もはやEVにおいても追いつけない状況にある。自動車産業は日本の外貨獲得の主力産業であったが、これからも外貨獲得の主力産業の地位を維持できるかどうかわからない。
 
 太陽光発電も同じである。かつて太陽光パネルの生産において日本企業が世界トップ10に5社がランクインしていたが、今や日本製品は世界市場ではほとんど売れない。これは原子力発電に拘り、再可能エネルギーに投資しなかった日本国の投資失敗のツケである。いま、世界市場を席巻しているのは中国企業である。中国は国を挙げて再生可能エネルギーの開発に取り組んだ結果、太陽光発電の世界市場を独占するまでに成長した。風力発電においても同様で、かつては日本企業がトップを走っていたが、日本企業は衰退した。

全てのデーターが日本の凋落を示している。日本は科学技術立国である。かつて日本の大学や企業の研究レベルは非常に高く日本のものづくり世界一を支えてきた。優秀論文に関する統計では1990年代は世界3位をキープしていたが、2022年では日本は10位で過去最低になった。G7では最下位でインドにも抜かれてしまった。優秀論文の数はその国の将来性を占う指針とされているが、このままでは日本は衰退するばかりである。優秀論文が減少していることは、国として将来への投資をしてこなかった結果である。つまり教育や研究に対する予算削減がそのまま結果になって表れているといわれている。

 日本は産業の凋落で国力が細っていき、稼ぐ力がなくなっている。それにもかかわらず、軍事費増強など莫大な税金を無駄にする使われ方がなされている。辺野古基地建設も軟弱地盤で予算がどんなに膨らんでも立ち止まることもしない。東京五輪も単に莫大な税金を食い物にするプロジェクトでしかなかった。そして、今また大阪万博も同様に税金を食い物にする事業として遂行されている。稼ぐ力がなくなり、日本の成長・発展に使えるお金はどんどん細っている中、相変わらず、税金を食い物にするプロジェクトばかりが横行している日本では、成長・発展など期待できるはずがない。

 世界的投資家のジム・ロジャーズ氏は日本の現状を見て「私が10歳の日本人であるなら、直ちにこの国を出る」と発言している。そして今、日本の若者たちはまさにこれを実行に移し始めている。若者の「エクソダス(国外脱出)」が始まっているというニュースを見た。若者にとって日本にいても賃金は上がらないし、年金も不安である。子供の教育のために海外を選ぶ人も増えている。女性にとっては日本はジェンダ差別が先進国中で最悪なので、海外で自分の才能を伸ばしたいと考える人が増えるのも当然である。日本の低賃金の実態が露呈し、しかも、円安でますます魅力のない国になったことで若者を中心に一気にエクソダスが始まっているという話であった。

若者の海外脱出がこのまま続くと、ただでさえ少子化で若者人口が不足しているのに、日本はいよいよ回らない状況になる。人がいないために行政サービスが停滞する。学校では先生がいない。警察や消防の出動が思うようにできなくなる。治安が悪化する。社会のあらゆる問題が一気に噴き出してくる。この悪化はもう誰も止められない。日本の破綻である。
「日本は3年以内に破綻すると思います」という財務省OBの方が考える破綻の具体的あらすじはわからない。しかし、破綻する経路は今の日本には幾つもあるように思う。しかし、だからと言って諦めるわけにはいかない。破綻しないように、現在の自民党政権を倒すことから、全力で取り組まなければならないと思う。