ばってん爺じのブログ

年を重ねても、尚好奇心旺盛な長崎の爺じの雑感日記。長崎の話題を始め、見た事、感じた事、感動した事などを発信。ばってん爺じのばってんはバツイチではなく長崎の方言

食料自給率問題を考える

 私は日本の食料自給率が低いことに危機感を覚えている。そういう中、印鑰智哉(いんやく・ともや)氏が、日本の食料問題について書いた文章を読んだ。一部を記す

 「世界で貿易が2年間止まった場合、日本では人口の6割に当たる7000万人が餓死し、世界の餓死者の3割を占めるという研究が米国で発表された(朝日新聞デジタル2022年8月20日)。日本の食は世界の中でも極めて脆弱であると、国際的に警鐘が鳴らされている。これは明らかに失政の産物である。日本政府は30年間近く、種子生産のグローバル化を進めた。その結果、国内の種採り農場の多くは姿を消し、野菜などはほぼ9割を輸入に依存するにいたり、化学肥料や農薬の原料もほぼ全て輸入、貿易が止まれば日本の食料生産は激減する。食料自給率38%は虚構の数値である。貿易が止まれば、もっと悪化し日本の食料自給率は10%になると言われている。
 日本の基幹的農業従事者数は、1995年には256万人だったが、2020年には136万人と25年でほぼ半減した。特に、2015年から2020年のわずか5年間に22%以上が失われている。しかも、農家の平均年齢は70歳近くに達しており、その減少は今後、さらに加速することが予想される。農家の現状は厳しく、畜産業では輸入飼料の高騰によって経営規模にかかわらず、純赤字に転落し、生産すればするほど借金が増える状況だ。稲作も生産費が販売額を上回るケースが多く、多くの農家が離農を余儀なくされ、新規就農者も得られない現状となっている。
 世界の食糧事情も大きく変わり、以前のように食料が輸入できる状況ではなくなっている。国内生産できず、輸入もできなくなれば、日本の食は絶望的な状況に陥る。
 このような状況の中で、食や農の憲法とも言われる「食料・農業・農村基本法」を25年ぶりに改正する法案の国会審議が始まった。当然、食糧危機を避けるための改正だろうと誰もが思うだろう。つまり、農家を支援し、新規就農を促し、国内での食料生産を増強するために抜本的な対策を立て、これまでの海外依存から、国内生産を重視する大きな政策転換を期待するだろう。しかし、改正案にはその様子は全く見られないばかりか、これまでの海外依存と企業参入推進政策をさらに強化するものとなっている。つまり、IT技術などを使ったスマート農業やさらなる企業参入と規模拡大によって、農業の工業化・企業化を進め、輸出を拡大し、一方で、輸入が困難な事態に関しても、海外に新たな調達先を見つけ出せばいいという改正案なのだ。
 しかし、気候変動の激化に伴い農業生産の不確実性は高まっており、輸入の困難は確実に増大する。また国内でも営利目的の企業経営では、突然、操業放棄するリスクも予想される。だからこそ、国連機関は持続できる小規模家族農業推進に舵を切った。にもかかわらず日本は経営大規模化と企業化という古い政策1本槍で、小規模家族農家を増やす政策が不在のままである。これでは問題解決は望めない」とあった。

 現在の日本の農業の主体は有機農法を含む自然農法である。しかし、この自然農法は金持ちの農法というレッテル貼りをして、このような農法では大量生産できないから大規模化及び工業化を進めるべきというのが、現在の日本の農政の基本的考え方らしい。だから個人で農業をしても儲けが出ないような政策が続けられるし、現在の農家が農業から手を引くような政策が続けられているようだ。現在の日本の農家は、大地に種を植え管理して育て収穫する農業である。日本各地で、その地に合った作物が植えられ、育てられ収穫され提供されている。しかし、日本の農政は、現在日本の農業従事者が行なっているこのような自然農法の拡大は目指さないし、その支援もなされないようだ。その代わり、IT管理された大規模な農業工場の建設を目指すようだ。今の農政の基本は大規模化であり、農業の工業化及び企業化である。農業従事者とはそこの従業員となるように仕向けられているようだ。しかし、これは非常に危険を孕んだ政策のように思う。現在、遺伝子組み換え食品とかコオロギ食とか擬似肉とかの話題が出てくることがあるが、これは農業の工業化によって産み出されるものだ。企業は儲かる食物しか作らない。企業の都合に合ったものしか食べれない日本は本当に幸せになれるのかと疑問に思う。

 農業の大規模化、工業化によって飢餓が生まれていることは世界の農業地図を見たら一目瞭然である。世界で一番飢餓状態なのはアフリカである。アフリカは食料生産できない地域ではない。アフリカは自給自足できる地域だった。しかし、アフリカの多くの農地が特権階級による大規模化によって綿花畑に変えられてしまった結果、一番食料を必要とする地域になってしまった。それ以前は自給自足できていた地域である。
 日本は豊かな自然に囲まれ、様々な植物を自然農法で自給できる生産地である。日本は単一な植物しか育たない地域ではなく様々な作物を得ることができる食料の宝庫とも呼ぶべき土地である。その利点を活かして日本は自給自足の生活ができていた。だから、食料自給率の向上は難しいことではない。その土地に合った食物を今まで通り育てていけば良い。農業に従事したいと思う人が増えるように厚く手当していけば良い。そうすれば日本の食料自給率はすぐにでも好転しそうであるが、日本の農政そうではないらしい。ここにも企業との癒着が感じられる。裏金の影響がここまで及んでいるのであれば由々しき問題である。